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ポルシェがWECを辞し、フォーミュラE参戦を目指す理由

7/31(月) 18:50配信

motorsport.com 日本版

 メルセデスがDTM活動を止めて2019年からフォーミュラE(FE)に参戦する意向を表明したのに続き、7月28日(金)にはポルシェが今年限りでWECを辞して、同じ年からFEに活動の拠点を移すことを発表した。BMWはすでに2018年からのFE参戦を発表しており、これでドイツの3大自動車メーカーが揃ってFEに顔を揃えることになった。

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 実はポルシェは2018年までWEC(世界耐久選手権)への参戦継続を公表しており、WEC、ACO(フランス西部自動車クラブ)と契約を締結していた。それを破棄してまでのFEへの参戦を決めた裏には、自動車を取り巻く環境の変化に迅速に対応する姿をアピールしなければならない自動車メーカーの苦悩がうかがえる。

 自動車の動力源が内燃機関から電気エネルギーへの変換過程にあることは周知の事実だし、ヨーロッパの国々が将来自動車の動力源を全電化する方向であることは広くニュースで知れ渡っている。だからといってそれらの流れがFEと直接関わりがあるかといえばそうではないが、FEがうってつけの広告塔であることは誰もが認めるところだ。

 つまり、FE参戦を決めたヨーロッパの自動車メーカーはいずれもFEの広告塔としてのポジションをよく理解しており、積極的に環境に対応する姿を世間にアピールするためには格好のツールとして使おうと考えている。そして、その広告塔としての力はWECよりも大きいと言うことだ。それがポルシェが契約を破棄してまでWECを辞し、FEに鞍替えした理由に他ならない。

 ではいつからポルシェがFE参戦を視野に入れていたのか?

 実は、今年5月14日に行われたモナコePrixに、ポルシェのWECプロジェクトを率いるアンドレアス・ザイドル氏が姿を見せていた。視察という名目だったが、当然フォーミュラEへの参戦を前提とした視察だったはずである。そして決定的だったのがル・マン24時間レースでの勝利。もし今年ル・マンに負けていたら、もう1年WECに留まったはずだ。しかし、実際には勝利をあげ、3年連続のル・マン制覇を成し遂げたおかげで、来年以降WEC活動を継続する理由を見つけ出せなくなったということだろう。

 そして、一気に風はFEに向けて吹き始めた。

 技術の観点からいえば、WECのLMP1-Hクラスに参戦するハイブリッド車の方がFEより遙かに高度なシステムを有しており、開発には相当な時間と資金、人材が必要とされる。従来の内燃機関と将来のEV技術を追求する自動車メーカーとすれば、WECの方が取り組む価値はあるはずだ。しかし、時代の流れは確実に電気に向かっている。

 フォーミュラEホールディングス(FEH)のアレッハンドロ・アガグ代表は、「ハイブリッドは内燃機関と電気の中間、橋渡し的な役目を担っている。これから先は必ずEVが主流になる」と語る。その言葉を裏付ける様に多くの自動車メーカーが参入を表明している。

 しかし、ポルシェとて簡単にFE参入を決めたわけではない。ザイドル氏によるモナコePrix視察から数カ月かけての議論を経て、7月21日(金)に持たれた取締役会で最終的なGOサインが出されたということだ。こうしてポルシェの参戦が決まり、メルセデス、BMW、アウディ、ルノー、ジャガー、DSオートモービル……と役者が揃った感がある。

 足りないのは日本の自動車メーカーだ……。

赤井邦彦