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ロータリー、Zoom-ZoomからSKYACTIVへ、世界シェア2%のマツダが選んだ道

7/31(月) 6:25配信

MONOist

 鍛圧機械や塑性加工技術の総合展示会「MF-Tokyo 2017 第5回プレス・板金・フォーミング展」(2017年7月12~15日、東京ビッグサイト)の開幕記念講演にマツダ 取締役専務執行役員の菖蒲田清孝氏が登壇。「マツダのブランド戦略とモノ造り革新について」をテーマに同社の商品づくりのコンセプトと技術革新へのこだわりなどを紹介した。

【コスモスポーツに搭載したロータリーエンジンやロータリーエンジン研究部の様子】

 マツダは1920年に「東洋コルク工業」として設立。当時はワインボトルの栓となるコルクを製造していた。1927年に東洋工業へと社名変更し、1929年から自動車産業へ進出(1984年にマツダに社名変更した)。まずは二輪車から生産を開始しており、当時の販売価格は350~380円だったという。

 現在では販売台数が155万9000台(2016年度)まで成長した。このうち北米向けが43万8000台、欧州向けは25万7000台、中国向けで23万5000台と84%を海外市場が占めている。世界シェアは2%にすぎないが、菖蒲田氏は「マツダ車の全てのユーザーに、走る喜びと優れた環境安全性能を提供する。規模は大きくなくても、One and Onlyの光り輝く存在を目指すことを考えて日々活動している」と説明。「モノづくりで世界に貢献する」というマツダの原点を紹介した。

●フォードが与えたきっかけ

 マツダはロータリーエンジンなど業界の定石を打ち破る商品を次々と生み出してきた一方で、経営面では浮き沈みを繰り返した。1970~1990年代には企業規模の拡大を目指し、国内の販売網を大手に並みに軽自動車から高級車まで販売チャネル5つを設けた。しかし、競争力を保つことができずに逆にブランドイメージの低下につながった。

 そうした中で、「支援してくれたフォード(Ford Motor)がブランドイメージを考え直すきっかけをくれた」(菖蒲田氏)という。マツダはフォード傘下で2007年に技術開発の長期ビジョン「サスティナブルZoom-Zoom宣言」を発表した。

 Zoom-Zoomはクルマが走る音をあらわす幼児語で、日本語では「ブーブー」にあたる。「子どものころに感じた自動車への感動を持ち合わせる人たちに、走る喜びと優れた環境安全性能を提供すること」(菖蒲田氏)を目指すものだ。企業文化を養分として吸い上げた木が、環境と安全という2つの太い枝とZoom-Zoomを体現した梢を成長させ続けていくことを描いている。

 サスティナブルZoom-Zoom宣言の翌年である2008年、マツダは“太い枝”の1つである環境技術について普及の見通しを立てた。年を追うごとにエレクトロニクス技術が増えていくが、ハイブリッドシステムを含めベースエンジン(内燃機関)もまだ大半を占めると見込んだ。

 そこで、マツダは「エンジンやトランスミッション、シャシー、ボディーなどのベース技術を徹底的に追求し、その上でエレクトロニクス技術の段階的導入をしていくという、ビルディングブロック戦略を取った」(菖蒲田氏)。

●始まったSKYACTIVテクノロジーの開発

 内燃機関の技術を磨く余地を当時はどう見ていたのか。「熱量のうち仕事として取り出しているのは30%にすぎなかった。まだ改善の余地がある」(菖蒲田氏)と考え、究極のエネルギー効率を求めて、「SKYACTIV ENGINE」の開発に取り組んだ。さらに、世界一の機能と走る喜びを共に実現するため、「クルマの基本性能を一から見直し、革新する」(菖蒲田氏)という取り組み「SKYACTIV テクノロジー」がエンジン以外でも展開された。

 加えて、クルマを文化として育てていくためにデザインも見直した。生命感あふれ、心ときめかせる動き「魂動(こどう)」をテーマに商品開発を進め、「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」「デミオ」「ロードスター」などのモデルをラインアップしている。

 マツダは「世界中の自動車メーカーが驚くような革新的な内燃機関を搭載したクルマを開発する」という目標の下でSKYACTIV テクノロジーを導入した。しかし「従来のモノづくりの延長では、実現は不可能であることから、モノづくりの方法にも革新を取り入れた」(菖蒲田氏)という。

 モノづくり革新では、商品競争力を高める多様性とボリューム効率を高める共通性というトレードオフを打破し、技術革新を伴うさまざまな商品を開発・生産しながら、単独車種に近いビジネス効率を目指した。

 これを実現するため「コモンアーキテクチャ構想」と「フレキシブル生産構想」の2つの活動を始めた。2006年の時点から2011~2015年に発売するモデルを想定し、全てのモデルに展開できる構造や工程を一括で企画した。この間、新製品を発売できなかったが、ターゲットとする時期を見据えた製品開発に取り組んだという。

 コモンアーキテクチャ構想は、エンジンを例にとると排気量が異なっても固定して考える部分を共通の構造にするもの。フレキシブル生産構想は、高効率に商品力の高い製品を提供するため、トランスファーマシンに頼らず工程集約や設備のフレキシブル化を進める取り組みだ。

●これからのマツダのモノづくり革新

 マツダにおけるモノづくり革新の今後の取り組みについては、「これまでは生産・開発という2つを軸に取り組んできたが、今後は調達・物流・品質を加えた5軸でモノづくりの革新を進めていく。開発と生産、調達まで一気通貫にしたモデルを事前に検証してプロセスを構築し、現物を作る前に狙いの商品性能やコストを実現できていることを確認しながら、同時にグローバルの拠点でモノづくりを展開していけるようにする」(菖蒲田氏)。

 デジタル技術による高品質化と効率化の推進「MDI(Mazda Digital Innovation)」もマツダが長年続けている取り組みの1つだ。1996年からMDIのフェーズ1としてCAD/CAM/CAE技術を駆使した商品開発プロセスの革新に取り組んできた。

 今後はMDIのフェーズ2としてモノづくりのプロセスをサプライチェーンのプロセスや顧客体験のプロセスへと機能統合ができる製品開発を進めていく。

 人づくりについても、技術系の新入社員は開発部門を一度経験して生産技術部門へ戻ってくるなど、担当領域以外の周辺領域にも精通した知識や人間関係を身に付けるように取り組みも行っている。

 今後も目指す姿はブレずにより効率の高い内燃機関を開発し、その上で電動化技術を向上、厳しくなるCO2削減目標を達成していく。

最終更新:7/31(月) 6:25
MONOist

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