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引退した競走馬にセカンドキャリアを 岩手の取り組みとは

7/27(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 今月11日、国内最大のサラブレッド競り市「セレクトセール2017」で、ディープインパクト産駒の牡馬が5億8000万円で落札された。牡馬としては歴代最高、全体でも史上2番目となる金額である。関係者の期待通りに成長してGⅠを総ナメにすれば、引退後は種牡馬として働き、老後は牧場で穏やかに過ごすことになるのだろう。

 もっとも、これほど恵まれた馬は、ほんの一握り。多くの走れない馬は食肉用に回される。ペットとして家庭で飼えるサイズではないから、簡単に処分されてしまうのだ。

 そんな悲運の馬たちに新しい生き方が用意され始めている。岩手県の八幡平で、馬糞を地熱で発酵させて堆肥を作り、有機野菜を栽培する取り組みが行われているのだ。馬の仕事は、草を食べて糞をするだけ。いわば食っちゃ寝の生活で、信じられないような好待遇である。

 このプロジェクトを行っているジオファーム八幡平の代表理事・船橋慶延さんが言う。

「私たちが目指しているのは、馬糞と地熱を活用し持続可能な社会をつくることです。岩手は馬の生産地だった歴史があり、八幡平には日本初の地熱発電所の松川地熱発電所があります。馬房に敷く稲わらも近郊で集められる。取り組みに最適の場所ですね」

 冬場は零下10度以下に冷え込むところだが、温泉地熱を利用すれば適度な温度が保てる。おかげで堆肥の発酵やハウスでの野菜栽培をスムーズにやれるのだ。

「現在、メーンで栽培しているのはマッシュルームです。欧州では馬糞の堆肥を使って栽培する方法が確立していて、馬との相性がいいのです」

 もともと船橋さんは、北海道や栃木県の那須で競走馬のトレーニングや生産に関わる仕事をしてきた“馬好き”。3.11の震災後に知り合いの牧場を手伝ったのがきっかけで岩手に移住し、3年前からプロジェクトをスタートさせた。出来上がった「八幡平マッシュルーム」は味が濃くておいしいと好評。6割は首都圏で流通しているそうだ。

 馬券を買う前に食べれば、予想だって違ってくるかもしれない。