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「社員の要望は聞きすぎない」 V字回復ミクシィの「はたらく環境」づくり

7/28(金) 16:01配信

ITmedia エンタープライズ

 6月27日、品川のコクヨ東京ショールームにて、コクヨ主催のワークスタイル改革セミナーが開催された。テーマは「やる気を引き出し、コミュニケーションを創出する“停滞しない組織”の作り方」。基調講演には、ミクシィの「はたらく環境課」室長として社員のパフォーマンス向上に尽力する橋本貴史氏が登壇し、自社の取り組みについて語った。

【ミクシィの新オフィス。他人を感じたり、すれ違ったりできる導線づくりを意識している】

●情シス・総務・労務が働く環境をワンストップで整備

 橋本氏はもともと情報システム部のエンジニア出身。ゲームアプリ「モンスターストライク」(モンスト)がヒットした2014年の夏、社長が今の森田仁基氏に変わったタイミングで社長直下の組織に所属することになった。

 モンストの急速な成長が見込まれる中、開発環境に対するエンジニアの要求をスピーディーに吸い上げ、成果を出しやすい環境を作ることを目的とした体制変更だったという。

 その後、総務や労務の機能も取り込み、ITインフラ、オフィス環境、就労規則など、社員が働く環境の整備を一手に引き受けるようになって立ち上げられたのが「はたらく環境課」だ。橋本氏は、「ミクシィへの入社から退社後まで、社員が必要なことには全て一気通貫で対応できる、非常に合理的な体制」と胸を張る。

●“あるべき働き方”に合った設備を用意し、社員に「押し付けた」

 渋谷に本社を構えるミクシィは、モンストのヒットを契機に社員が急増してオフィスが手狭になり、今は同じ渋谷の中で3つのビルに分かれて業務を行っている。互いにドア・ツー・ドアで徒歩10分程度で行ける距離ではあるが、ビルが異なれば社員同士が自然に顔を合わせて交流する機会はどうしても減ってしまう。2016年9月に3つ目のオフィスをオープンする際には、いかにコミュニケーションを活性化するかが課題になった。

 オフィス移転やリニューアルに当たって、社員から意見を募る会社は多い。しかし、今回のプロジェクトでミクシィはそれをしなかった。その理由を、橋本さんは次のように説明する。

 「どういう設備が必要ですか? といった事前アンケートは取りませんでした。仮眠室が欲しいとかシャワールームが欲しいとか、そういう希望は出てくるでしょう。でも、このビルで解決したいコミュニケーションの活性化について、具体的な解決策が出てくることはないだろうと踏んだんです。どうやったらコミュニケーションが生まれるのかを考え、その仮説を元にオフィスを作り、『この設備でこうやって働いてください』と押し付けてみることにしたんです」(橋本氏)

 コミュニケーションを生み出すオフィスにするために、はたらく環境課が注力したのは、"人の存在を感じたり、すれ違ったり"という、「接点をたくさん作る」ことだった。

 具体的には、フロアの入り口を入るとすぐにオープンスペースや会議室などの共有スペースがあり、そこを通り抜けて自席に行くという導線や、フロアの中央にミーティングスペースや自動販売機やお菓子などのある休憩スペースなどを配置し、人が自然に集まるような工夫をしている。そして最大の特徴は、会議室が全てガラス張りで、誰がいるのかが一目瞭然の状態である点だ。

 入居前には「このビルには管理部門も入居しているので、『こんな丸見えのところじゃ、とても会議なんかできない』といった懸念が挙がっていました。今でもたまに言われることがありますが、"オープンな空間で人の存在を感じられること"を目的に、ガラス張りで通しています」(橋本氏)

 オフィス移転後の社員アンケートや実際に設備が使われている様子を見ると、おおむね満足度も共有スペースの使用率も高く、「意図通りに使われている」と橋本氏。ガラス張りの会議室に関しては「落ち着かない」といったマイナスの意見もあるが、それも想定済み。それでもやろうと決めたことなので、問題視はしていないそうだ。

●会社からのメッセージを理解し、環境を活用できる人のために尽力

 ミクシィのオフィス作りのベースには、「設備=会社からのメッセージ」というコンセプトがあると橋本氏は話す。今回のケースでは、新しいオフィスの設備を通じて「もっとコミュニケーションを取ろう」というメッセージを発したわけだ。それをしっかり伝えるため、入居前には社員を集めての説明会も開いたという。

 「それぞれの社員がどんな思いを持って働くかは個人の自由ですが、会社の意図をちゃんと理解して、『こういう働き方をしてほしい』ということを伝える説明会を実施しました。その上で、『ビルの設備の案内や、こういうオフィス設備を入れたのはこういう理由です』といった説明書も作り、全員に配布しました」(橋本氏)

 働く環境課のミッションは、「組織のパフォーマンス向上」と「会社の利益」を引き出すために、ツールやルール、設備などを提供することだ。

 例えばPCは一番良いスペックのものを提供し、業務に使う各種システムはスケジューラー等最低限必要なところは全社共通でそろえつつ、部門の判断で導入・管理してよいというルールを整備するなど、事業の多角化や社員のパフォーマンスを妨げないことに注力している。

 ただ、“何でもかんでも社員の要望を聞く”というわけではない。橋本氏は、「与えられた環境の意味をきちんと理解し、活用できる人のために作ること」が重要だと言う。

 「PCのスペックが低いから仕事ができない、オフィスの構造が悪いからコミュニケーションが取れない」

 そんな言い訳をさせない環境を提供するから、それをフルに活用してパフォーマンスを上げてほしい――。橋本氏の話からは、会社のそんなメッセージが伝わってくる。