ここから本文です

相模原事件影響県内にも 「防犯強化」と「地域から遠ざかる不安」葛藤 佐賀

7/27(木) 11:07配信

佐賀新聞

 相模原市の知的障害者施設での殺傷事件は佐賀県内にも衝撃を与え、この1年で防犯態勢を強化する施設が増えた。国は精神保健医療福祉に関する法改正を目指すが、措置入院患者の監視が強まるとして関係団体からは疑問視する声も上がる。事件をどう捉え、教訓化するか、教育現場を含めて模索が続いている。

「何か起きた場合を考えると…」

 敷地に入ると、玄関付近に防犯カメラが見えた。武雄市山内町にある「くろかみ学園・すみよしの里」。知的障害などさまざまな障害がある約70人が暮らすこの施設は事件後、侵入者対策でカメラを4台増設した。「防犯を強化することで地域社会から遠ざかってしまうんじゃないかという葛藤はあった。ただ、何か起きた場合を考えると…」。永尾忠博施設長(64)は複雑な心境をのぞかせた。

 事件を受け、監視カメラ設置などの防犯対策は、国や県が一部を助成する対象になった。県内では38施設が補助金を申請している。

 万一に備えても、地域への門戸を閉ざしたわけではない。くろかみ学園・すみよしの里も夏祭りを計画し、入所者が路線バスや電車に乗って買い物に出掛けている。「交流を続けることが障害への理解を深めてもらう一助になり、共生社会の実現にもつながる」と永尾施設長は強調する。

極端な思想

 国会では、精神疾患で自身や他人を傷つける恐れのある人を強制的に入院させる措置入院を巡り、退院後の支援などを柱にした精神保健福祉法改正案が論議された。被告が措置入院から退院して4カ月後に事件を起こした事態を受け、相談支援や自治体間の情報伝達の強化が盛り込まれたが、「精神障害者への監視強化につながる」「医療を治安維持に使うのは問題」といった反発が出た。

 「加害者の行動は障害者を差別する極端な思想から来ている。それなのに、事件の再発防止策として、精神障害ばかりがクローズアップされることに違和感を覚える」。県精神保健福祉連合会の深村徹副会長(66)はこう話し、継続審議になっている法案の奥に潜む狙いをいぶかる。

 「精神障害に限らず、地域で孤立したり、支援を必要としていたりする人たちの信号に早く気づき、ケアにつなげる体制づくりが先決」。住民や行政、福祉、医療が連携した包括的ケアの充実を求めている。

地域の必要性

 障害者を差別視する表現は依然としてネットで散見される。滝口真西九州大学教授(49)=障害者福祉論=は「幼いころから障害児との統合教育などを進め、困り事を抱える人への『配慮のまなざし』を家庭や学校、地域で育んでいく必要性がある」と指摘する。

 人権や福祉の意義を学生に考えてもらう狙いで、事件を契機に新聞記事を使って本年度、講義をした。「生産性や知識ばかりが偏重され、自分だけの狭い視点や領域だけで偏った結論を導くような精神風土になっていないか、国全体で立ち返るときかもしれない」と考えている。

最終更新:7/27(木) 11:07
佐賀新聞