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ローソンの「売上高1割アップ」が困難な理由

7/26(水) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 2017年5月に行われたローソンの株主総会では、竹増貞信社長に対して株主から厳しい質問が相次いだ。特に株主の関心が高かったのは、親会社となった三菱商事との利益相反問題である。

【竹増貞信社長(写真は2016年11月に撮影)】

 コンビニとそこに商品を納入する商社との間には、常に利益相反が発生する可能性がある。コンビニにとってはできるだけ安く商品を仕入れた方が利益が大きいが、商社は高く売った方がよい。別々の企業であれば、最終的に交渉で価格が決まるが、コンビニと商社が同じ企業グループだった場合、双方のバランスを取ることは極めて難しくなる。

 以前はこうしたコンビニと商社の関係について、市場があまり意識することはなかったが、最近ではコーポレートガバナンスに対する意識が高まり、利益相反などの問題はシビアに評価されるようになってきた。

 竹増社長は「1円でも条件が悪ければ三菱商事とは取引しない」と発言するなど、ローソンの利益を最優先に考える姿勢を強調して総会を乗り切った。

 実際、竹増体制で掲げられた中期経営計画は意欲的な中身であり、計画を実現できれば、ローソンが三菱商事にいいように使われるのではないかという不安は確実に払拭(ふっしょく)されることになる。だが、設定された数値目標は極めて高く、現時点においてこれを達成する具体的な道筋は見えていない。

 特に業界関係者が驚愕(きょうがく)しているのが、各店舗に日販(1日当たりの売上高)を2021年度(2022年2月期)までに1割以上引き上げるという目標である。簡単に思えるかもしれないが、現実はまったく異なる。今のコンビニ業界にとって売上高の1割アップは至難の業といってよい。

●飽和市場でどう戦うのか

 売上高を1割アップさせるためには、来客数を1割増やすか、顧客1人当たりの売上高(客単価)を1割上げるか、あるいは、両者の組み合わせで1割増を実現するしかない。分かりやすいように、来客数を1割増やす話と、客単価を1割上げる話に特化してみよう。

 現在、コンビニの市場は飽和状態となっており、来客が見込めるエリアには、ほぼ限界まで店舗がひしめき合っている。このような状況で特定のコンビニだけの売上高を1割増やすためには、他のコンビニから1割分、顧客を奪ってくるしかない。人は毎日通うお店を簡単には変えないので、よほど魅力的な商品がなければ、わざわざ他の店にはいかないだろう。仮に画期的な商品を登場させたとしても、他店がすぐに模倣するので、顧客を奪い、それを定着させることはそう簡単ではない。

 客単価の1割アップも同じである。コンビニの平均客単価は数百円なので、客数が変わらない状態で全体の売上高を1割上げようと思った場合には、ほぼ全ての客に数十円の商品をもう1品余分に買ってもらう必要がある。値段が数十円の商品は少ないので、半分の顧客に百数十円の商品をもう1つ買ってもらうといった方が分かりやすいかもしれない。

 自分自身の行動に当てはめて考えれば分かりやすいが、ある特定のコンビニ行ったときだけ、もう1品、必ず余計に買ってしまうほど魅力的なお店というのは、ちょっと想像しにくいのではないだろうか。

 つまり、来客数を1割増やすことや、客単価を1割上げることは、実はとてつもなく難しいことなのだ。実際には、来客数を5%増やし、客単価も5%上げるといった形で1割の売上高アップを目指すことになるが、難易度が極めて高いという点では同じである。

●ローソンはファストフードを強化

 ローソンの中期経営計画では、高い数値目標を実現するため、商品力を強化する方針を打ち出している。具体的には弁当やサラダ、おにぎりなどファストフードを拡充するとしているが、これは特にローソンに限った話ではなく、各社が力を入れたいと考えている分野だ。

 ファストフードは売上高に占める割合が高く、しかも利益率が高い。またこうしたファストフード類は、他の商品の「ついで買い」を誘発するので、さらに売上高アップに貢献する可能性がある。ローソンはこれまでファストフードが弱かったので、うまくいけば売上高を大きく伸ばすことができるかもしれない。

 一方、ファストフードは賞味期限が短く、余った商品は全て廃棄しなければならない。売り切るだけの客数が見込めなければ逆に経営全体の足を引っ張ってしまう。

 業界トップのセブン-イレブン(以下、セブン)は、良い立地で出店しているケースが多く、そもそも来客数が多いという特徴がある。このためファストフードなど賞味期限の短い商品も思い切って仕入れることが可能となっている。これがセブンの日販が高い理由である。

 店舗の売上高は、その店舗が本来持っている潜在顧客数と商品力のかけ算で決まってくるが、顧客数と展開できる商品には実は密接な関係がある。来客数が少ない状態では、展開できる商品に制限が出てくるため、良い商品を並べたくても並べられない。単純にもうかる弁当を増やせばよいという話にはならないのだ。

 セブンほど来客数が多くないローソンがファストフードを強化し、売上高を1割増やすためには、もう少し具体的かつ総合的な戦略が必要なのだが、今のところその全体像は見えていない。2021年までは多少時間があるので、今後、商品構成の大胆な変更など、思い切ったプランが出てくるのかもしれない。竹増社長の手腕が問われている。


(加谷珪一)

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