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鉄道新線・なにわ筋線……大阪市で巨大事業が続々と浮上、収入不足解消のめど立たず

7/31(月) 6:50配信

ZUU online

大阪市で巨大事業が次々に動きだし、財政への影響が危惧され始めた。2月の2017年度当初予算案発表段階で相次ぐ大型新規事業などから2023年度の収入不足解消を断念し、少なくとも今後10年間は収入不足が続くとの見通しを公表したが、その後も鉄道新線・なにわ筋線の建設計画など大きな財政負担を伴う巨大事業が続々と浮上している。

招致活動が続く2025年の大阪万博や、カジノを核とする統合型リゾート(IR)構想も待ち構えているだけに、財政状況のさらなる悪化は避けられない見通しだ。

■2023年度での収入不足解消を断念

市は毎年、当初予算案の公表に合わせ、今後の財政状況の収支概算を発表している。それによると、2016年の試算では収入不足額は2018年度の242億円をピークに減少し、2023年度で解消するとしていた。

しかし、2017年の試算では収入不足額が2018年度の262億円をピークに徐々に減少、2023年度に9億円まで下がるものの、その後再び増加に転じ、少なくとも10年間は解消できないと予測している。

試算は各年度の当初予算を基本に、高齢化の進行による社会保障費や老朽化に伴う公共施設維持管理費の増加、収支に大きな影響を及ぼす大型事業の動向などを反映させてはじき出した。

2018年度以降は北区のJR大阪駅北側で計画されるうめきた2期区域基盤整備事業、北区と門真市を結ぶ自動車専用道路の淀川左岸線延伸部事業などの事業費を計画ベースで織り込んでいる。

2017年の予測が悪化したのは、大型新規事業が増えたほか、公共施設の維持管理費の増額が見込まれるためだ。2000億円もの損失を出した阿倍野再開発事業の補てんも大きな影響を与えた。

だが、その後明るみに出た巨大事業の負担は盛り込まれていない。市財政課は「収支概算に盛り込まれた事業は確定しているものだけ。不確定要素も大きいので、収入不足の見通しについては、相当な幅を持って見る必要がある」と説明した。

■夢洲開発、なにわ筋線建設で新たな負担が確実

試算発表後に明らかになった巨大事業の1つが此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)の開発だ。夢洲は政府が招致を進める大阪万博、大阪府と市が誘致を続けるIRの候補地で、誘致関連費約1億4000万円が2017年度当初予算に計上されたが、実現すれば市の支出はそんな額で終わらない。

万博の会場建設費は1250億円と見積もられている。政府と府・市、経済界は4月、費用を等分負担することで大筋合意した。自治体分は府と市で折半する方向だけに、少なくとも200億円以上を市が負担することになる。

このほか、地下鉄中央線の延伸、夢洲駅(仮称)の新設も必要だ。関連事業費は700億円を超す見込みで、府と市は中央線延伸に伴う費用を540億円と試算している。このうち、かなりの部分が市の財政から支出されることになりそうだ。

IRも誘致が実現したと仮定すれば、全体の完成時に見込まれる建設投資が8240億円に及ぶと推計されている。施設建設以外でも、JR桜島線、京阪中之島線の延伸、北側の人工島舞洲(まいしま)と結ぶ夢舞大橋の拡幅にも着手する方向が打ち出されている。施設建設は民間主導になるとしても、関連工事で市が負担する額は相当大きくなる見通しだ。

さらに、市内を南北に貫く鉄道新線のなにわ筋線も、府と市、JR西日本、南海電鉄で2030年度の完成を目指すことになった。総事業費は約3300億円。府市と鉄道会社が折半で出資する第三セクターが建設主体となる見込みで、総事業費のうち三セク会社への出資金が20%、国と府市の補助金が50%余りを占める。

負担割合は今後詰めていくが、府市の負担分が総額の3分の1に当たる1100億円程度になるとの見方も出ている。

■収入不足解消へ向け、改革の継続が必要

市は1990年代に住之江区のオフィスビル・アジア太平洋トレードセンター、ワールドトレードセンター、浪速区の複合商業施設・湊町開発センター、中央区の地下街・クリスタ長堀など身の丈に合わない巨大開発を三セク方式で進めた。

いずれも1000億円単位の巨額の事業費を投入したものの、バブル崩壊後の景気低迷で経営が悪化した。ワールドトレードセンターは2010年、大阪府へ86億円で譲渡され、他の3施設も経営破たんしている。

市は2006年度から行財政改革に取り組み、2012年度からの市政改革プランでは3年間で448億円の職員給与カット、472億円の事業、補助金見直しなどを進めた。その結果、ようやく財政状況改善の兆しが見えてきたが、その矢先に再び巨大事業のラッシュが始まろうとしている。

市は人口こそ増えているものの、経済の地盤沈下を抜け出せていない。新たに浮上した巨大事業は市の経済成長を牽引する事業と位置づけられているが、財政を再び危機的状態に逆戻りさせたのでは元も子もない。

市財政課は「事業の選択と集中を進め、収入不足の解消に向けて改革に取り組む」としている。市は今後、新たに浮上した巨大事業の負担割合について関係機関と協議することになるが、財政悪化を食い止めるため難しい選択を迫られそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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最終更新:7/31(月) 6:50
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