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津久井やまゆり園の建て替え問題 分散めざすも迷走

7/26(水) 14:39配信

福祉新聞

 昨年7月に殺傷事件のあった神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)の建て替え問題が迷走している。県障害者施策審議会の専門部会(堀江まゆみ・白梅学園大教授)は18日、報告書の骨子案を示した。元の場所(同市緑区千木良)、今年4月に仮移転した芹が谷園舎の周辺(横浜市)、県所管域(県内の政令市を除いた地域)の3カ所に地域生活を支える拠点として施設整備する方針。現在、芹が谷園舎などに分かれて暮らす入所者計131人に複数の選択肢を用意することが妥当と判断したが、不明瞭な点が多く、委員や入所者家族から強い異論が上がっている。

 骨子案が想定する県所管域は土地探しから始めることになり、建て替えまで5~10年はかかるため、「将来的な課題」と整理。横浜市の芹が谷には県有地はあるものの、同市の施設整備計画との整合性は不明だ。定員規模も示さなかった。

 同部会は8月上旬に報告書をまとめるとしているが、県が相模原市、横浜市など県内の自治体と調整する事項をたくさん残したままの報告書になる公算が大きい。県は報告書を踏まえ、9月下旬までに県議会などに報告し、再生基本構想を決める予定だ。

 同部会が描く施設は10人程度のユニット二つを「コテージ」(独立した居住棟)とし、三つのコテージとセンター棟(日中活動の場など)で構成。これを千木良、横浜、県所管域に整備する考えだ。

 これに対し、委員は異論を唱えた。

 「千木良に戻りたい人は全員戻れるようにすべきだ」と主張してきた伊部智隆・神奈川県社会福祉協議会総務企画部参事は、県立施設として横浜でどんな役割を持つのか疑問を呈し、「運営主体のかながわ共同会と話し合ってほしい」とした。

 分散整備を唱えてきた安藤浩己・神奈川県知的障害福祉協会顧問も「なぜ今さら政令市の横浜に造るのか」と首をかしげる。

 事件直後から千木良に全員戻れるよう建て替えを望んできた入所者家族会の大月和真会長は、同部会の傍聴後、記者団に対し「骨子案は津久井やまゆり園のやってきたことのどこに問題があったのかを明確にしていない。単に世の中の雰囲気で施設を小規模にするというだけのことで、失礼だ」と不快感をあらわにした。

 県は昨年9月、2020年度までに千木良で同規模の施設を建て替える方針を表明。しかし、それに対する異論が噴出したため同部会で議論している。

 事件当時の入所者は7月19日現在、仮移転先の「芹が谷園舎」(横浜市)に111人、県内の複数の県立施設に20人が暮らす。

 なお、同園を運営する社会福祉法人かながわ共同会(草光純二理事長=今年6月23日に選任)は19日、ホームページで骨子案への見解を発表。「分割整備は理解に苦しむ。私どもの願いがかなわないのかと落胆を禁じ得ない。分割によりスケールメリットが減少し、求められる役割を十分発揮できなくなることを懸念する」とした。

 芹が谷に引っ越す説明会での「このままここがいい」という入所者の声などを集めた資料「私達のことを、私達抜きに決めないで」も見解に添えた。

最終更新:7/26(水) 14:39
福祉新聞