ここから本文です

「P9シリーズよりも売れている」 ファーウェイ呉波氏に聞く「P10」3機種の手応え

7/31(月) 12:02配信

ITmedia Mobile

 SIMロックフリースマートフォン市場で、Huaweiの快進撃が続いている。6月に発売されたフラグシップモデルの「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」や、普及価格帯の「HUAWEI P10 lite」は、いずれも好調。同社によると、発売2週間での売れ行きは、P10シリーズがP9シリーズの1.6倍。P10 liteに至っては、P9 liteの1.8倍というボリュームになったという。スマートフォン全体でも、前年同期比で3倍に急成長している。

【PANTONEカラーを採用したP10 Plusの「グリーナリー」】

 BCNの調査では、SIMロックフリースマートフォンメーカーとして、上半期のシェア1位を獲得。Huawei同様にSIMロックフリー市場へいち早く参入したASUSとデッドヒートを繰り広げている状況だ。一方で、同社にとって、SIMロックフリースマートフォンはあくまで選択肢の1つ。日本ではWi-Fiルーターやタブレットが中心だが、海外では、大手キャリアもHuaweiのスマートフォンを取り扱っている。

 特に日本では、キャリアのスマートフォンが持つシェアが大きいこともあり、Pシリーズで培った知名度を引っ提げ、この分野への再参入があるのかは気になるところだ。また、同社は、FeliCaへの対応も表明しており、今後の端末への採用が期待される。そこで、ファーウェイ・ジャパンでデバイスプレジデントを務める呉波(ゴハ)氏に、P10シリーズの手応えや、今後の戦略をうかがった。

●2017年が1つの分岐点になる

―― P10、P10 Plus、P10 liteが好調とうかがいました。

呉氏 日本市場では、上期だけで3倍に増えています。BCNからの引用になりますが、P10(Plusも含む)はP9と比べて1.6倍、P10 liteに関しては1.8倍の増加になりました(ともに発売2週間での比較)。上期のSIMフリー市場では、弊社が1位となっています。

―― 伸びた理由を、どう分析していますか。

呉氏 2017年は、1つの分岐点になると思っています。SIMフリー市場に参入した3年半前は、高速道路に上がるスロープを上っているところでしたが、2017年は高速道路に入り、一気に加速している段階になりました。日本のSIMフリー市場は今年(2017年)に入り、3倍、4倍に成長すると見ていましたが、今のところ、ほぼその予測通りになっています。

―― その理由はどこにあるのでしょうか。販路が広がったのか、パイが増えたのか、何が効いているとお考えですか。

呉氏 複数の要素が重なっています。主な要因として、まずマクロな環境……これは政治、行政の環境ともいえますが、それをお話しすると、総務省が端末購入に補助に対してさらなる制限をかけ、SIMフリー市場を大きくしようという動きがありました。これによって、SIMフリー市場で事業を展開している事業者が、自信をつける結果になりました。

 2点目の理由として、自信がつくことで、SIMフリーの端末売り場も場所がよくなり、面積も広く取られるようになりました。今は家電量販店に入って、すぐ目に入るが、SIMフリースマートフォンの売り場です。場所が拡大して、ロケーションもよくなっているということです。

 もう1つ、メディアの注目も高まりました。例えば、これまで私は1年に10回ほど取材を受けてきましたが、今では月に20回です(笑)。非常に関心を集めていると、実感しています。

 結果として、過去3年間は1万円台、2万円台の端末が主流でしたが、今となっては1万円台の格安スマホが消え、2万円台のものも少なくなっています。その代わり、4~7万円のスマートフォンが出てきて、価格帯のバリエーションも広がりました。その中でも、3万円台のものが多く出ており、主流になっています。

 これが何を物語っているかというと、SIMフリーのスマートフォンが、キャリアのスマートフォンと肩を並べるところに来ているということです。これまで、キャリアのスマートフォンが選ばれてきたのは、機能やスペックがいいからでしたが、SIMフリースマートフォンはスペックだけでなく、価格もキャリアのスマートフォンに追い付いてきています。

 一方で、料金プランを見ると、キャリア側が月々6000円、7000円かかるのに対し、SIMフリーの場合は(MVNOを選ぶと)月に2000円ぐらいしかかかりません。SIMフリーを選べば、月5000円、1年で6万円、2年で12万円もの節約になるというわけです。(スペックが同じで)料金プランでの競争になれば、SIMフリースマートフォンの方が節約になるということで、選ばれることが増えています。

●キャリアからHuaweiスマホが出る可能性もある

―― なるほど。とすると、ドコモの「docomo with」や、auの「ピタットプラン」「フラットプラン」のような、いわゆる分離プランは追い風になるかもしれません。

呉氏 はい。ドコモに続き、auでも同じような施策(分離プラン)を打ってきました。こういった料金プランは、端末に対する補助が減るか、なくなります。ですので、分離プランが導入されたことは、SIMフリースマートフォンにとっていい知らせでもあります。キャリアの端末の購入補助が減ることで、ようやくキャリアのスマートフォンとSIMフリースマートフォンの値段が、同じスタートラインに立てるからです。私が思う、成長のスピードは今まで以上になるでしょう。

―― 逆に、キャリア市場でスマートフォンを販売するという可能性もありそうですか。

呉氏 日本では、キャリア市場とSIMフリー市場は確かに対抗関係にありますが、一方で、共存共栄の関係でもあります。これまで、SIMフリー市場では、スマートフォンの普及に力を入れてきました。SIMフリーを始める前の普及率は50%に満たなかったのですが、今ではその割合も上がっています。

 また、弊社の売り上げの多くは、やはり3大キャリアからきています。3大キャリアとは、密で持続的な協力関係を築いていますから、キャリアからHuaweiのスマートフォンが出るということに関しては、可能性があると思っています。

●“生活防水”を訴求しない理由

―― 2017年は、2016年にはなかった“Plus”も発売しましたが、これも市場が拡大したおかげでしょうか。実際、出してみていかがでしたか。

呉氏 その通りで、今回が初の投入になります。実はどちらかというと、P10 Plusの方がよく売れています。ユーザーからのフィードバックとしては、3つのライカレンズ(アウトカメラ2つ、インカメラ1つ)を搭載したことが非常に好評です。P10 Plusにのみ、SUMMILUX (ズミルックス)という、上位のレンズが使われているのがその理由です。2つ目の理由として、P10 PlusにはPANTONEとのコラボレーションになるグリーナリーというカラーがあり、これの受けが非常にいいですね。

―― ちなみに、P10 Plusのみという意味では、グローバルの発表で紹介されていた生活防水機能もありますが、これを日本の発表時にうたわなかったのは、なぜでしょうか。

呉氏 日本市場に投入したP10 Plusもグローバルモデルなので、スペックは同じです(生活防水に対応している)。なぜそれを宣伝しなかったのかというと、防水という機能をどのように使っているのかを、もっと見てみたかったからです。今後、日本市場で防水対応のスマートフォンを出す可能性はあり、そこに向けて、データの収集や準備をしているところです。

 (あえて言わなかったのは)この業界の慣習にならったやり方でもあります。他社も同じようなことをしていますが、日本の消費者は、防水ニーズを最重要視しています。ですから、日本で通常、防水というと、IPX5/7や6/8が常識ですが、弊社の場合はIPX3で、生活防水という程度のものでしかありません。防水と言ってしまうと、いらぬ誤解を生むおそれもあったので、大々的な宣伝はしませんでした。

 実際、過去にあるキャリアから生活防水のスマートフォンが出たことがあったのですが、消費者はIPXの数字を知らずに、5/7だと思って使ってしまい、問題が起こったという事例があります。消費者はそこまで細かい数字を知っているわけではなく、防水かそうじゃないかの2つしかないのだと思います。

●novaとP10 liteはすみ分けができている

―― P10 Plusも出し、機種数が増えています。2017年はnovaシリーズも発売しました。こことP10 liteのすみ分けは、しっかりできているのでしょうか。

呉氏 社内データで実売を見ると、お互いが対抗関係にあるのではなく、むしろ、お互いの販売を促進した形になっていることが分かります。P10 liteも発売してからほぼ1カ月たちましたが(インタビュー時点)、弊社の中では、P10 liteを出すことで、P9 liteの売れ行きが下がってしまうのではないかという見方がありました。ただ、実際には、P10 liteの発売後に、P9 liteの売れ行きがさらに勢いを増しています。

 ですので、今はP10 liteとP9 liteのどちらも売れています。P9 liteはすでに11カ月販売してきましたが、ピーク時より高い数字を維持しています。それは、やはり日本のSIMフリー市場が、今年大きく躍進しているからです。

 P10 liteとnovaシリーズには、しっかり違いもあります。novaにはどちらかというと、女性的でオシャレなイメージがありますが、P10 liteは若者向けです。novaを日本市場に投入した理由は、それ以前の年齢層が高く、男性が多かったからです。novaを出すことで、これまで弊社のユーザーではなかった若者や女性に対して、しっかり訴求をすることができました。

―― 楽天モバイル専売になっている、honorシリーズはいかがでしょうか。海外では「honor 9」も発売されました。

呉氏 honorシリーズは、2015年6月に初めて日本に導入して、今年で3年目になります。弊社のhonorブランドは、海外でオンライン専売になっていて、コストパフォーマンスのいいシリーズです。日本市場の実績としても、悪くはありませんから、引き続きご紹介させていただきたいと思っています。ただし、honor 9をリリースするタイミングについては、今はまだお話することはできません。

●VoLTEは今後標準対応に FeliCaは……

―― P10 liteはKirinチップを搭載しながら、au VoLTEに対応しました。一方で、P10、P10 Plusは未対応です。これはなぜでしょうか。

呉氏 日本の3大キャリアのVoLTEについては、全てのラインアップで問題なく対応できます。そこに技術的な難しさはありません。これはHuaweiに限らずですが、今後のSIMフリースマートフォンは、日本の3大キャリアのVoLTEに、デフォルトで対応していくことになるはずです。ただし、開発期間を要するものではあるので、順次対応していく形になります。

―― FeliCaについては、いかがでしょうか。対応を表明されてから、何か変化はありましたか。

呉氏 そうですね。これは前にも申し上げたかもしれませんが、ほとんどのスマートフォンはNFCに対応しています。今は、NFCとFeliCaに両対応できる方法を探しているところ(両対応したチップはキャリアのスマートフォンや一部SIMフリースマートフォンに搭載されている)で、近い将来、それが実現できるようになります。ですので、FeliCa対応は技術の問題ではなく、時間の問題です。これは口先だけでなく、実際に取り組んでいる話です。

―― 決済という意味だと、御社は「Huawei Pay」というプラットフォームを中国で展開しています。これについてはいかがですか。

呉氏 こういった決済サービスを始めるには、まずクラウドサービスが必要になりますが、弊社はまだ日本では、スマートフォン向けのクラウドサービスを持っていません。日本でクラウドが配備されれば、そういった決済を開始できる可能性はあります。

 Huawei Payの用途はWeChat Payなどとちょっと違い、主に日常生活で、例えば地下鉄に乗るときなどに使われることがあります。また、一部のショッピングモールでも使えるようになっています。深センだけでなく、上海、北京でも利用できます。日本で買った端末にも、アプリを入れれば問題なく使えるようにはなりますが、プリインストールはしていませんし、(中国の)銀行カードの登録も必要になります。

 ただし、モバイル決済に関しては、日本と中国、その他の国で、環境が大きく異なります。日本では3大キャリアがおサイフケータイを手掛けていますが、中国だとキャリアではなく、WeChatなどのサードパティが主体で、ビジネスモデルも大きく違います。もちろん、これは新しいビジネスなので、非常に大きな利益をもたらす収益源になる可能性もあります。一方で、日本では、auがau WALLETのようなサービスを展開しているので、そういったところと競合関係になるようなことは考えていません。

●取材を終えて:ハイエンドモデルが好調を後押し

 SIMロックフリースマートフォン市場の拡大に伴い、Huaweiは徐々に、ハイエンドモデルに力を入れ始めている。その読みが当たり、P10、P10 Plusの販売台数も伸びているようだ。その結果として、日本市場に対し、さらに前向きになっている様子がうかがえた。FeliCa対応の表明はその1つ。防水仕様を盛り込むことも、計画しているという。いずれも実現するのは2018年以降になる可能性は高いが、その時が今から楽しみだ。

最終更新:7/31(月) 12:02
ITmedia Mobile