ここから本文です

【マレーシア】【製造業の未来】開発受託で日マ企業が連携 ASEANの自動車分野開拓

8/1(火) 11:30配信

NNA

 【ドリームエッヂ(上)/マレーシア】マレーシアの地場エンジニアリング企業ドリームエッヂ(DreamEDGE)は、3Dスキャナーや3Dプリンターなどを使ったデジタル技術を活用し、国内外のメーカーから製品の試作を含む研究開発(R&D)事業を受託している。2016年には、日本で自動車の開発受託を担う東京アールアンドデー(東京都千代田区)と提携した。両社はデジタル化技術の導入と人材確保を両輪で進め、東南アジア諸国連合(ASEAN)での事業拡大に挑む。(「製造業の未来」取材班)
 ドリームエッヂには約120人の若手エンジニアが在籍。開発対象となる部品や完成品のデザイン設計に使う3Dスキャナー、試作ができる3Dプリンターのほか、解析・試験用の機器やバーチャルシミュレーションシステムなどを首都圏3カ所の拠点に保有する。カイリル・アドリ最高経営責任者(CEO)は「新興国では専門技術を持つエンジニアが足りず、機材が社内にない製造業も多いが、向き合う世界市場の進化の速さは世界的な大手企業と同じ。そこを助けていくのがわれわれの役割」と説明する。
 アドリCEOはかつて、マハティール元首相が進めた「ルック・イースト(東方政策)」の下で日本に留学。そこで学んだ知識から製造業の技術開発分野にビジネスの活路を見いだし、07年にドリームエッヂを立ち上げた。
 これまで最も力を入れてきたのが、自動車向けビジネスだ。15年には国民車メーカーのプロトン・ホールディングスから、小型セダン「サガ」と「プルダナ」の2モデルについて、3Dスキャナーや3Dプリンターなどを用いたスタイリングから、企画、デザイン設計、試作の設計、量産設計、試作車の製造までの工程を受注した。
 3Dスキャナーを使ったデザイン設計は、従来と比べ少なくとも2週間程度の時間短縮が図れるほか、3Dプリンターは開発段階での金型コストを抑えることができる。現在は3Dプリンター自体が高額であるため、量産品では費用対効果が見合わないケースもあるが、アドリCEOは「今後性能が上がれば、開発速度はさらに速まりコストも下がる」とみる。3Dプリンターで金型を作る時代も遠くないとの見方だ。
 自動車調査会社のフォーイン(FOURIN、名古屋市)によると、自動車のエンジニアリング事業を展開し、実際に車両が商品化されたASEANの現地企業はドリームエッヂのほかに確認されていない。
 フォーインのアジア調査部の堀井崇志氏は「自動車の技術コンサルタントでは欧州系の名が知られているが、自動車メーカーから一部出資を受けているケースも多い。ドリームエッヂは独立系のエンジニアリング会社として事業を拡大している点もユニークだ」と話す。
 ■日本の労働力不足解消にもつなげる
 ドリームエッヂがプロトンの要請を受けた際に技術面で提携したのが、東京アールアンドデーだ。両社は相互の協力経験を踏まえ、ASEANでの事業拡大を目的とする合弁会社の東京アールアンドデー・アジアを16年に折半出資で設立した。
 東京アールアンドデーは、日本の大手自動車メーカーのほぼ全てから受注実績がある同分野の専業エンジニアリング会社。同社の菊地茂美アセアン事業部長によると、急速なデジタル化進展の一方、日本は深刻な人材不足に直面している。世界的に交通法規や環境対応が複雑化・厳格化したことで、市場に出る商品構成が細分化し、より多くの人材が必要になっているためだ。「どれだけデジタル化を進めても、安全で高品質な商品は人の手でCAD(コンピューター利用設計システム)を操作し、作り上げていかなければならない」(菊地氏)。
 両社は合弁を通じ、日本の専門技術とマレーシアの若い技術者を結びつけることで、人材不足の解消とコスト削減を進め、ウィン―ウィンの関係構築を目指している。菊地氏によると、現場での戦力となる技術者は少なくとも5年の経験が必要だが、マレーシア人技術者のコストはまだ日本の経験2~3年目のエンジニアを下回る。
 ■ASEANでは生産の効率化が主体
 菊地氏によれば、ASEANではまだ大型の受注実績はなく、日本国内での開発受託事業を、東京アールアンドデー・アジアとマレーシアのドリームエッヂ本社が連携して進めるケースが大半だ。ASEANでの受託がまだ少ないのは、メーカーの主要生産拠点が多いタイなどでも、現状は大半の現場が時間のかかる現地開発力の強化よりも製造に注力し、生産効率の向上を優先しているためだが、菊地氏は「今は日本に軸足を置きながらデジタル化対応人材の質を高め、来たるタイミングに向けて地盤を整えておきたい」と話す。
 <メモ>
 ドリームエッヂ:開発受託や試作のアウトソーシングなどを中心とするエンジニアリング部門のほか、電気自動車(EV)などを自社開発するイノベーション部門、アニメーション部門がある。エンジニアリング部門の売り上げが全体の70%。ユニークな地場エンジニアリング会社としてマレーシア国内で知られる。
 ※特集「製造業の未来」のドリームエッヂ(下)は2日に掲載予定です。

最終更新:8/2(水) 9:15
NNA