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音楽の核とは何か、ACIDMAN・大木伸夫へのインタビューで迫る

7/27(木) 11:50配信

MusicVoice

 素粒子という言葉を聞くとなんだか難しい話のように思えるが、簡単に言えば目に見えない粒であり、この粒が集まったものが物質と言われている。その目に見えない粒は弦状の形をしており、音や光をも構成しているという話がある。こうした目に見えないものを想像することは心を豊かにする。ACIDMAN大木伸夫へのインタビューはそうした未知との遭遇であり、創造性を膨らませるものでもある。さて、前作「愛を両手に」に次ぐ新作「ミレニアム」はこれまで示してきた大木の考えを曲として具現化したものといえる。2度目のインタビューとなった今回。大木、そしてACIDMANの音楽を構成する素粒子を見た気がした。音楽は目に見えない粒となって聴く者に伝播する。歓声は目に見えない粒となってミュージシャンに波及する。その結果、とてつもない高揚感が生まれる。音楽、そしてライブとはそういうものだろう。何も考えず感情にまかせて音を楽しむのも良いし、その背景を知って楽しむのも良い。ACIDMANの曲にはどちらも楽しめる要素がある――。

【写真】撮り下ろしカット

生命は繋がり続ける

――まず、「ミレニアム」を制作したのはいつ頃でしょうか。

 7年ほど前に最初の段階となる曲を、スタジオで弾き語りして作りました。そこではまだ納得がいかなくて、もっと練り直したいと思いました。それで暇さえあればこの曲の手直しをしていて、やっと今回、一番納得のいく形で作れたと思ったのでレコーディングをしました。

――最初の段階で歌詞も出来ていたのでしょうか?

 最初の頃から数年経ってから歌詞を付け足したり、どんどん変えていったりして、今の歌詞には全然なっていませんでした。ただ、<千年先>など、そういったキーワードは使っていました。

――キーワードとして「千年」を使う意味は?

 もともと具体的な千年という単位でイメージした「千年」ではなくて、漢字で書いたり、響きとしての「千」が昔から好きだったんです。和的なイメージがあるじゃないですか? その昔「千」という言葉は今でいう「百億」とか、それくらい遠いことだったらしいんです。

 「千」というと、とにかく悠久な時間の流れというワードだったらしいので、今回も使わせてもらったんです。今回歌っている「千」は僕の中で何百億年後でもあるし、何千億年後かもしれないし、その先かもしれないし、その昔かもしれないし…、という世界の喩えとして「千」というワードを使っています。

――歌詞は更新されてきたとのことですが、最初に作った当時の考えと今の考え、というのは変わってきていますか?

 いいえ、この曲に関して、以外も僕はずっと同じことに対してしか歌ってきていないので、ずっと同じ考えのままなんです。

――それに合わせてメロディを変えたりすることもありましたか?

 あったかもしれないですけど、メロディを言葉によって変えたことはあまりないんです。この曲を作るにあたって、サビのメロディを何回も変えたりはしました。色んなセクションで色んなメロディを試したり、コードを変えたりと。色々と試行錯誤をしました。

――今、出せるタイミングとなったのは何が揃ったからでしょうか?

 客観的に聴いたときに、ただ激しい曲とか、ただ乗りがいい曲というだけではちょっと自分の中ではつまらなくて、そこにエモーショナルな部分や叫んでいる部分が欲しかったし、淡々としている部分や幻想的な部分も、今回は全部この曲に入れたかったんです。

 全部入れたいという欲望があった訳ではないんですけど、録り終わって気がついたんです。これは20周年の最後のシングルだから、今までのACIDMANを凝縮した作品を作りたかったんだろうなという風に飲み込めていました。それで結果的にそうなって色んな表情のある曲になりました。基本的にはキャッチーで乗りやすい、ライブ映えするであろうという楽曲になったと思います。

――この曲を通して伝えたかったことは?

 この曲だけではないですが、結局いつも同じことを言っていて。太陽がこの世界を46億年間照らして、そして我々の生命は圧倒的に太陽のおかげであり、太陽が生まれたのも138億年前の宇宙のビッグバンであり、想像を絶する時間の流れで僕達が生まれて消えていく。生命が消えていけば物質も消えていく。もしかしたら宇宙もゼロになり、また何かが生まれるかもしれない。

 この時の流れのなかで我々は生きるとか死ぬとかということに悩み、時に喜んで分かち合う瞬間もあれば、殺し合う瞬間もある。そういう、人間と人間、命の不思議な流れを僕は知りたくてたまらないんです。

 この曲に関して言うと、歌詞で<君の最後の息も いつかは鮮やかな花を咲かすだろう>と言っているんですけど、僕らが死ぬ時に最後に残された一つの息で、その二酸化炭素で、植物はエネルギーとして吸収して花を咲かせる。

 今吐いている二酸化炭素も、かつて何億年前にできたものなので、そうやって我々は命を繰り返している。だから命は生まれるものでもなく、無くなるものでもなく、圧倒的な流れのなかで形を変えて存在しているものだと思っているんです。

 だから人間というものは、138億年のなかの一つのエネルギーのループのなかの一つの“現象”なんだなと思うんです。そうすると、ポジティブに考えられるんです。人間が死ぬとか生きるとか、とても悲しいことではあるけど、それは実は繋がっていることなんだ。ということがテーマです。

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最終更新:7/27(木) 11:50
MusicVoice