ここから本文です

出光の公募増資、既存株主の痛手は? 仮に合併が成功したら……

7/26(水) 20:20配信

ZUU online

国内石油業界の再編が目下進行中だ。ここ数年の石油価格下落による業績の落ち込みや、再生可能エネルギーなどの代替エネルギーに世界的な注目が集まっていることから、石油単体での事業の将来性に危機感を持っているためだ。

石油関連企業はそうした閉塞感のなかで合併など企業再編によって立て直しをはかろうと必死だ。過去にはJXホールディングスと東燃ゼネラル石油の合併が話題となった。

そのような中で、出光興産と昭和シェルの合併の行方が注目されている。両者の合併に関しては、いくつかの問題が生じている。合併反対を主張する創業家と出光興産の対立問題、そして出光興産の公募増資問題である。

■出光興産の公募増資問題 既存株主への影響

出光興産と創業家の対立は数年前から続いているが、出光興産が新株を発行する公募増資の実施を行うことを決定した。公募増資が行われると、創業家の持株比率が下がり合併への直接的な反対票を投じることができなくなるため、創業家は反対票を投じることを防ぐための不正な公募増資であることを主張し裁判所に公募増資の差し止めを求めた。しかし、東京地裁は7月18日に請求を退ける判決を出している。これを受けた出光興産側は20日、4800万株の新株発行を予定通り行った。

出光興産、昭和シェルの合併の実現へと一歩近付いているようだが、創業家の持株比率が希薄化する以外に、既存の株主にとって不利益となることがある。それが次に述べる株式の希薄化である。

■公募増資で投資家に不利益? 株式の希薄化とは

公募増資は、新規に株式を発行して広く投資家へと株を買ってもらうことをいう。公募増資によって発行済み株式数が増えるため、既存の株主にとっては「株式の希薄化」という不利益を一時的に被ることが多い。

株式の希薄化とは、株式の総数が増えることで、1株あたりの利益が下がってしまうことをいう。例えばある企業の発行済みの株式総数が10000株、純利益が100万円だった場合は1株あたりの利益は100円だが、増資を行い株式を新たに10000株追加して20000株にすると、1株あたりの利益は単純計算で50円となってしまう。

1株利益が大きく減少することは、現在の株価が割高になるということであり、公募増資が決定すると一般的に株価が下落するケースが多い。なお、公募増資の目的が新規事業の拡大のために使用される場合、今後利益が大きく伸びる可能性があると見なされて株価が上昇することもある。必ずしも「公募増資=投資家にって悪」ではないと知っておくとよい。

■今回の公募増資で投資家の痛手はどれくらい?

出光興産はすでに1億6000万株の発行済み株式数があるが、公募増資によって新たに4800万株(発行済株式数の30%相当)増加することになる。

これまで1株あたりの利益を出すために純利益を1億6000万株で割っていたものが、これからは2億800万株で割ることになり、単純に30%分利益が薄まることになるのだ。

その結果、公募増資を行うことを決定した7月3日の翌日、出光興産の株価は大幅に下落(終値ベースで3260円→2896円)、その後も増資による発行価格の決定まで株価は下落している。

ちなみに発行価格は7月12日に2600円と決定しており、7月25日現在も2600円台後半で株価は推移している。2017年5月には4000円近い株価があったことを考えると、一時的な株価下落という可能性があるとはいえ、投資家は公募増資により株価下落という不利益を同時に受けているようだ。

■仮に合併が成功したら? 利益を増やすために

仮に両社の合併が成功したとして、公募増資で希薄化された株式価値を元に戻す、願わくばそれ以上の利益を上げて株式価値を上げる成果を投資家としては望みたいところである。

石油精製販売事業においては両者ともに扱うところであるため、合併による売上高の増加が考えられるが、原油価格の下落や資源の有限性を考慮すると石油以外のサービスにおいて相乗効果が出ることを期待したい。

出光興産の17年3月期の売上高は3兆1900億円、16年12月期の昭和シェルの売上高は1兆7200億円となっている。単純に考えると合併により実績ベースで5兆円近い売り上げを上げる巨大な企業が誕生することになる。業界首位のJXTGホールディングスは8兆1300億円の売上高と頭一つ抜く売上高を残す。首位には及ばないものの5兆近い売上高があれば今後は石油事業以外のサービスにも目を向けることができるはずだ。

例えば、出光興産は発電所事業やアグリバイオ、昭和シェルでいえば太陽光発電などのエネルギーソリューションといった石油関連事業外のビジネスへと力を入れることができるはずだ。実際、出光興産は3月にも地熱発電として、滝上バイナリー発電所の稼働を開始させている。

業績回復傾向のある両社ともに石油関連以外のビジネスにおいては前年比で減益となってしまっているので、その他の分野の立て直しとそれに伴う業績拡大に期待したいところだ。いずれにせよ今回の公募増資により投資家の懐は多少なりとも痛い目を味わってしまっている。今後の進捗を慎重に見守りたいところだ。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「インカムライフ.com」。著書に「超優待投資・草食編」がある

ZUU online

最終更新:7/26(水) 20:20
ZUU online