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タイラー・ザ・クリエイター“らしさ”が詰まった約2年ぶりのスタジオ作『スカム・ファック・フラワー・ボーイ』(Album Review)

7/24(月) 12:05配信

Billboard Japan

 2007年に結成されたヒップホップ集団<オッド・フューチャー>のリーダーとしても活躍する、米カリフォルニア出身のラッパー、タイラー・ザ・クリエイター。マック・ミラーやフランク・オーシャン、スクールボーイQなど、人気アーティストとの共演などで知名度が上昇している注目株だ。

 シングルの大ヒットはないが、2011年リリースのデビュー・アルバム『ゴブリン』(最高5位)、翌2012年のセカンド『ウルフ』(最高3位)、そして2015年のサード・アルバム『チェリー・ボム』(最高4位)3作全てのアルバムがTOP5入りしている。シングル・ヒットには頼らない、いわゆる“アルバム・アーティスト”で、若層のみならず、90年代を駆け抜けたヒップホップ世代からの支持も厚い。

 本作『スカム・ファック・フラワー・ボーイ』は、『チェリー・ボム』からおよそ2年ぶりとなるスタジオ・アルバム。ゲストには、親交の深いフランク・オーシャンやエイサップ・ロッキー、リル・ウェインといった人気ラッパーから、「アメリカン・ボーイ」のヒットで知られるR&Bシンガーのエステル、ノルウェーのドリームポップ・アーティスト、アンナ・オブ・ザ・ノースや、タイラー自身がファンだと公言する、レックス・オレンジ・カウンティーなど、個性的な面々が参加している。

 全曲の制作、そしてプロデュースは、タイラー・ザ・クリエイター自身が担当。とにかく才能に満ち溢れているアーティストで、本作はその才気が最大限に発揮されたアルバムに仕上がっている。

 6月にリリースされた先行曲「Who Dat Boy」は、今っぽいトラップ・ソングだったが、こういったアグレッシヴなヒップホップ・トラックだけではなく、いわゆるチルアウト系のナンバーもあり、バリエーション豊富で緩急バランスも素晴らしい。

 冒頭の「Foreword」や「Pothole」、オッド・フューチャーのメンバーも参加した「911 / Mr. Lonely」など、90年代のアングラ~ジャジー・ヒップホップを彷彿させるナンバーから、Bel-Sha-Zaar with Tommy Genapopoluis and The Grecian Knightsの「Introduction」(1969年)という、かなりマニアックなネタを使った「I Ain't Got Time!」もあり、レコードを回していた世代も懐かしさを感じられるのではないだろうか。

 スロー・ホロウズのオースティン・ファインスタインがギターで参加している「Boredom」や、米ヴァージニア州出身の女性シンガーソングライター、カリ・ウチスの個性豊かなボーカルが光る「See You Again」、不思議な世界観に包まれる「Garden Shed」、ロック調の「Where This Flower Blooms」など、ラップ・ミュージックに馴染みないリスナーも受け入れやすいナンバーも収録されている。ヒップホップ・アルバムではあるが、重たさや騒がしさのない、マッタリと流れる時間を堪能できる。

 前3作でも何かと話題になっていた、タイラーの個性的なジャケットだが、本作では、ひまわり畑で蜂に囲まれたタイラーが腕を組んで佇んでいる、アート・タッチな仕上がりになっている。これもまた、タイラー・ザ・クリエイター“らしさ”だ。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『スカム・ファック・フラワー・ボーイ』
タイラー・ザ・クリエイター
2017/7/21 RELEASE

最終更新:7/24(月) 12:05
Billboard Japan

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