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「麻央さんとは違う」車椅子シングルマザーが在宅でがん治療をするという現実

7/26(水) 21:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

元CM制作プロデューサー、現在は乳がんの骨転移による下半身麻痺で在宅療養中の久野美穂さん(37)は、がん闘病中の人や家族が集う場で出会ったのを機に、私が取材を続けてきた女性だ。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんの妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんと同じ30代で、「ステージ4」(がんの進行度による分類で、もっとも進んだ段階)の乳がんを抱えながら子育てしていたところも一緒。麻央さんが生前綴っていたブログを読んでいた彼女は、「子どもの前では母親でいなければと麻央さんが奮起する姿は、自分と重ねて見ていました」。

【画像】「ステージ4」の乳がんを抱える久野美穂さん。長男の碧星くんが学校から帰宅すると、ベット上で宿題をみる。「激烈に働いていた頃は子どもの寝顔しか見られない毎日でした。今になって、親子の時間を取り戻しているんですかね」

一方で、「庶民とは違う麻央さんの闘病生活がスタンダードと思われたら……」と違和感も感じたという。2年前に離婚してひとり親になった美穂さんは、病魔と闘いながらも子を養うために働き続けてきた。だが、昨年には会社から解雇され、間もなく失業保険の受給期間も切れる。そんな彼女が遭遇した、「年齢の壁」や障害福祉と子育て支援制度の「エアポケット」とは?

会社からは「治る見込みのない人は雇えない」と解雇された

美穂さんと初めて会ったのは昨年10月だった。その頃には、彼女は骨に転移したがんの影響で歩くのが難しく、家の中でも杖をつきながら家事をこなしていた。常時ちょろちょろ動き回る長男・碧星(かいせい)くん(7)の世話もやっとやっと、という状況が続いていた。

乳がんと診断されたのは2013年。翌年には骨転移が見つかった。親戚や知人の資金援助を受け、複数のがん病巣を同時に治療できる高精度な放射線治療に挑み、約30カ所あったがんが7カ所に減った。 治療を乗り越え、2015年1月にCM制作の現場に復帰した。

「体調が戻ったら、またフルスロットルで働いてしまって……」

この時期に美穂さんが手がけたCM作品は、オンラインの動画コンテストで協賛企業賞を受賞した。だが、多忙を極めた美穂さんと当時の夫のとの生活がすれ違い、顔を合わせればけんかが増えた。同年10月に離婚した。

やがて、数カ所残っていたがんが増殖し病状が悪化。昨年9月には正社員として勤めていたCM制作会社から解雇を通告され、退職した。痛みで顔をしかめる姿を息子に見せぬよう、モルヒネ(医療用麻薬)が効くまでの間はいつも家のベランダでへたり込んでいた。休職を申し出たところ、会社側からは「CM制作は体力がないと。君の休職中に人の工面も必要だ。いつまでに治るという見込みのない人は雇っておけない」と告げられた。

ぐしゃりと崩れ込むように自宅で倒れたのは、今年2月末のこと。この時点では脊髄と腰椎のがんが進行して下半身が麻痺し、約3カ月にわたり入院して家を離れなければならなかった。

ママの留守を待つ間に、碧星くんは小学2年生に進級した。

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最終更新:7/28(金) 12:29
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