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上西、松居騒動になぜトランプが登場するのか

7/27(木) 7:25配信

ITmedia ビジネスオンライン

 ここ最近、日本ではインターネット発の話題が、週刊誌やワイドショー、ネットを中心に盛り上がっている。すでに食傷気味かもしれないが、衆議院の上西小百合議員のTwitter暴言と、女優・松居一代氏の離婚問題騒動である。

【上西議員、今後も炎上商法を貫くのか】

 この2つのケースについてはいまさら説明の必要はない。ただ興味深いのは、両ケースについて、米国のドナルド・トランプ大統領と絡めた話が出ていることだ。なぜトランプの名前が出てくるかと言うと、トランプは今、ネット(主にツイート)で暴言を吐きまくっている人物として世界的に認知されているからだ。日本でもトランプが実際にどんなツイートをしているのかよく知らくても、なんとなくイメージで人の暴言を「まるでトランプのようだ」などと発言する人がいる。

 実際のところ、上西議員や松居氏のネットでの言動はトランプっぽいのか。上西議員と松居氏の騒動と「ドナルド・トランプ」がどう交錯するのか考察する。

●上西議員の暴言ツイートは「炎上商法」

 まずは上西議員のケースだ。上西議員の暴言ツイートは周知の通り「炎上商法」そのものであり、彼女(と事務所?)の思惑通りにテレビなどで大きく取り上げられた。そして番組でコメントをした人などにもかみつくことで、さらなる炎上を生み、話題を作る。まさに上西議員側の思う壺だと言える。

 上西議員のケースで印象的だったのは、コメンテーターであるロバート・キャンベル氏のコメントをめぐる顛末(てんまつ)だ。キャンベル氏は朝の情報番組で、上西議員のツイートはトランプ米大統領と違って建設的ではないとコメントし、上西議員本人からTwitterで「建設的な意見を述べたり国会での活動状況を報じないんだから知らないんだろうけど、コメンテーターなら少しは調べてから話すべき」と反論された。

 だが、これについてはキャンベル氏の言い分が正しい。筆者はキャンベル氏の知り合いでもファンでもないが、そもそもキャンベル氏は今回の彼女のツイートについてコメントをしているのであって、政治家としては話題にならない上西議員の言動について発言しているわけではない。

●上西議員はトランプを見習うべき

 トランプとの比較で言えば、「他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ」「くたばれレッズ」といった今回の上西議員の発言は、数々のトンデモ発言をしてきたトランプよりも数段ひどいもので、トランプもびっくりするのではなかろうか。例えば、ゴルフが大好きなトランプは、最近も全米女子オープンの結果についてツイートし、韓国人プレーヤーの優勝を祝う言葉を7月16日にポストしている。純粋に、「優勝おめでとう」と。上西議員なら、優勝しなかった選手やそのファンを罵倒したかもしれないが、“大人気ない”との評判のトランプですらそこまで“大人気ない”ことはしない。

 トランプのツイートが全体を通して「建設的」かどうかは賛否あるが、少なくとも、自分と勝つか負けるかの対立をしている敵を罵倒することはあっても、一生懸命戦ったアスリートとファンをコケにすることはない。

 基本的にトランプがツイートで攻撃をする相手は、自分に否定的なメディアやセレブ、そして政府関係者だ。あとは選挙公約に絡む一部の人たち(イスラム教徒やメキシコ人)のみである。もちろんメディアを容赦なく「病気だ」と大統領らしくない物言いをしたり、あからさまな嘘をついたり、自分が主役のイベントでは参加人数を笑ってしまうほど盛ったりするが、そうした言動そのものは人に迷惑をかけない。

 トランプとの比較にかみつく前に、上西議員はトランプを見習うべきである。国会議員としての公務と一切関係ないサッカーについてコメントしたいなら、負けた側を口撃するのではなく、視点を変えて、トランプのように勝った側に祝いの言葉を投げかけるべきだっただろう。それが大衆を代表する人としての最低の品格であり、国会議員に求められる「ポリティカルコレクトネス」である。もし上西議員がどこかの政党に属していたら、あんな傍若無人な発言は決して許されないはずだ。

 上西議員は、繰り返しになるが、ポリティカルコレクトネスが極めて欠如していると世界的に評されるトランプ大統領から学んだほうがいい。トランプですら、純粋にスポーツチームを応援しているファン(子ども大勢いる)に対して、「他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ」というような的外れなコメントはしない。上西議員こそ、Twitterでの炎上に自分の人生を賭けている場合ではない。

 もっとも、上西議員には炎上をあおってきた“前科”もあるし、今後も同じことを繰り返すに違いない。上西議員がトランプに似ているところがあるとすれば、打たれ強いところだろうか。

●松居氏はトランプのSNS戦略を学んだ

 一方、離婚騒動の松居一代氏のケースはどうか。松居氏は「SNS」の手法をトランプから学んだというようなことを言っているようだが、YouTubeやブログを駆使した松居氏のネット戦略は、確かにトランプの戦略にも通じるものがある。

 松居氏発言によれば、離婚騒動の発端は、『週刊文春』の記者が一緒にハワイまで行って夫・船越英一郎の浮気調査などをしたのに、最終的には本人の意思に反して文春側が独自記事を掲載しようとしたことだった。松居氏は結果的に、ブログやYouTubeを使って、文春の発売日前に、文春にだまされたことや、自らの主張をネットにアップした。

 このやり口は、トランプをほうふつさせる。トランプも大統領選当時からきちんとメディア対応をしても、スタジオなどで専門家たちがいつも自分を批判すると不満をもち、自分で発言内容を支配できるTwitterなどにどんどん依存度を高めていく。就任後も依存度は高まり、2017年1月20日の大統領就任から半年で、991回もツイートしている。一方で、大統領としてメディアの前に立ち、単独で記者会見を行ったのはたったの1度だけである。

 トランプはツイートで自らの主張を表明することで、メディアというフィルターを回避している。記者会見を行えば、その場で嘘や間違いは指摘されてしまうし、メディアを介することで編集され、一番主張したいことが削られたり、結果的に発言を誤解されてしまうこともある。それゆえに、トランプは記者会見を極力行わずに、ツイートで支持者固めのためのツイートを続けている。

 「週刊文春に騙された」と言っている松居氏も同じ感覚でいるのだろうか。大統領選でトランプの勝利はSNS(主にTwitter)にあったと見ており、そこからSNSの戦略を学んだと発言している。だからこそ、文春の一件から、発言は常にYouTubeで一方的に行っている。言いたいことだけを主張して、誰からの質問も受け付けないまま言い分を垂れ流す。そして自分を理解してくれる「支持者」(松居氏は「家族」と読んでいるようだが、閲覧者のこと)にのみ、語りかけるというスタイルだ。

●トランプに失礼なのかもしれない

 ただ先週、そこに新たな進展があった。これまで一貫してメディアの取材要請を断ってきたという松居氏は、『週刊新潮』に対して、インタビューなど全面的な協力を行ったのである。トランプもそうだが、結局、既存の大手メディアとのインタビューがTwitterなどSNSの発言力を補完するには有効だと認識しているため、タイミングを見ながら選り好みしたメディアに登場する。松居氏もYouTubeだけで話題性が下火になってしまう前に、週刊誌に言い分を載せてもらったということだろう。

 また松居氏の場合、新潮の読者はYouTubeなど使わない年齢層の高い人たちが多いので、そこにアピールする狙いもあったはずだ。

 とにかく、ひとつ確かなことは、松居氏も上西氏と同様に、トランプばりにメディアで大きく取り上げられることに成功していることだ。一方で、2人とトランプとの決定的な違いは、この2人の話題が今消えてもほとんどの人は困らないが、トランプの場合は3億2000万人以上の米国民の生命・財産と、世界随一の超大国の行方がかかっていることである。

 そう考えると、上西議員と松居氏の騒動はますます不毛に感じてしまうのだが、そもそもトランプと比較すること自体、トランプに失礼なのかもしれない。

(山田敏弘)