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EEZ内の好漁場に「北」漁船 証拠撮影、漁は命がけ

7/25(火) 10:24配信

福井新聞ONLINE

 福井県坂井市の三国港から北北西に約320キロ。日本の排他的経済水域(EEZ)内にある日本海の好漁場「大和堆(やまとたい)」で、6月上旬から7月上旬にかけ、三国港機船底曳網漁業協同組合の漁船が北朝鮮の船とみられる漁船の違法操業と遭遇。同組合によると、目撃は数十件に上るという。違法操業の漁船の網を避けるため、漁場に入れない被害も出ており、漁師たちは「俺たちの生活と命を守ってほしい」と悲痛な叫びを上げている。

写真を拡大すると船上に人影が確認できる>>

 6月25日、同組合所属の天越丸(64トン)は、底引き網漁のための海底清掃で大和堆にいた。舩木秀二船長(55)が見つけたのは北朝鮮らしき国旗を掲げた小型船。乗組員は6、7人とみられた。「違法操業の証拠を残さないと」。銃を持っているのではないかとの不安の中、舩木船長は意を決し、小型船の約800メートルまで近づいて写真に収めた。

 同組合の浜出征勝組合長によると、大和堆で違法操業の漁船に遭遇したのはことしから。6月上旬から目撃情報が入り、同月下旬から7月上旬にかけて最も多く、数十件に上っている。

 違法操業船はソフトボールほどの大きさのブイを使って流し網漁を行っている。組合の漁船はプロペラに網を巻き込み運転不能になるのを恐れ、狙った場所で漁ができなかったり、約千メートルに及ぶ網が障害になり、漁場に入れず引き返したりするなどの被害が出ているという。

 県底曳網漁業協会や県水産課も、大和堆で北朝鮮船が違法操業していることを把握している。海上保安庁広報室によると、同庁は今月上旬から大和堆周辺に大型や中型の巡視船や航空機を派遣し、集中取り締まりを実施。24日現在、延べ約570隻の北朝鮮漁船に退去警告を出した。

 同組合では6月下旬から8月にかけ、甘エビ漁で7隻の漁船が4回前後大和堆へ向かう。同組合では違法操業船との遭遇に備えて▽出漁は2、3隻の複数で▽密な情報交換―などを呼び掛けている。海保庁が取り締まりを始めた今月中旬以降は違法操業の数は減ったが「また船が来て漁場を脅かすかも」と不安の声がなくなることはない。

 舩木船長が大和堆で船の写真を撮影した日から9日後の7月4日、北朝鮮のミサイルが日本のEEZ内の日本海に落下した。26日から、再び大和堆へ出漁する舩木船長は「北朝鮮の船は怖いし、ましてやミサイルはどうもできない。ただ、漁をしないと収入がない」。浜出組合長は「万一があったら取り返しがつかない。危険な状況を政府に訴えたい」と話した。

【北朝鮮情勢に詳しい県立大の島田洋一教授(国際政治学)の話】

 遠方の大和堆に、これだけ大量の船が集結しているのは、国の組織的な行動だからだろう。海上保安庁の大型巡視船や航空機が取り締まりを行っているが、同庁は尖閣諸島の対応に追われており、まだまだ手薄。もっと態勢を強化する必要がある。北朝鮮は今後も随時ミサイルを発射するはず。当然、排他的経済水域内への着水の危険性も少なくない。

福井新聞社