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Suchmosの魅力──世間の常識やシーンの流行に関係なく、仲間と好きなことをやって生きていく

7/31(月) 18:20配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

■彼らは本当に“いいヤツら”だった

Honda『VEZEL』のCMソングに起用された「STAY TUNE」を含む2ndアルバム『THE KIDS』(2017年1月リリース)が10万枚を超えるセールスを記録。全国ツアー「TOUR THE KIDS」のチケットも争奪戦となるなど、音楽シーンにおけるもっとも注目すべきバンドとなったSuchmos。

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70年代のサイケデリックロック、80年代のブラックミュージック、90年代のアシッドジャズなどをルーツにした音楽性も高い評価を集めているが(30~40代の音楽ファンにも支持されまくってます)、彼らがここまで人気になった最大の理由は、メンバーが醸し出す独特のムードではないだろうか。

世間の常識、シーンの流行などに関係なく、仲間と一緒に好きなことをやって生きていく。そのスタンスこそがSuchmosの魅力であり、その中心にいるのがボーカリストのYONCEなのだと思う。

筆者はSuchmosに二度インタビューをしたことがあるが(そのうち1回はYONCEへの単独取材)、彼らは本当に“いいヤツら”だった。現在のバンドシーンに対する違和感、不満もハッキリと口にし、こちらの問いかけに対しても違うと思えば「それは違う」と明確に伝えてくるのだが、イヤな感じはまったくなく、むしろ誰に対してもオープンに明るく接する態度に強く惹かれてしまった。

メンバー全員、音楽が大好きでめちゃくちゃ詳しく、「これがカッコ良い」「これはカッコ良くない」という価値観をしっかり共有していることにも好感を覚えたが、それを象徴するYONCEの言動、佇まいは本当にカッコ良く、「これは絶対モテるわ。若いヤツらがYONCEのマネしてアディダスのジャージ着たく気持ちもわかる」と思った。

“誰にも媚びず、好きなことを貫く”という彼らの姿勢、そして、YONCEの圧倒的なカッコ良さは新作「FIRST CHOICE LAST CHOICE」にも強く反映されている。自ら設立した新レーベル「F.C.L.S.」からの第1弾リリースとなる本作には、「WIPER」「OVERSTAND」の2曲を収録。

まず「WIPER」は70年代の伝説的ギタリスト、ジミ・ヘンドリクスを想起させるようなフレーズから始まるロックチューン。メンバー全員の音がぶつかり合うようなサウンドからも、「全員のスタイルを遠慮せず発揮することこそがバンドだ」という彼らの考え方が伝わってくる。

さらに特筆すべきは歌詞。“じゃれ合いな 都合がなんだ”“じゃれ合いな 用はないな”というラインには、既存のフォーマットや慣習によって縛られている現在の社会──学校も政治もエンターテインメントの世界も同じことだと思う──に対する強烈なカウンターが含まれている。

つまり“おまえらは勝手にじゃれ合ってろ。俺らは好きにやってるから”というわけだ。以前、YONCEはSuchmosの歌詞について「『THE KIDS』でいうと『TABACCO』『PINKVIBES』もそうなんだけど“もっと生きやすい方法もあるよ”って言いたいんですよね。既成概念や同調圧力なんかに屈する必要はないし、少なくも俺たちはこうやってご機嫌にやってるよって」という趣旨のコメントをしていたが、「WIPER」にはそのスタンスがこれまで以上に濃密に込められているのだ。

■Suchmosのアティチュードが日本のフェスを変える

2曲目の「OVERSTAND」は、リゾートの夕暮れを思い起こさせるグルーヴィーなナンバー。この曲は去年の秋、メンバーとスタッフがグアムに行ったときのイメージから制作されたという。

仲間同士のリラックスした雰囲気、そこで感じたことを軸にしながら、これまでバンドが通ってきた道、さまざまな出会いと別れなどを描いた「OVERSTAND」もまた、何よりも“自分たちが気分良く過ごす”ことに重点を置いているSuchmosのアティチュードが現れていると言っていいだろう。

もうひとつ強調しておきたいのは、「WIPER」「OVESTAND」が日本のフェスの流れを大きく変える可能性を持っているということ。“4つ打ちを軸にしたBPMの高いダンスナンバーでみんな一緒に同じ動きをして盛り上がる”という既存のフェス文化(アレが始まってもう10年くらい経ってる気がするが、一体、いつ終わるんでしょうか?)とSuchmosはまったく相容れない。

“まわりと同調して盛り上がる”のではなく、ひとりひとりのオーディエンスが“俺はこれがカッコいいと思う”という価値観を持ったうえで音楽を選び、自分の意志で楽しむ──そう、Suchmosの登場によって、この国の音楽のフェスの在り方は大きく変わりつつあるのだ。

その先頭に立っているのは、もちろんYONCE。あらたな“カッコ良いボーカリスト像”を体現し続ける彼の存在は(例えば70年代の矢沢永吉、80年代の氷室京介などと同じように)、日本のロックシーンにおける新しい価値基準になるだろう。

TEXT BY 森 朋之