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Windows 10の導入、それは「Windows as a Service」の始まり

7/28(金) 8:10配信

@IT

●サービスとしてのWindows、WaaSとは何か?

 Windows 10は「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」という概念に基づいて提供されます。WaaSは、新しいバージョンの開発とリリース、その展開、そして更新の提供の新しい方法です。WaaSにより、Windows 10にはセキュリティ更新や不具合の修正を含む「品質更新プログラム」と、新機能を含む「機能更新プログラム」(旧称、機能アップグレード)が継続的に提供され、常に最新のWindows 10環境が維持されます。

Windows 10 バージョン1607のCBからCBBへの切り替え

 以前は、OSの購入(またはOSプリインストールPCの購入)、更新プログラムの提供、新バージョンのOSの購入とアップグレード(またはプリインストールPCのリプレース)、更新プログラムの提供……というサイクルで、Windowsのアップグレードが行われてきました。

 企業では、新しいOSへの移行のためにアップグレードを計画し、購入、展開というプロセスに多大なコストを費やしていたはずです。コスト削減やアプリケーションの互換性問題のために移行が先送りされ、OSのサポートライフサイクルの期限が迫る、あるいは期限切れになってしまうという問題が、Windowsのサポート期限が来るたびに話題になります。2017年5月に世界的な騒動を引き起こしたランサムウェア「WannaCry」の問題は、サポート期限やセキュリティ更新の重要性をあらためて強調する事件でした。

 Windows 10を導入すれば、WaaSに基づいて、通常の更新プログラム(品質更新プログラム)に加え、Windows 10の新しいバージョン(新しいビルド)が機能更新プログラムとして継続的に提供され、理論上はハードウェアの寿命が尽きるまで最新のWindows 10を使い続けることができます。そして、適切にWindows 10が更新されていれば、ハードウェアが利用できなくなる前にサポート期限が切れることはありません。実際には、Windows 10における特定のハードウェア(特定のプロセッサモデルなど)のサポートが打ち切られ、事実上、利用できなくなる可能性もあります。

 なお、Windows 10 Enterpriseは、ボリュームライセンスの「Windows 10 Enterprise E3(旧称、Windowsデスクトップオペレーティングシステム用ソフトウェアアシュアランス、Windows Enterprise with SA)」や「Windows 10 Enterprise E5」サブスクリプションで提供される“非永続ライセンス”であるため、ボリュームライセンスの有効期限が切れないように、契約を更新する必要があります。

 あるいは、有効期間内で最新の(または有効な)バージョンのWindows 10 Enterprise LTSB(現時点では、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBやWindows 10 Enterprise 2016 LTSBがある)に移行し、そのバージョンのWindows 10 Enterprise LTSBを永続ライセンスとして使用し続けることもできます。Windows 10 Enterprise LTSBには、以前のバージョンのWindowsと同様の、最低10年(メインストリーム5年+延長サポート5年)の長期サポートが提供されます。

 Windows 10の導入により、OSのサポート期限について心配する必要がなくなる一方で、アップグレードの機会は増え、継続的に行っていく必要が出てきます。OSのアップグレードは、以前は簡単に行えるようなものではなく、計画的かつ慎重に実施すべきプロジェクトでした。

 Windows 10では、WaaSがスムーズに進むように、以前のバージョンのWindowsと比べて展開が簡素化されています。例えば、「Windows Update」や「Windows Server Update Services(WSUS)」の更新プロセスの一部として、個人設定やデータ、アプリケーションを引き継いだまま、Windows 10では機能更新プログラムと呼ばれる新しいバージョンにアップグレードすることができます。

 しかしながら、企業のIT部門がハードウェアやアプリケーションの互換性問題に対応しなくてもよくなるわけではありません。最低10年の長期サポートが受けられるLTSBは、1つの解決策になるかもしれませんが、LTSBの採用は単に従来の方式をそのまま続けるというだけです。前回説明したように、LTSBは汎用的なビジネス用途には向いていないのです。

●WaaSの既定は常に最新、企業向けには4カ月遅れの安定版

 WaaSでは「Current Branch(CB)」「Current Branch for Business(CBB)」「Long Term Servicing Branch(LTSB)」の3つの更新ブランチによって、品質更新プログラムや機能更新プログラムが提供されます。LTSBを除くWindows 10の既定はCBです。Windows 10 HomeエディションはCBのみで提供されます。Windows 10 Pro、Enterprise、Educationは、CBからCBBに切り替えることも可能です。

 なお、3つのブランチの他に「Windows Insider Preview」というブランチもありますが、これは開発中のビルドに対するフィードバックの収集が目的であり、企業でこのブランチを考慮する必要はないでしょう。もちろん、導入に向けて新機能をいち早くテストしたいというニーズがあるかもしれませんが、正式リリース時には機能や仕様が変わっている場合もあることに留意してください。もし、企業内でWindows Insider Previewを利用する必要がある場合は、運用環境とは隔離された評価/テスト用の環境を構築するべきです。

 Windows 10の新しいバージョンが利用可能になると、すぐにCB向けにリリースされ、Windows Updateで配布されます。WSUSを利用している場合、CBやCBBに関係なく、更新の配布をコントロールできますが、新しいバージョンはCB向けのリリースと同時期にWSUSに対しても提供されます。新しいバージョンのリリースは、以前は年に2~3回とされていましたが、最近になってOffice 365(おそらくOffice 365のDeferred Channel)と合わせて、3月と9月(実際のリリース日は翌月以降にずれ込むこともあるでしょう)の「年に2回」に固定されることが発表されました。

 Windows 10の新しいバージョンは、CB向けのリリース後、おおむね4カ月後にCBB向けに配布されます。CBB向けのリリースとは、CB向けのリリース後の品質更新プログラムによって、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)やパートナー、企業顧客に展開できるまで安定したとマイクロソフトが判断したということです。例えば、Windows 10 バージョン1607がCB向けにリリースされた2016年8月3日時点の詳細なビルド番号は「14393.10」でしたが、CBB向けにリリースされた2016年11月30日の時点では「14393.447」になっていました。OSビルド番号に続くリビジョン番号は、「累積的な更新プログラム」と呼ばれる品質更新プログラムによって増加します。

 公式ドキュメントによると、CBは最新の1つのビルドだけがサポートされ、旧ビルドは最新ビルドが利用可能になってから60日の猶予期間経過後に品質更新プログラムを受信できなくなります(後述しますが、実際はこれとは異なります)。

 また、おおむね4カ月後のCBB向けリリースは、複数のビルドをサポートします。そして、リリースされた全てのビルドは、(CB向けに)公開後、最低18カ月間、品質更新プログラムのサポートが提供されます(表1)。

○表1 Windows as a Service(WaaS)の基本的な考え方(2017年5月3日時点、今後、変更の可能性あり)
・更新ブランチ/対象のエディション/機能更新プログラムのリリース/サポート対象
Current Branch(CB)/Home、Pro、Enterprise、Education/年に2回(おおむね3月と9月)/最新ビルドのみ。最新ビルド提供後60日の猶予期間後に旧ビルドは品質更新プログラムを受け取れなくなる
Current Branch for Business(CBB)/Pro、Enterprise、Education/CB向けリリースのおおむね4カ月後/CB向けリリース後18カ月
Long Term Servicing Branch(LTSB)/Enterprise LTSB/2~3年に新バージョンをリリース/最低10年

 Windows 10の各バージョン(各ビルド)にはその新しいバージョンの提供によって、サポート期限が決まります。現時点のサポートポリシーでは、“適切に更新されている限り”、少なくとも2025年10月15日までサポートが継続されます。それまでに、その後のサポートポリシーが決まるはずです。

 このWaaSの基本的な考えは変わりませんが、詳細については度々変更されます。WaaSに関する古いドキュメントや記事を見たときは、その内容をうのみにせずに、以下のドキュメントで最新情報を確認してください。年に2回、3月と9月にCB向けにリリースされることについては、既に以下のドキュメントに反映されています。また、以前はこのドキュメントに「一度に2つのCBBビルドをサポートし、60日の猶予期間もサポートします」という文言がありましたが、現在はありません。最新のドキュメントでは、「各機能更新プログラムのリリースは、リリース時から18カ月間サポートおよび更新されます」(CB向けリリース後最大18カ月サポート)となっています。

 今後、CBやCBBという名称についても、Office 365の更新ブランチと合わせて、それぞれ「Semi-annual Channel(Pilot)」と「Semi-annual Channel(Broad)」に変更される予定のようですので、最新情報については頻繁に確認することをお勧めします。

 実は、現実には、前出の表1の通りにはなっていません。表1では「CBは最新の1つのビルドのみサポートされる」となっていますが、Windows 10初期リリース(バージョン1507)はつい最近、2017年5月にサポートが終了したばかりです。また、CBBはバージョン1511と1607の2つのビルドがサポートされていますが、CBも最新ビルドだけでなく、バージョン1511以降の3つのバージョン(1511、1607、1703)がサポートされており、品質更新プログラムを受け取ることができています(表2、表3)。

○表2 CBとCBBの実際の状況(2017年5月末時点)
・Windows 10バージョン/OSビルド/Current Branch(CB)開始/Current Branch for Business(CBB)開始/サポート期限
Windows 10 バージョン1507(初期リリース)/10240/2015年7月30日/2015年7月30日/2017年5月10日
Windows 10 バージョン1511(November Update)/10586/2015年11月13日/2016年4月9日/未定(2017年8月ごろ+60日の猶予)
Windows 10 バージョン1607(Anniversary Update)/14393/2016年8月3日/2016年11月30日/CB向けリリース後18カ月
Windows 10 バージョン1703(Anniversary Update)/15063/2017年4月12日/未定(2017年8月ごろ)/CB向けリリース後18カ月
Windows 10 バージョン17xx(Fall Creators Update)/未定/未定(2017年9月ごろ)/未定/CB向けリリース後18カ月

○表3 LTSBの状況(2017年5月末時点)
・Windows 10 LTSBバージョン/OSビルド/LTSB公開日/サポート期限
Windows 10 Enterprise 2015 LTSB/10240/2015年7月30日/2025年10月15日
Windows 10 Enterprise 2016 LSTB/14393/2016年8月3日/2026年10月13日

 バージョン1607以降、企業はCBとCBBの両方を細かくコントロールできる(例えば、CBBだけでなく、CBも遅延できる)ようになっており、どちらのブランチを選択したとしても、限られた範囲にパイロット展開し、その後、全社展開するといった運用が可能になりました。このことが直接関係しているかどうか定かではありませんが、CBBでサポートされている限り、CBでも品質更新プログラムを受け取ることができるようになっています。Windows 10のUI(ユーザーインタフェース)やポリシーへの反映は、2017年9月ごろに予定されているWindows 10 Fall Creators Update、またはそれ以降になるでしょう。

●CBからCBBへの切り替えは簡単、LTSBへの切り替えは不可

 Windows 10の既定はCBですが、「設定」アプリの「更新とセキュリティ」→「Windows Update」→「詳細オプション」(「ファイル名を指定して実行」で「ms-settings:windowsupdate-options」から開くことができます)で、簡単にCBBに切り替えることができます。

 ただし、Windows 10のバージョンによって、表記や設定方法が異なることに注意してください。Windows 10 バージョン1511以前は「アップグレードを延期する」チェックボックスのチェック、Windows 10 バージョン1607は「機能の更新を延期する」チェックボックスのチェック、Windows 10 バージョン1703はブランチ準備レベルのドロップダウンリストで「Current Branch for Business」を選択することにより、CBBに切り替えることが可能です。

 なお、Windows 10 バージョン1607までは、既にCBB向けにリリース済みなので、バージョン1511以前のUIは知る必要はないでしょう。重要なのは、これからWindows 10 バージョン1703のCBB向けのリリースが控えるWindows 10 バージョン1607です。Windows 10はバージョンによって、UIや仕様が変更されるということを知っておくことが重要です。そのため、Windows 10 バージョン1703の仕様を現時点で押さえておくことは重要です。

●「Windows Update for Business」とは?

 CBからCBBへの切り替えは、「グループポリシー」や「ローカルコンピューターポリシー」を使って構成することもできます。Windows 10 バージョン1511からは、そのポリシーを使用して機能更新プログラムや品質更新プログラムの受信をさらに延期することも可能になっています。この機能を「Windows Update for Business」と呼びます。Windows Update for Businessの機能もまた、Windows 10のバージョンによって違いがあることに注意が必要です。ポリシーは、次の場所にあります。

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○Windows 10 バージョン1511
・コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\アップグレードおよび更新を延期する
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○Windows 10 バージョン1607/バージョン1703
・コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\Windows Update の延期\機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください
・コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\Windows Update の延期\品質更新プログラムをいつ受信するかを選択してください
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 Windows 10 バージョン1511では、機能アップグレード(後の機能更新プログラム)について新バージョンのCBB向けリリース後さらに最大8カ月(つまり、CBリリース後12カ月)、品質更新プログラムについてリリース後最大1カ月、それぞれ月単位、週単位で延期することができます。なお、機能アップグレードの延期については、バージョン1607のCBB向けリリースが2016年11月30日なので、間もなくこのポリシーは意味がなくなります。

 Windows 10 バージョン1607では、機能更新プログラムについて最大180日、品質更新プログラムについて最大30日、それぞれ日単位で延期することができます。また、CBBだけでなく、CBについても、延期をコントロールできるように変更されました。

 Windows 10 バージョン1703では、機能更新プログラムについて最大365日、品質更新プログラムについて最大30日、それぞれ日単位で延期することができます。CBの延期のコントロールも引き続き可能です。

 各バージョンの最大延期期間を超えて延期したい場合や、途中のバージョンをスキップしたい場合は、WSUSでコントロールする方法があります。ただし、各バージョンは、公開後のサポート期間は最低18カ月であることに注意してください。既定のCBとCBBの標準(4カ月延期)の場合、1年に2回のサイクルでアップグレードが必要になりますが、Windows Update for BusinessやWSUSを適切に利用することで、最大1.5年に1回の緩やかなサイクルで運用できるようになります。

 なお、Windows 10 バージョン1607以降、Windows Update for BusinessとWSUSは併用できる仕様になりましたが、特定の条件下においてWindows Updateに失敗するという問題が報告されています。この問題については、Windows 10 バージョン1607およびバージョン1703向けの今夏リリース予定の品質更新プログラムにおいて修正されるとのことです(最新情報:バージョン1607向けには2017年7月の累積更新プログラムKB4025334(ビルド14393.1532)でこの問題を回避するためのポリシー設定が利用可能になりました)。

 このように、これまでリリースされてきたWindows 10の全てのバージョンを対象にすると、いろいろと変更が激しく、新しいサービスモデルを正しく理解するのが困難です。移行対象となるWindows 10のバージョンおよびその次のバージョンに的を絞って仕様を調査し、実機や仮想化環境で評価することをお勧めします。特に、Windows 10の更新が業務に大きく影響しないように、更新の延期、一時停止、WSUSでの運用に関して精査するべきです。

●筆者紹介
○山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門-完全版』(日経BP社)。

最終更新:7/28(金) 8:10
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