ここから本文です

大阪に広がる中小 “知財の輪”-INPIT関西が始動、ワンストップで権利化支援

7/28(金) 17:21配信

日刊工業新聞電子版

■1件で最大20人の支援体制

 中小企業が集積する関西で“知財の輪”が広がってきた。31日に特許庁所管の工業所有権情報・研修館(INPIT)がグランフロント大阪(大阪市北区)に初めての地方拠点「INPIT近畿統括本部(INPIT-KANSAI)」を開設。日本弁理士会の近畿支部と情報交換やセミナーの開催で連携するなど、ワンストップで中小・ベンチャー企業の知的財産の保護、活用を支援する。

 「大阪での面接審査実施を長く要望してきた」。日本弁理士会近畿支部の吉田稔支部長は、INPIT関西の開設を歓迎する。東京に出向くコスト、時間を省き、中小企業が知財取得に一段と前向きになると期待を寄せる。

 弁理士会近畿支部は2018年3月までに相談業務などの拡充を狙い、INPIT関西の近隣に事務所の拡張移転を計画。「知財の集積拠点とするとともに、セミナー共催などを通して人材交流も活性化」(吉田支部長)する意向だ。

 INPIT関西には民間企業で経験を積んだ「知財戦略エキスパート」4人を配置、合計12人体制で始動する。海外展開や営業秘密管理など知財戦略の高度な企業支援を展開するほか、ニーズに応じて特許審査官が随時出張面接も実施。1件につき最大20人の支援体制を敷く。

 反響は大きく、8月はすでに約30の大学や企業が面接を予約しているという。INPIT関西の泉裕二事業推進部長は、中小企業の海外進出が強まる傾向を受け「中国や東南アジアにおける知財のトラブルへ対処するためのメニューを作る」と力を込める。

 近畿地域の自治体や関西経済連合会、商工会議所などとも連携を図り、知財権取得にとどまらない多面的な支援に広げていく考え。

 地の利もある。グランフロント大阪には大阪大学や大阪市立大学、関西大学、慶応義塾大学、日本医療研究開発機構(AMED)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、科学技術振興機構(JST)、情報通信研究機構(NICT)などが拠点を構え、周辺には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)関西支部もある。こうした大学や研究機関との連携も進みそうだ。

 特許庁は9月から約1カ月間、知財の制度や支援を普及啓発する「巡回特許庁」を大阪で予定。INPIT事業として検索システム「J-PlatPat」の講習会や知財とビジネスをテーマとした400人規模のフォーラム開催を計画する。

 IoTなどを活用した第4次産業革命、国内製造業の空洞化など社会・産業構造が変化する中、中小企業も世界を相手にビジネスチャンスを見いださねばならない。イノベーションを創出し、他社に対する参入障壁を築く特許出願戦略の重要性は増す。

 ただ、中小企業の特許出願件数は全体の約15%にとどまり、知財への意識は依然低いと言わざるを得ない。大阪発の“知財の輪”が、どれだけ大きなうねりをつくれるか。知財で地域経済を活性化する試金石となる。