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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第54回:アラタな世界(渡邉新太・全日本大学選抜)

7/28(金) 12:00配信

ゲキサカ

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

「ワタナベ? ああ、アラタね!」

 覚えやすい名前が随分と強く浸透しているようだった。全日本大学選抜の宮崎純一監督は、質問を受けて苦笑いした。相手にチャージをされても、退かすようにぐいと力強く前に出るMF渡邉新太のプレーについて聞いたときだった。

 7月14日のU-20日本代表との練習試合で「新太」は得意のドリブルをいつもより自在に操った。所属する流通経済大ではサイドの突破役を担っているが、中央で起用されてプレーの選択肢が広がった。スルーパスとコンビネーションで2アシスト。いつもより生き生きとしているように見えたと伝えると「それは、監督にも言われました。元々は(センター)FWだし、相手の合間で受けるのは好き。前を向いたらゴールに直結するプレーができるし、その方が自分の持ち味が出るので、真ん中は好きですね」と笑顔を見せた。

 ピッチの中と外で、顔つきが違う。普段はおとなしいタイプだという。渡邉は、柔和な表情で「AB型なので(笑)。ピッチに入ると気性が荒くなると言われます」と二面性を血液型のせいにした。

 中央では、突破するだけでなく、相手を引き付けながらラストパスやシュートを狙える。相手が分かっていても止められないアタックをサイドから仕掛けるいつものプレーも魅力だが、普段とは異なる一面をのぞかせた。

 ピッチの中で見せた二面性は、良いアピールになったに違いない。宮崎監督は「新太は、試合になると、本当に気持ちをプレーで表現してくれる。(中盤の中央で起用すると、ターンで)振り向けば選手がいるし、きちんと収めて(ドリブルで)動きながらパスを出していって、自分でも突破できるという彼のプレーが、クリア(明快)に出る。そこは目立ったかなと思う」とプレーを見届けた感想を話した。

 残念ながら、8月に行われるユニバーシアードの代表メンバーへバックアップメンバーからの逆転選出はならなかった。しかし、渡邉の胸の内には、より大きな目標設定も定められていた。

「やるからにはメンバー入りを目指すし、遠征でアピールして、スタッフ陣を困らせられたら良い。ただ、選抜に入っても入らなくても、上のステージで、即戦力で活躍するという目標は変わらない」

 見据えているのは、決定的となっているプロ入り後の活躍だ。2つのポジションで見せる異なる魅力も、そのために磨かれてきたものと言える。代表に選ばれずとも「新た」な世界へ、力強く前に進む覚悟は、揺るがない。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

最終更新:7/28(金) 12:00
ゲキサカ

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