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『君の名は。』の4K UHD Blu-rayは“アニメ史上最高の画質”だ(後)

7/27(木) 18:31配信

Stereo Sound ONLINE

 映画『君の名は。』は2016年に8月に公開され、観客動員1,900万人、興行収入が200億円を突破するなど、社会現象を巻き起こした作品だ。その『君の名は。』のBlu-ray & DVDがいよいよ7月26日に発売された。

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 注目は、なんと言っても初回生産限定の『「君の名は。」Blu-rayコレクターズ・エディション』。4K Ultra HD Blu-ray(以下UHD BD)版が同梱されるのだ。劇場で多くの観客を魅了した、その高画質をホームシアターでも味わえるのか、自身のブログ「言の葉の穴」でUHD BDレビューを紹介しているライター逆木一(さかき はじめ)さんに、レビューしてもらった。ここでは後編をお届けする。(Stereo Sound ONLINE 編集部)



■BDも高画質だが、解像度・HDR・色彩の各要素においてそれを上回る

 続いて、解像度と同じくUHD BDの優位性である「HDR」と「色彩」について。

 新海誠作品の映像、特に背景美術はそもそもHDR的(HDR合成写真のイメージ)であり、映像信号としてのHDR云々を言う前に一枚の絵として完成されている。そのため、どこまでHDRの効果があるのか、正直なところ疑問もあった。そしてあらためてBDとUHD BDで比較して得た結論は、「必ずしもHDRの効果は大きくないが、確実に存在する」というものだ。

 それほど輝度が必要とされない日常のシーンではあまりHDRの効果を感じられないことも事実。とはいえ、冒頭の夜空を彩るティアマト彗星の輝き、朝焼けの中で燈る淡黄色の街灯、水面に踊る照り返しの煌めき、枝葉の隙間から差し込む木漏れ日のまばゆさ、組紐の艶やかな質感など、白飛びを起こさず、なおかつハイライトが鋭く伸びた光の表現を随所で見ることができる。HDRによる光と闇の深化は、新海作品ならではの映像美にさらなる充実感と現実的な感触を与えている。

 ちなみにHDRに伴うビット深度の10bit化の効果は、実は本編以前のところでも現れている。ディスクのローディング後、最初に「TOHOアニメーション」のロゴ映像が流れるのだが、BDでは背景の白にごくわずかながらバンディングが生じている。これがUHD BDになると見事にバンディングが消え、リニアな白の階調で表示される。こういったわずかな、されど確かな向上が積み重なることで、全体として無視できない差を生み出すのである。

 色彩についても、冒頭で瀧の頭上を流れるティアマト彗星を見れば、UHD BDでは碧から紫に到る光の軌跡のグラデーションがより豊潤なことがわかる。他のわかりやすいシーンとしては、チャプター16、夜空を背にしたクレーンの所々でライトが赤く光っているシーンでは、夜闇の濃さやライトの赤の深みにBDとの明らかな違いが見て取れる。全体的に明るく、原色めいた色になりがちなBDに比べて、UHD BDはより繊細な色の表情を伝えてくれる。

 ここまでBDと比べたUHD BDの画質の優位性を語ってきたわけだが、それと同時に、「決してBDのクオリティが低いわけではない」ということも言っておきたい。DVDとは比べるまでもないが、UHD BDと比べても、BDの時点で作品や映像の本質的な部分を取りこぼすようなレベルではない。実際に今回『君の名は。』のUHD BDとBDをじっくりと比較し、BDも素晴らしい高画質を実現していることは確認している。

 それでも、確かにUHD BDはBDよりも大きな器を持ち、解像度・HDR・色彩の各要素においてBDを上回る。『君の名は。』を最高の形で楽しみたいと望むのなら、UHD BDは紛れもなく、無二の価値を持っているのである。

 「アニメ史上最高の画質」の評価は、『君の名は。』のUHD BDにこそふさわしい。


■臨場感の醸成にサラウンドが活用されている

 音響面にも触れておこう。

 『君の名は。』の音響は、千変万化する「雨」の音表現が映像に匹敵する存在感を放った前作『言の葉の庭』ほどの印象を与えるものではなく、それより以前の作品のように、あくまでもダイアローグと音楽が主体となっている。特に声の明瞭さが際立っており、例えばチャプター12の「前前前世」が流れるシーンなど、元気よく鳴る音楽の中でも埋もれることがない。直接的かつ大きな威力を伴うサラウンドやサブウーファーは、本編内のある重要なシーンで活用されるくらいのもので、RADWIMPSによる快活な劇伴をしっかりと再生できるオーディオシステムがあれば、サラウンド環境の有無が致命的な体験の劣化を生むようなことはない。

 ただ、環境音の濃密な活用という点では『言の葉の庭』に一歩及ばないとはいえ、効果音に手抜かりがあるわけではなく、町内放送の音声、御神体内部の反響、口噛み酒トリップ時の「トリップ」の感覚など、臨場感の醸成に少なからずサラウンドが活用されているシーンもある。まず2chのオーディオ環境を整えてほしいという思いに変わりはないが、ぜひ完璧な再生のために、サラウンド環境の構築にもチャレンジしてほしい。

 『君の名は。』は全編余すところなく美しい作品である。ついに登場するBDで、可能ならばUHD BDで、望み得る最高の環境で、多くのファンが『君の名は。』を再体験してくれることを願ってやまない。


【逆木一(さかき・はじめ)】
ブログ「言の葉の穴」を運営する“ネットワークオーディオ・エバンジェリスト(伝道師)“。ネットワークオーディオで重要なユーザビリティを追求し、徹底したユーザー目線の記事で人気を博す。最近ではオーディオ/AVの論評やイベントでの講演など、活動の場を広げている



■「君の名は。」Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray 同梱5枚組(初回生産限定):1万2000円+税
■「君の名は。」Blu-ray スペシャル・エディション 3枚組:7800円+税
■「君の名は。」Blu-ray スタンダード・エディション:4800円+税
■「君の名は。」DVD スタンダード・エディション:3800円+税
販売元:東宝

Stereo Sound ONLINE / 逆木一

最終更新:7/28(金) 16:05
Stereo Sound ONLINE

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