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日本人が英国で創業したARベンチャー、スマホカメラに 人の目を超える機能与える

7/29(土) 14:57配信

日刊工業新聞電子版

■独自SLAM技術、あらゆる機器の“目”に可能性

 カメラでリアルタイムに周辺状況を認識して3次元地図を作りつつ自己位置を把握するSLAM技術。自動運転やロボットなど幅広い分野で応用が期待される。日英に拠点を持つベンチャー企業のKudan(東京都新宿区、大野智弘最高経営責任者〈CEO〉)は、どんなハードウエアでも使える独自の汎用SLAMのグローバル展開を狙う。大野CEOにSLAM技術の現状などを聞いた。

―SLAMの応用範囲は。
 「応用範囲は広い。3次元認識を必要とする、あらゆる機器の『目』として使われる。当社の場合は日本、米国、イスラエルの企業と研究開発を進めている。日本では自動運転やロボット技術で数社と研究開発中だ。海外では、例えばスウェーデンのエリクソンとは第5世代移動通信方式(5G)でSLAMを使い何ができるのかを研究している。スマートフォンにSLAMが入ればカメラで対象物の奥行きや自己位置が精密に認識でき、それを使った機能の進化が期待できる。イスラエルの企業とは、SLAMを使った画像認識技術のチップ化に取り組んでいる」

―チップ化する利点は。
 「半導体業界では、新たなソフトウエアが出てきた場合、まず既存の中央演算処理装置(CPU)にソフトを搭載し、需要が出てくると専用のコンポーネントが入ることとなって、次にワンチップ化するのが流れになる。SLAMはやっとコンポーネントになってきたところだ。イスラエルの企業はワンチップ化してAR(拡張現実)やVR(仮想現実)、飛行ロボット(ドローン)などのロボット、自動運転車などへの組み込みを狙っている。当社のSLAMはハードやOSを問わず何でも動く。この汎用性が今後、さまざまな機器が作った3次元地図を別の機器が使って精度を高める、といった時代になったとき非常に有利だ」

―人工知能(AI)など他の先進技術とSLAMの組み合わせは。
 「SLAMは要素技術であり他の技術と組み合わせは可能だ。赤外線レーザースキャナー『ライダー』などのセンサー類を使えばカメラでは認識できないものを3次元地図にできる。人の目を超える機能が獲得できることになる。AIは現在当社は使っていない。だが、SLAMで認識した画像からAIが何かを認識するといったことや、カメラが撮った画像から認識に不要なものを省くノイズ除去にAIを使う、といったことはできそうだと考えている」

―Kudanの方向性は。
 「今後5年はSLAM技術の普及に注力する。ロボット技術、半導体など多くの分野で3次元認識の応用は加速度的に進む。この市場を取り、コンピュータービジョンの英ARMホールティングスを目指したい。買収リスクはあるが、できれば独立を保ち尖(とが)った『面白い技術』を作り続ける。そのパートナー探しも続ける」

■スマホ搭載での実用化期待
 KudanのSLAMはスマホ内蔵カメラのような安価なカメラでも高精度な3次元地図が作れる。スマホにSLAMが搭載されれば、億単位のカメラがさまざまな場所の精密な3次元地図を作ることになり、今よりも高い位置精度で人の誘導や現在地の詳細説明などもできるようになるだろう。早期の実現を期待したい。