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コーエーテクモゲームスの早矢仕洋介氏がボツとなった資料を交え語る “『仁王』先輩”はいかにしてアジアでヒット作となるに至ったか【ChinaJoy 2017】

7/27(木) 20:03配信

ファミ通.com

文・取材・撮影:編集部 古屋陽一

●『仁王』11年の開発でつかんだこと
 2017年7月27日~30日、中国最大規模のエンターテインメントのイベントChinaJoy 2017が、中国・上海新国際博覧中心にて開催。会期中は、いくつかのイベントが併催されているのだが、今回紹介しようと思っているCGDC(チャイナ ゲーム デベロッパーズ カンファレンス)もそのひとつ。“GDC”とは言いながら、毎年3月にサンフランシスコで開催されているGDCとは直接の関係はないようだが、ゲームクリエイターを対象としたカンファレンスという点では共通。会期となる7月27日と28日には、海外からの著名クリエイターなどを招いての複数のセッションが予定されている。7月27日の午前に実施された、コーエーテクモゲームス早矢仕洋介氏の講演もそのひとつ。早矢仕氏は、『仁王』をテーマにしたキーノートを行った。

 早矢仕氏は、『仁王』を「発表してから約11年かかりました」と紹介。そのうえで、ファンからは“『仁王』先輩”と揶揄されたと苦笑しながら語った。「日本では、学生が入学したけれど、留年して卒業できないときに“先輩”と言われることからきました」と、早矢仕氏はその由来を説明する。ご存じの方も多いかと思うが、『仁王』はこの11年間で2回大きく作り直している。早矢仕氏の講演は、この11年間の“試行錯誤”を伝えるものだ。

 まず会場で流されたのは、E3 2005で公開された貴重なトレーラー。当時は、“金髪碧眼の侍が活躍する”というコンセプトは共通ながら、ジャンルはJRPGだったという。「主人公がパーティーを組んで冒険するスタイルだったのですが、差別化が難しくて、2006年に開発が止まりました」と早矢仕氏。まだ、コーエーとテクモが経営統合する前の話だ。


 その後、2010年にコーエーテクモゲームスが誕生。Team NINJAが『仁王』の開発を手掛けることになった。「アクションにしようと思った」と早矢仕氏は言う。そこで紹介されたのが、金髪碧眼の侍と徳川家康が並び立つビジュアル。「仁王像はふたつがセットなので、協力プレイ中心がいいのでは?」とのアイデアによるものだ。史実にもとづいて、主人公といっしょに行動するケリーなども登場する予定だったという。主人公は仁王像に変身するという設定もあったようだ。会場では、『NINJA GAIDEN』のエンジンにキャラクターを乗せて動かしたプレイデモも披露された。それはそれで端から見るといい感じに見えるのだが、早矢仕氏によると「オリジナリティーの面で難しいので開発を続けても……」との判断から開発は中断してしまったという。そこから開発は3年止まる。

 いま世に出ている“3つめの”『仁王』は、2014年から作り始めたものだ。社内でプロット版を作って、「この方向性であればいけるだろう」と手応えはあったものの、「触ってもらってさらにおもしろいものを」との施策のもと、2016年4月にアルファ体験版をリリース。全世界で85万ダウンロードとなるほどの好評を博する。そこでフィードバックを受けて、ゲームの仕様も変化させたというから、アルファ版の意義は相当大きかったようだ。もちろん、ユーザーの意見は全部そのまま受け入れたというわけではない。難しいゲームなので、「簡単にしてほしい」という要望があったようだが、そこはあえて難しさにこだわりつつ、「コンセプトとして、より楽しんでいただくためにはどうすべきか」という点にフォーカスしたという。

 その後、2016年8月のベータ体験版、そして、2017年1月の最終体験版を経て、2017年2月にリリースされるに至る。ソフトはアジア地域でも好評で、日本を含むアジア全体で、50万本を超えるセールスを記録しているという。

 『仁王』の開発で早矢仕氏が学んだことは、(1)ゲームのコンセプトを明確にすること。コンセプトのないゲームは迷走しがちで、コンセプトがないと日々のジャッジにも迷いが生じてしまう。意思統一も難しいという。『仁王』に関して言えば、“金髪碧眼の侍”という設定はあったが、ゲームのコンセプトが合っていなくてうまくいかなかったという。そして、『仁王』のゲーム性に絡めての(2)死んでも諦めない気持ちが大事というもの。『仁王』というタイトルを発表して、シブサワ・コウ氏の「ユーザーに届けたい!」という意思は断固として揺らぐことがなかったという。「開発者としての気持ちと、コンセプトがゲーム開発には大事」と早矢仕氏は締めくくる。

 さて、ヒットを記録した『仁王』だが、もちろんこれで終わりというわけではない。DLCも展開しており、「これからも大きく広げていきたい」という。さらには、「社内でもつぎの未来を検討しているのでご期待ください」とのことで、試行錯誤の果てに産み出された『仁王』は、コーエーテクモゲームスの有望なIPとしての道を、今後歩み始めることになりそうだ。

最終更新:7/27(木) 20:49
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