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神戸に「怖い絵」集結、読み解く楽しさも

7/26(水) 19:00配信

Lmaga.jp

「恐怖」を切り口に、絵画を「読み解く」楽しみを提案する『怖い絵』展が、「兵庫県立美術館」(神戸市中央区)で9月18日までおこなわれています。

【写真】ポール・セザンヌ《殺人》やウォルター・リチャード・シッカート《切り裂きジャックの寝室》など、タイトルも怖い

同展は、ドイツ文学者・中野京子氏のベストセラー『怖い絵』の第1巻刊行から10周年を記念して企画されました。約80点からなる作品の選定には、中野氏も関わっています。展覧会は「神話と聖書」、「悪魔、地獄、怪物」など全6章で構成。「悪魔、地獄、大災害など直接的に怖い絵もあれば、一見すると怖くないけど描かれた背景を知るとゾッとする絵もあり、様々なテーマ、様々なレベルの恐怖が味わえます」と学芸員の岡本弘毅さん。作品の隣には子供にもわかる平易な文章で作品解説が記されており、一部の作品には「中野京子's eye」と題して中野氏が直接説明してくれるパネルもあるので、美術の初心者も安心して楽しめるでしょう。

ポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、イングランド史上初の女王となるも、政争により9日後に廃位され、7カ月後に16歳と4カ月で処刑された悲劇の人物を描いた作品です。覚悟を決めて処刑に臨む主人公、嘆き悲しむ侍従たち、首置台へと誘う司教、大きな斧を持つ処刑人の姿が、克明に描かれています。

また、ウォルター・リチャード・シッカートの「切り裂きジャックの寝室」は、19世紀末のロンドンを恐怖に陥れた連続猟奇殺人鬼をテーマにしていますが、一見すると単なる室内画です。シッカートはこの事件に異様なほどのめり込み、ジャックが一時期住んでいたと言われる家を調べてわざわざ借りたほどでした。実は彼こそが真犯人ではないかという説もあり、それを知るとこの静かな絵がとてつもなく怖い印象に変化します。

このように、作品の背景にある歴史や事情を知ると、美術鑑賞がぐっと奥行を増して面白くなります。多くの日本人にとってキリスト教の物語やヨーロッパの歴史は縁遠く、それが宗教画、神話画、歴史画を遠ざける原因になっていました。本展はその問題を簡単な解説一つで解決したところが画期的です。本展が、絵画を「読み解く」楽しみに目覚めるきっかけになるかもしれません。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

最終更新:7/26(水) 19:00
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