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ダウン症児向けの母子手帳製作 富山の上原さん編集 

7/31(月) 0:39配信

北日本新聞

 ダウン症のある子を授かった親のための母子健康手帳が、日本ダウン症協会(東京)から発行された。「先輩」父母らの体験談など役立つ情報を盛り込んだ手帳で、同協会富山支部の上原(かみはら)公子支部長(63)=富山市上大久保・大沢野=が編集を担当した。ダウン症の長男がいる上原さんは「お母さんたちが一番不安な時期をサポートしたい」と話す。(社会部・荒木佑子)

 企画・制作したのは、東海3県に住むダウン症のある子の親らでつくるインターネット上の交流会「21+Happy」。メンバーと、一昨年まで日本ダウン症協会理事を長年務めた上原さんが交流する中で、企画が持ち上がった。

 「わが子がダウン症と告げられたショックは大きい。何か手助けできないかと考えた」と上原さん。自身も、長男の悠太さん(28)が生まれた当時は、母子手帳を開くたび、発育曲線から離れていくことに落ち込んだという。21+Happyの佐橋由利衣代表(44)=愛知県江南市=は「癒やしを与え、『大丈夫』と思ってもらうことだけを念頭に置いて制作した」と語る。

 「先輩」父母へのアンケートを踏まえて内容を錬り、育児体験を描いた漫画や、職場復帰の実体験、先輩父母のメッセージなどを掲載。成長の記録は「寝返りをした」「ひとりで立った」などの記念日として記入する方式にした。

 協会富山支部顧問で県立中央病院産婦人科部長の中島正雄医師(45)は「一般的な母子手帳にある成長の目安は、ダウン症の子には当てはまらない。この手帳ならば、個々の成長をゆっくり見守ってあげられる」と話した。

 無料だが送料100円が必要。申し込み方法は協会のウェブサイト(http://www.jdss.or.jp)に記載。PDF版のダウンロードもできる。 


■出生前診断が製作の背景
 手帳を作った背景の一つには、妊婦の血液から胎児のダウン症などを高精度で調べる新出生前診断(NIPT)が2013年に始まったことがある。

 検査は適切なカウンセリング体制があると日本医学会が認めた85施設で、臨床研究として行われている。4年間で4万4645人が受診し、陽性は803人。羊水検査で605人の異常が確定し、93%の567人が中絶を選んだ。

 事情や考え方は個々で異なり、選択も人それぞれだろう。ただ、上原さんは「ダウン症の子の実際の育ち方を知ってから判断してほしい」と願う。検査を受けた人にも、手帳を読んで理解を深めてほしいと考えている。

 県内では、富山大附属病院が今年1月からNIPTを始め、受診者は月4~7人。県内の出生数の約1%に当たり、先に導入した他県と同程度の割合という。認可施設がない石川、福井からも問い合わせがある。

 NIPT関連の研究として、厚生労働省の研究班が15年にダウン症のある人を対象に行った調査(有効回答852人)では、「毎日幸せに思うことが多いか」との問いに、8割の683人が「はい」「ほとんどそう」と答えた。

 上原さんは、書道で表彰を受けたり、音楽に夢中になったりする長男の悠太さんを見ていて「楽しそう」と感じる。「不幸とは思わないし、めちゃくちゃ大変でもない」

 富山大附属病院の産婦人科医で臨床遺伝専門医の伊藤実香医師(40)は「よく知らないことで漠然と恐れて、検査を受ける人もいるだろう。妊婦に限らず、男女とも大人になる段階で、手帳を目にする機会があるといい」と言う。国内では、超音波検査や血液検査「クアトロテスト」など従来型の出生前診断も行われている。深く考えずに検査を受け、予想外の結果に戸惑う人もいるため、県立中央病院の中島医師は「検査を受ける人は、しっかりカウンセリングを受けた上で行うべきだ」と指摘した。


◆ダウン症◆
 通常は2本の21番染色体が3本あるために起きる。知的な発達の遅れや心臓病などの合併症を持つケースが多いが、医療や教育の進歩で、普通の社会生活を送る人が増えている。名称は、最初に報告した英国のジョン・ラングドン・ダウン医師にちなむ。

北日本新聞社

最終更新:7/31(月) 19:45
北日本新聞