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“乗り捨て”をどう解決? 世界で広がる「自転車シェアサービス」の今

7/27(木) 7:10配信

ITmedia NEWS

 中国発スタートアップ「Mobike」の日本進出などで、注目を集めている自転車シェアリングサービス。国内でもソフトバンクや各行政が参入し、期待が高まっている市場といえるだろう。

【画像:スマホで乗れる自転車】

 しかし、自転車シェアがより広く普及するには、駐輪スペース、支払い・返却方法、利用者のモラルなど、乗り越えていかなければならない課題は多い。

 そこで今回は、シンガポールを事例に自転車シェアの課題と可能性について考えてみたい。

 なぜシンガポールか。同国では、すでにMobikeが本格的に事業展開しているだけでなく、ほかの中国スタートアップや地元スタートアップが参入し、激しい競争を繰り広げている。またシンガポールはトップダウン行政、狭い国土などが理由となり、日本に比べ社会実験における効果をいち早く見ることができる。

 シンガポールの事例から、日本の自転車シェアリングがどのように発展してくのか、ヒントを得ることができるかもしれない。


●“3社が競合”するシンガポール 「自転車の見つけやすさ」が鍵

 シンガポールではもともと行政が自転車シェアリングプロジェクトを主導していく計画だったが、Mobikeなどスタートアップの参入により、いったん行政は手を引き様子を見るスタンスを取っている。

 2017年7月時点で、3社のスタートアップが同国で自転車シェアリング事業を展開している。地元シンガポールのoBike、中国のMobikeとofoだ。

 これら3社のサービスモデルはほとんど同じだが、自転車の見つけやすさやアプリの使い勝手などが異なり、それらがユーザーによる評価の差につながっているようだ。

 それぞれの共通点と特徴を見ていきたい。

 oBikeは、17年1月にプロトタイプのサービスを開始。公式に事業を開始したのは4月から。同社によると、2月時点でシンガポール国内に1000台の自転車を配置したという。

 サービスはiOS/Androidアプリで利用できる。利用には、まず登録時に49シンガポールドル(SGD)をデポジットとして支払う。7月20日の為替レート換算では約4000円ほど。アプリ内で、Paypalかクレジットカード、デビットカードで支払える。ちなみにoBikeは学割を提供しており、学生のデポジット料は19SGDに割引される。

 デポジット支払い後、アプリ内のマップから近くにあるoBike自転車を探し、自転車に貼り付けてあるQRコードをスマホで読み取ると、自転車のロックが解除され利用可能に。利用料は、15分あたり50セント(約41円)。

 中国のMobikeとofoもiOS/Androidアプリに対応。Mobikeのデポジット料は49SGD、ofoは10SGD安い39SGD。Mobikeの自転車利用料は30分50セント、ofoの利用料は1時間1SGD(最大2SGDまで)となる。

 一見3社とも登録・利用方法やデポジット・利用料金がほとんど同じで、違いがないように見える。しかしユーザーから見ると、3社のイメージは大きく異なる。少なくとも筆者からすれば、現時点のシンガポール市場において、ofoに比べoBikeとMobikeの方が利用しやすいイメージだ。

 最も大きな違いは「自転車の見つけやすさ」にある。

 街中を歩いてみると、oBikeとMobikeの自転車を目にする頻度は非常に多いが、ofoはほとんど見かけない。シンガポール国内の他メディアでもofoの自転車が見つけにくいことに言及している。

 前述の通り、oBikeは国内に1000台の自転車を配置済みという。Mobikeも17年中に1000台の配置を目標としている。一方で、ofoは最近になって500台を導入すると発表したばかり。やはり配置台数に開きがあるようだ。

 さらに、ofoのサービスはGPS非対応で、アプリの地図上で自転車の位置を特定できない。一方のoBikeとMobikeの自転車はGPS対応で、アプリの地図上で検索できる。当たり前だが、見つけられないものは利用できない。ofoが今後取り組むべき重要課題だ。

●“乗り捨て”問題を解決する方法は?

 街中の至る所で利用できる便利な自転車シェアリングサービスだが、課題がないわけではない。最も懸念されているのは、自転車の違法駐輪、つまり“乗り捨て”だ。国立公園や私有地など、指定場所以外に駐輪した自転車に対して、公園利用者や周辺住民などからクレームがあがっている。

 こうした違法駐輪が増えればサービスの存続が危ぶまれる。各社は、違法駐輪を防ぐために、クレジットポイント制を導入し、ルール通りの利用にインセンティブを設けている。各社のクレジットポイント制は同じような仕組みだ。その詳細をoBikeの例で見てみたい。

 oBikeのクレジットポイント制度では、まずユーザーに100ポイントのクレジットが与えられ、優良ユーザーにはポイント加算、ルール違反者にはポイント減算の措置をする。

 例えば、自転車を乗り捨てたり、ロックをし忘れたりすると、20ポイント減算する。一方で、故障した自転車を見つけて報告した場合や、乗り捨てされた自転車を報告した場合は23ポイントを加算する。

 もし、ルール違反を重ねてユーザーのクレジットポイントが60以上80未満になった場合、サービス利用料は15分あたり5SGDに、60未満の場合15分あたり50SGDに跳ね上がる。

 一方で、181ポイント以上稼いだ優良ユーザーには、何らかの報酬が与えられるようだが、現時点ではどのような報酬なのか詳細は明らかになっていない。

 シンガポールで展開する3社のサービスは、東京・千代田区の自転車シェアリングサービス「ちよくる」のように決められた場所に自転車を返却するという仕組みではなく、指定場所であればどこにでも駐輪できる仕組みだ。

 この「指定場所」という定義がかなり広く、実質ほとんどの場所に駐輪できると解釈されてしまっており、これも違法駐輪が多い1つの要因になっているようだ。

 実際、oBikeのWebサイトでは返却に関して「自転車は、指定された公共の駐輪エリアに返却してください」としか記載されておらず、ユーザーの混乱を招いているといえる。この問題に対して、oBikeは返却可能な場所をアプリの地図上で示すなど、返却場所を明確にするよう努めている。また、Mobikeも新たに自転車駐輪スペースを開設するなどして違法駐輪対策を進める。

 このような状況に対して、行政側から規制をかけるなどの目立った動きはない。もともと自転車シェアリングを主導する計画であったことを考えると、民間での発展を後押しするスタンスなのだろう。

 今後自転車シェアリングは、バスやMRT(大量高速輸送)地下鉄などの公共交通機関と連携するサービスとしてだけでなく、商業施設やイベントへの集客手段、社会・商業インフラの1つとしても発展していく可能性を秘めている。

 シンガポールにおける自転車シェアリング市場もまだまだ発展途上だが、クレジットポイント制やモバイルファースト、GPSの重要性など参考にできることは多いはずだ。

●ライター

執筆:細谷元

編集:岡徳之(Livit)

最終更新:7/27(木) 7:10
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