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くるぶしオヤジの登場も近い? ファッションと働き方改革の関係

7/31(月) 6:05配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日本でクールビズという考え方が広まってから10年以上が経ちました。それまでは暑い夏もジャケットにネクタイが基本だった日本のビジネスパーソンも夏に合わせたファッションを考えるようになりました。今ではノーネクタイが当たり前になり、政治家の先生たちでさえネクタイをしなくなりました。

【伊藤忠商事の「脱スーツ・デー」宣言】

 そんな中でクールビズファッションがさらに進化し、くるぶしを出すスタイルが今注目されています。

●暑い夏を乗り切れ!

 2017年夏は例年以上に暑さを感じる毎日です。東京では毎日30度を超える暑さが続き、都心部のオフィスに通うサラリーマンも服装をどうしようかと悩む日々かと思います。

 これは世界的な傾向のようで、夏のファッションだけでなく、休みの取り方、仕事の仕方さえも変わり始めています。

 下記は世界の気温上昇に関するグラフです。米国海洋大気庁(NOAA)の調べでは17年6月は観測史上で3番目に暑い6月だったことが明らかになっています。また、同年1月からの6カ月間における平均気温は、20世紀全体の平均データよりも「セ氏プラス0.9度」となっています。観測史上最も暑かった16年に次いで、17年は2番目に暑い半年間と言えるようです。

 クールビズは05年、世界的な地球温暖化対策の一環として、当時、環境大臣の小池百合子氏(現東京都知事)が旗振り役となって進めたものです。毎年5月1日から9月30日まで、上着やネクタイなどを着用せず、軽装で過ごすことでオフィスでの冷房使用を節約して地球温暖化を防ごうという趣旨で始まったのです。

 従って、ファッションはそのアイコンとして分かりやすいために注目され、環境省職員がアロハシャツで出社したり、クールビズファッションが百貨店やファッションブランド各社から発売されたりするようになりました。今では地球温暖化対策のクールビズというより、暑さ対策のファッションへと嗜好が変わってきたように感じます。それによって夏のファッョンスタイルもバリエーションが生まれ、男性の恰好にも変化が見えるようになってきました。

 これまではジャケットを脱ぐ、ネクタイをしないという上半身だけに注目するスタイルだったのが、チノパンやジーンズ、スニーカーでも良しとするように、下半身のファッションにも変化をつけるようになったのです。

●くるぶし男子の登場

 6月16日、伊藤忠商事が「脱スーツ・デー」を宣言しました。

 毎週金曜日の社内のドレスコードを大きく緩和して、ジーパンもOKにしたという内容です。この取り組みによって出てきた1つのスタイルが、くるぶしを出したファッション、いわゆる「くるぶし男子」です。

 従来は禁止されていたポロシャツやカーゴパンツ、ジーンズ(破れ加工したものやオーバーオールは不可)、スニーカーなどを解禁したことで、着こなし方のバリエーションが増えました。そこで、くるぶしが出るようなパンツのロールアップなどができるようになり、伊藤忠商事にくるぶし男子が登場し始めたのです。

 くるぶし男子はこれまではイタリアオヤジか、タレントの石田純一さんが得意とする(?)スタイルでした。

 日本では、くるぶしを出すのは仕事を離れたオフのファッションというイメージがとても強かったため、仕事場でこのようなスタイルをする人はファッション業界以外ではほぼいませんでした。

 特にくるぶしを出すというスタイルは若者の特権であって、オヤジたちがやると、「つんつるてんですよ」と言われかねません。相当な着こなしレベルが求められます。

 しかし、くるぶしを出して、スニーカーソックスよりもさらに短い靴下を履き、ローファーやデッキシューズ、スニーカーで仕事ができたら快適に働けそうです。くるぶしを出すだけで涼しさを感じますし、目の錯覚で足も長く見えます。このようなスタイルは日本の暑い夏にぴったりだと、いくつかの会社ではクールビズのファッションコードを緩めることで、くるぶし男子がたくさん生まれているようです。

 今後は若者だけでなく30~60代の男性の間でもくるぶしを出す「くるぶしオヤジ」が登場するかもしれません。夏だけはドレスコードを緩めて、より効率的な働き方を推進するのが1つの流れになっていくでしょう。そうすることで世の中の消費を上向かせることにもつながりやすいと思うからです。

●伊藤忠の狙いは働き方改革

 伊藤忠商事では脱スーツ・デーを「社員1人1人の能力発揮を促す働き方改革の新たな一手」としており、関連して以下のような取り組みを始めています。

(1)伊勢丹新宿本店協力によるトータルコーディネートプログラムの導入(社員男女10人を募り、各人に伊勢丹のスタイリストが専属でアドバイスする)

(2)ドレスマナーの改定(デニムなどスマートカジュアルの推進など)

(3)ifs未来研究所・伊勢丹新宿本店スタイリスト(販売員)によるコーディネイト/スタイリングイベント(カジュアルコーディネート、メイクアップなど)の開催

(4)伊勢丹新宿本店スタイリスト(販売員)による最新トレンドおよびコーディネイトに関する「朝活セミナー」の実施

(5)階層別研修でのドレスマナーおよび社員のTPO全般に関する講義(啓蒙活動)

 服装を楽にすることで快適に仕事ができるでしょうから、くるぶし男子は生産性を上げるきっかけになるはずです。もう1つの狙いは、ファッション市場の盛り上げという点です。伊藤忠が伊勢丹と組んでコーディネイトやメイクのあり方を社員に伝えようとしている点がポイントです。男性の着こなし方、コーディネイトの仕方を変えていくことで、取引先との会話のきっかけを作り、そこに新しい提案を生まれやすくしています。

 伊藤忠商事は総合商社の中でも圧倒的にファッションに強い会社として有名です。現在、繊維事業は100億円以上の利益を上げ、「アルマーニ」など海外の有名ブランドのライセンスも数多く持っています。今の岡藤正広社長も繊維畑出身。つまり、脱スーツ・デーに会社を上げて取り組むことで社員のファッション消費を促すことができます。さらに小売大手の伊勢丹と組むことで、新しいファッションアイテムの購入などが生まれやすくなり、アパレル市場の盛り上げにもつながるというわけです。

 今では伊勢丹新宿店でもくるぶし男子の販売員を多く見かけるようになりました。同店だけでなく、そごう・西武などの他店でも、くるぶし丈スタイルを提案するようになっています。

 数々のアイテムをヒットさせてきたユニクロも「イージーアンクルパンツ」でくるぶしを出すスタイルを提案しています。

 このように、くるぶし男子は1つのファッショントレンドという枠を超えて、これからの私たちの働き方や発想の転換につながるスタイルになるかもしれません。

 これまではくるぶしを出すというスタイルは、「失礼なやつだ」「行き過ぎている」などとビジネスシーンでは受け入れられませんでしたが、今回のトレンドをきっかけに価値観が変わり、これからますます増えてくることでしょう。くるぶし男子というスタイルは新しい時代の幕開けを意味しているかもしれません。

 クールビズで日本のファッションが変わり始めたように、くるぶし男子がファッションだけでなく働き方改革の推進となるように思います。

 ただしオヤジがこのスタイルを取り入れるときには、回りの意見をくれぐれも聞くようにしてください。間違えて息子のパンツを履いてきてしまった、仕事ができないオヤジだと思われないように。自戒も込めて。

(岩崎剛幸)