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F1とVR技術の未来図。自由にレースと“繋がれる“日はくるか?

7/26(水) 17:33配信

motorsport.com 日本版

 筆者の後ろからは、メルセデスのルイス・ハミルトンがメカニックと共にプラクティス前の最終チェックや、プログラムの確認について話し合う声が聞こえる。

【写真】先日行われたF1 Live LONDONでも、ファンがVRを体験した。

 しばらく経つと、ハミルトンがマシンに乗り始め、ガレージ中に響き渡るエンジン音を轟かせながら消えていった。轟音が消え失せると、次の聞こえてくるのは、ガレージの一角に集まったクルー達の話し声だけだ。

 筆者が立っている場所は、実際のメルセデスF1のガレージではない。アメリカ・テキサス州オースティンのダウンタウンの工業地帯にある暗室だ。

 メルセデスはスポンサー企業であるボーズ(Bose)と提携し、その暗室を『AR(拡張現実)/VR(仮想現実)ガレージ・エクスペリエンス』として一新した。

 被験者はワイヤレスヘッドホンを経由して、バーチャル・ガレージの中を歩き回りながら、様々な音を体験することができる。暗室には光のマッピングが施されており、被験者はそれをたどることで、ガレージの中のどの位置に立っているのかを把握することができる。

 メルセデス/ボーズの企画は、ARとVRを用いることによって、”F1のセールスポイント”を強く訴求することが可能であることや、F1はAR/VR分野との相性が良いことを証明した。

 技術の進歩により、今やVRは黄金期を迎えようとしている。現在、消費者向けに各テクノロジー企業が懸命にAR/VR分野の開発を推し進めているが、本当にF1はそれに対応しうるだけの準備が整っているのだろうか? それ以前に、我々は実際に来場して自分の目でレース観戦をするよりも、自宅でヘッドセットを装着して座りながらレースを”体験する”未来を本当に望んでいるのだろうか?

ファンが望んでいるのは……

 オーディオ関連会社であるボーズにとって、視覚ではなく聴覚を主軸に置いたヴァーチャル体験を企画することが重要であった。しかし結局のところ、そのプロジェクトを計画する動機は、VR分野を推進させるテクノロジー企業と同じであるといえよう。

 ボーズのグローバルマーケティング責任者であるイアン・マクギボンは、今回の企画に携わるのに際し、F1ファンが望むコンテンツとは、モバイルデバイスが実現できるクリエイティビティを超越した”ユニークなもの”であると説明している。

「消費者は自分の体験を第一に考えている」

「その一方、彼らはステージのカーテン裏にも興味があるのだ。カーテンの裏側にあるシナリオこそ、最高の面白さがあると感じている」

「日頃、YouTubeやFacebookなどで見ているコンテンツも素晴らしく魅力的だろう。しかし結局、人々は実体験を望んでいるのだ。魅力的なコンテンツは今後も増えていくことだろうが、実体験型のコンテンツも同じことが言えるだろう」

 技術が進歩するにつれて、我々が感覚的に生活できるようになっているのは確かだ。もはやコンピューターのキーボードだけが世界と交流する手段というわけではない。

 タタ・コミニュケーションズのF1事業部の代表であるメーユル・カパディアは、次のように語る。

「テクノロジーの革新によって、我々のアクションは自然な感覚で行えるようになってきている」

「iPhoneが誕生したことで、我々は”触る(タッチ)”という感覚に回帰した。その感覚はコンピューターに何かを入力する行動よりも、我々にとってとても自然なことだ。またAmazon社のAlexa(IAアシスタント/機能のひとつとしてクラウドベースの音声認識サービスが挙げられる。Amazon Echoが皮切りとなって海外の消費者に親しまれている)やGoogle(音声認識サービスAPIを展開)が我々の自宅に取り込まれ、音声による入力を行なえるようになった。声を出すことはタッチよりもさらに基本的な感覚だ。このような進歩により、様々な世代の人々にとって、テクノロジーはますますアクセスしやすくなっている」

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