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金丸フューチャー会長、「バブル崩壊がなかったら、潰れていた」

7/31(月) 14:30配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 金丸恭文フューチャー会長兼社長グループCEOに聞く(2)

 ――サラリーマン時代に、金丸さんはコンビニエンスストアのセブン‐イレブン・ジャパンのPOS(販売時点情報管理)システムを大幅に革新する仕事を成し遂げました。そうした実績を引っ提げて、1989年11月に35歳で創業したわけですね。

 IT(情報技術)による技術革新の果実をお客様に享受していただくというのが、起業した私の売りでした。具体的には、無駄なIT投資を減らせますということです。ところがバブル経済で右肩上がりの絶頂期にあった企業に対する、コストダウンの提案は、門前払いも同然だったんです。

 企業はいけいけどんどんで、全部門が二ケタ%増の予算で競い合っているときでしたからね。「いかにカネを使うか考えているのに、コストダウンだって?お前はオレたちの苦しみを大きくしにきたのか」と言われましたよ。

 私はアレッと思いました。セブン‐イレブンは喜んでくれましたが、大半の企業の人たちは浮かれ気分で、「予算の消化が大変だから、最先端のハードウエアを買い増すんだ」という状況でした。

――図らずも時代に逆行していたわけですね。

 だから、もしバブルが崩壊していなかったら、自分の会社の崩壊の方が早かったと思いますよ。最初のころは、コストダウンの受注はなくて、受注できたのは日本石油の販売部長だった渡文明さん(後に新日本石油の社長、会長を務め、現JXTGホールディングス名誉顧問)からもらったような仕事です。これは全国のガソリンスタンド1万店のシステムを作り変えるプロジェクトでした。

 システムを刷新するのに合わせて、競争力をさらに強化するために、技術革新の成果を使っていただくというものです。なるほど、ポジティブ・コンサルティングへの切り替えが必要だったわけです。

 同じ100億円を使うのならば、10倍くらい効果のある使い方ができますよと言うと、「あっ、そうか」と納得してもらえるんです。競争相手に勝てますよというふうに持ち掛けますとね。

――起業にはタイミングも大切なようですね。

 当時、本屋さんに行くと「脱サラの勧め」のような本しかなかった。「起業家」とか「アントレプレナー」といった格好いい前向きな言葉はありませんでした。「ドロップアウト」とか「スピンアウト」とか、「アウト」という言葉ばかりです。

 脱サラはサラリーマンの世過ぎから脱出するという意味でしょう。起業について、ポジティブなイメージはなくて、いい時代ではなかったですよ。

――落ちこぼれという感じですか。

 そうそう落ちこぼれ。「脱サラの勧め」といった本で覚えているのは、成功する第1の条件は「時流に乗る」ことだったですね。風がいい時に、グライダーのように風に乗って行けというわけです。

 そうすると、私は合っているわけです。89年の景気がものすごくいいときに起業したのだから、間違っていないんです。でも経済がいいときは、新しいサービスを提供するイノベーターは逆に、私のように苦労する。

 実際には、不景気の方が私は伸びたんです。過去を振り返ると、景気がデフレでどんどん悪くなって、リセッションと言われたときに、フューチャーはずっと二ケタ成長を続けています。なぜならば逆風が吹くと、企業の経営者や事業部長はこのままでは駄目だとはたと気づき。無駄を省いて次の手をどう打つか一生懸命考え始めるからではないかと思うんです。

 それまで過去の実績を重視して意思決定していたのが、世界中に視野を広げていいものはいいとなるわけです。カオスのような今こそ、起業家が活躍できる余地が広がるので、この方が時流だよと私は言っています。

 普通に考えるのとは逆で、逆風が吹いて、アゲンストの方が、むしろチャンスがあるんです。

――確かに不景気だと、企業は何かうまい手はないかと探すので、新しいサービスが注目されますね。

 私たちは今までにないやり方を提供できますと言うと、相手は聞いてみようかという気になるんです。でも返ってくる言葉は「実績は?」です。起業したばかりなのに実績を問題にされたら、永遠に何も始まらないですよ。

――では起業家には何が必要ですか。

 まず経験からでも、ひらめきからでもいいですから、何かアイデアがないと駄目ですね。それは事実に基づいたアイデアと、あと3分の2くらいはイマジネーション、想像力から生まれるアイデアだと思います。

 例えば、自分の専門分野での経験から出てくるのは、事実に基づくアイデアです。未知の分野で、こんなものが流行るのではないかというのは、イマジネーションによるアイデアです。

 アイデアが無いので、まず学校に通う人がいます。ビジネススクールや起業家養成講座などにね。だけどそんなところに通って起業した人なんて、私は知りません。

 イマジネーションで当たったのは、例えば楽天の三木谷浩史社長がいます。インターネットに出会って、これで全てが取引される日が来るのではないかと発想して成功しました。ソフトバンクの孫正義会長兼社長もイマジネーション型ですね。

――アイデアは必須ですね。

 アイデア、イマジネーション、そしてあとは実行です。アイデアをためて、アドバルーンを10個くらいしまい込んで、何もことを起こさない人もいます。後から「オレもあれを思っていたんだよね」と言っても駄目ですよ。

 だから私はアイデアと実行が重要だと言っています。特にイマジネーションはリーダーに必要なのですが、今の経営者には乏しいですよね。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7/31(月) 14:30
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