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《ブラジル=樹海コラム》日伯関係の大変化を予感させた夜(四世ワーキングホリデービザ、11月に開始)

7/25(火) 6:51配信

ニッケイ新聞

 下地幹郎衆議院議員(日本維新の会)による四世ビザ説明会からの帰り道、「日伯関係の大変化を予感させる一晩だった」としみじみ感じた。別室での記者会見で下地衆議に「票にもならない日系人のことを、どうしてそんなに一生懸命やってくれるのか?」と単刀直入に聞いたのに対し、思いもかけない答えが返ってきたからだ。
 ブラジル側としては「東京五輪を前に日本で加熱する労働者不足を何とかするために、在日ブラジル人待遇や子弟の教育問題に眼を瞑って、ただ単に工場労働者を駆り出そうとしている」という疑いが頭から離れない。「産業界から人手不足解消のために動いてくれと要請されたから」と議員が答えるのであれば、まっさきに「反対!」と主張するつもりだった。
 だが下地衆議は、「これには日本の将来がかかっている。日本の人口減少をどうくい止めるか。諸外国のように移民を受け入れるのは難しい。それなら日系社会の皆さんと手を合わせて行かないと、日本の将来は難しいと思う。それには教育面の改革は必要不可欠。事実、我が党は大学までの教育無償化を主張している。今回の件は、なにも就労のためだけではない」との背景を熱く語った。
 日伯関係自体が変わる予感を感じる。こんな国会議員が今までいただろうか。
 新大陸には300万人以上の日系人がいるが、この数では日本の人口減少問題への貢献はわずかなものだ。でも190万日系を抱えるブラジルでは、常に日本に対する片思いの部分が強かった。「手を携えて何かを一緒にやっていけるはず」との声は、移民が天下国家を論じる中で出てくることはあっても、日本の国会議員の口から出てくるとはゆめゆめ思わなかった。
 コラム子からの「日本のデカセギ子弟の高校卒業率は3割以下だと聞いている。これを日本人並にするような政策が同時に行われないと、四世ビザによって犠牲者が増えるだけではないか」との意見に、議員は「文科省の定住外国人関連の教育施策によって、外国語ができる補助教員を付けることが始まる。いきなり日本人並の9割にはならなくても4割、5割には上がるはずというデータがある。教育問題については、いろいろな方から厳しいコメントを頂いた。日本に持ち帰ってしっかりと取り組む」と心強い言葉を放った。
 とはいえ、今まで30年間も、教育問題をほぼ放置してきた〃実績〃を思えば、「今回だけは信用しろ」といわれても出来るわけがない。本当に有効な手立てはあるのか。文科省任せでは今までの繰り返しだろう。子供の教育は待ったなしだ。一年遅れれば数千、数万人の人生を狂わすことになる。言葉通り、キチンと解決してほしい。
 教育への取り組みとセットでなければ、11月から始まる四世向きビザは、日系社会から日本の産業界の最下層労働者を提供するだけになってしまう。
 この制度は、四世本人に3年間の日本語・文化学習期間付きの就労ビザを与えるだけでなく、配偶者や子供まで連れて行ける。四世の子供(五世)を、日本人と同じ扱いで受け入れるよう文科省が指導できるかどうかが鍵を握る。
 自称〃ブラキチ〃の議員先生は沢山通り過ぎたが、誰もそんな法案を考えなかった。下地議員ら3人は今回ブラジル初訪問だという。議員はペルー日系社会で見聞きしたことをベースに、今後の日本と南米日系社会の有り方を構想した。
 これは沖縄県と世界の県系人が手を合わせて世界ウチナーンチュ大会を開催する構図に似ている。その世界大会を通して、沖縄県民の中に国境を超えた強い連帯感が醸成されている。この国籍を超えたユイマール精神は、いずれ大きな成果をもたらすだろう。
 この「世界における同胞意識」は、沖縄県民が日本の最先端を行っている。日本の日本人は国籍の違いを非常に気にするが、在外日本人からすれば「書類上の問題」の部分もある。本当に大事なのは本人のアイデンティティだ。
 日本の日本人の意識からすればただのガイジンでも、世界からすれば日本人も日系人も一つのエスニシティ(文化的特性を共有する集団)に見える部分がある。下地議員は沖縄県選出。我々のような在外日本人が普通に持っており、沖縄県系にも共通するそんな考え方を、日本全体に広げる法案としてこれを構想したのではないか。その意味で画期的だ。(深)

最終更新:7/25(火) 7:05
ニッケイ新聞