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欧州発の次世代検索エンジン、Facility Liveの「人間語検索」は何が新しいのか

7/25(火) 16:00配信

日刊工業新聞電子版

■I4.0主導の欧州、IoT見据えた検索技術

 日本で2007年度から実施された「情報大航海プロジェクト」を含め、これまでに何度も「次世代の検索エンジン」という言葉を耳にしたり、記事を読んだりしたことがあります。ただ、実際には、インターネット検索最大手で、人材も技術も資金も豊富なグーグルの独壇場を脅かすには至っていないのが実情のようです。

 そこで、グーグルや検索エンジンの「Bing」を擁するマイクロソフトを含め、これら米IT大手と真っ向から渡り合うのではなく、IoTが広く社会に普及する将来を見据え、新たな検索エンジンの開発に挑む企業も出てきています。

 2010年にイタリア北部のパヴィーアで設立されたスタートアップのファシリティライブ(FacilityLive)も、その1社。日本を含む44カ国で取得した特許をもとに、次世代検索エンジン技術を開発しています。

 今のところは世界的な通信会社や金融機関、行政機関などにB2B(業務用)のオンプレミス(顧客側が自社保有)の形で検索サービスを提供していますが、将来はクラウドでのB2C(消費者向け)サービスも視野に入れ、どこでも誰でも同社の検索技術を使えるようにしていく方針でいます。

 「検索件数が増大しているのにも関わらず、インターネットでの検索エンジンの技術は基本的に変わっていない。キーワード検索に依存している。結果として、関係のない多数のページが画面に表示されることになる」。ファシリティライブ共同創業者兼CEO兼CTOのジャンピエロ・ロティート氏は、現在のネット検索の課題をこう指摘します。

 ロティート氏によれば、今のところ、意味検索や自然言語処理が脚光を浴びてはいるものの、将来の検索でカギとなるのは人工知能(AI)や自然言語処理ではなく、「人間語検索」だと言います。

 現在のAIでは一度に対応できるタスクが限られるため、一つの文章にいくつもの問いや条件が入った形の質問への対応が難しいというのです。

 一方で、人間語検索では、新しいアルゴリズムに基づいて情報を整理し、「人と人とが言葉でやり取りするのと同じように、質問と答えがきちんと噛み合うようになる」と言います。

 多くのデバイスやセンサーがネットにつながるIoT時代を迎え、個人が発信するデータの爆発的な増加が予想されています。そうした社会を見据え、ロティート氏は5年後や10年後には今以上に、我々の健康状態や税金、車、家などに関する情報が検索されるようになり、「これまでのアプローチとは全く異なる、より正確な検索手法が必要になる」と見ています。

 約30年にわたって出版分野でのデジタル技術の開発に携わってきた同氏は、グーグルはじめ米国のIT企業のアプローチを「ピュア・アルゴリズミック(純粋にアルゴリズム的)」と呼び、アルゴリズムに人間が支配されているという。それに対し、自分たちのやり方は「欧州的なアプローチ」であり、より人間中心的な視点に立っているとしています。

 欧州といえば、AIの分野で世界最強の囲碁棋士を5月に破ったディープマインドは英国企業ですが、2014年にグーグルに買収され、現在はその傘下にある。ほかにもAI関連で有力なスタートアップが英国や欧州には出てきているようですし、昨年ソフトバンクグループが買収した英ARMホールディングスは、省エネ性能の高いモバイル機器向けの半導体プロセッサーの設計図を一手に供給し、今やなくてはならない貴重な存在です。

 また、産業IoTではインダストリー4.0をテコに、ドイツの大手企業が製造プラットフォームビジネスへと乗り出し、自動運転車では特にドイツの大手高級車メーカー3社の躍進がめざましいところ。果たして、検索技術でも欧州復権となるでしょうか。