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デンと構えているわけには行かない――担当者に聞くau「新料金プラン」あれこれ

8/1(火) 7:40配信

ITmedia Mobile

 KDDIと沖縄セルラー電話は7月14日、「毎月割」がない代わりに月々の料金を抑えられる「auピタットプラン」「auフラットプラン」の提供を開始した。両プランに対するITmedia Mobile読者の関心は高く、7月31日現在も両プランに関連する記事がよく読まれている。

【ハイエンド端末でもおおむねおトクになるという試算】

 提供開始から直近3日間の実績では、端末購入を契機として両プランを選択した人が全体の8割程度になり、開始前の週よりもAndroidスマートフォンの売れ行きが4~5割増えたという。

 一方で、両プランに対しては「本当に安くなるのかイメージが湧きにくい」「なぜテザリング料金を取ろうとするのか」といった疑問の声も少なくない。

 そこで、筆者はKDDIの料金企画の担当者に新プランに関する疑問をぶつけてみることにした。対応してくださったのは、コンシューマーマーケティング2部の多田一国(かずくに)部長と、岡本輝幸料金制度グループリーダーの2人。果たして、どのような話が出てくるのか……?

●「格安スマホ」対策としての料金検討は「1年以上前から」

―― 新しい料金プランは、いつごろから検討していたのですか。

多田氏 料金制度担当の岡本(グループリーダー)を中心に、料金については切れ目なく検討をしています。

 サブブランド(自社グループの「UQ mobile」やソフトバンクの「Y!mobile」)や、MVNOのいわゆる「格安スマホ」が台頭してくる中で、「我々(KDDI)がデンと構えていても良いのか?」という観点で本腰を入れて検討し始めたのは、1年以上前からです。

 MVNOの初期段階では「SIMカードだけの契約」が主流で、どちらかというとリテラシーの高い人に(契約者が)限られていて、市場はそれほど大きくありませんでした。

 やがてY!mobileが出てきて、MVNOも端末のセット販売や一部では店舗まで出すようになりました。結果として、スマホへの移行に料金面で積極的ではなかった人たちが「手頃なら」と「流れ」でスマホを買うようになりました。この段階では、弊社は「サブブランドなどでセグメント分けをすれば良い」と思っていました。

 しかし、現在は次の段階に入りつつあります。「スマホを持っているけれど、ハイスペック端末にはこだわりがなく、しょっちゅう買い換える訳でもない」という人が「端末を買うときにだけ割引が付くよりもずっと料金が安い方が良い」と考え始めたのです。このような人たちは比較的年齢が高めで、デモグラフィック(属性)に関わらず格安スマホへの移行を検討する傾向にあります。

 このフェーズに入ると、市場に(「大手キャリア」「MVNOやサブブランド」といった)「切れ目」がなくなります。そこで「auとしても何かを考えなければいけない」ということで、いろいろ検討してきたのです。

●割引の「永続」には限界がある 差別化要素は「機種変更」

―― 新料金プランについて、新規契約者や機種変更者が新料金プランを選択した場合に、1年目に限って割引を増額する「ビッグニュースキャンペーン」を実施しています。「なぜ1年限定なのか?」という疑問の声も寄せられそうですが、どうでしょうか。

多田氏 いろいろ検討した結果、このようになりました。

 UQ mobileやY!mobileの「1980円」から始まる料金プランも、契約から1年間に限って月額1000円引きとしています。彼らも安くし続けることには限界があるのです。その点に関しては、我々も同様(永続的な割引の提供は困難)です。

 ただ、彼らはこれから新規を呼び込むことが重要で「新規だけ」でも良いが、我々は(他社への流出を防ぐ)「守り」も考えなければいけない。そこで一歩踏み込んで、機種変更のユーザーも対象にしました。

●iPhoneのキャンペーンは「検討中」

―― ビッグニュースキャンペーンですが、現時点ではiPhoneの新規契約・機種変更が対象外となっています。例えば、キャンペーン適用目当てにiPhoneからAndroidスマホに機種変更する人はいるのでしょうか。

多田氏 「たくさん」ではありませんが、(iPhoneからのキャンペーン目的の機種変更が)「少し」は出ています。

 ただ、我々もiPhoneが「未来永劫(えいごう)対象外」と言っている訳ではありません。田中(孝司社長)も言っていた通り、「something similar(何か似たもの)」を検討しています。

 「今すぐ」というのでなければ、とりあえずプランだけ変更して秋まで待つというのも手です。

―― そのようにした(iPhoneを使っていてプランだけ変えた)人も、それなりにいるのでしょうか。

多田氏 そこそこいます。

―― 「そこそこ」とはどのくらい。

多田氏 そこは非開示なのです。すみません。

岡本氏 端末をAndroidに変えて(キャンペーンを適用)という人はあまりいませんが、iPhoneのままプランだけ変えた人はそれなりにいます。

多田氏 NTTドコモさんの「docomo with」と違うところは、機種(購入)の縛りを設けていないところです。基本的には「分離プラン」なので、端末は何でも良いという前提に立っているからです。当然、iPhoneだけ除外され続けるのも変な話です。

 総務省さんの言葉を借りると「(割引や端末購入補助を)たくさん受けて機種変更を頻繁にしている人と、そうでない人」の差を是正する上で、一定のハードルを設ける必要があるので、7月14日以降に端末を購入した人については、2018年2月からピタットプラン・フラットプランとその他のプランとの行き来を機種購入時以外に行えなくする措置を取ります。

 それ以前に購入した古い端末を使っている(契約上ひも付いている)人については、完全に行き来自由です。ただし、毎月割をすでに適用している人については、新プランに移行する月額料金がむしろ高くなるケースがあります。その場合は慌てずに、毎月割の適用が終わってから新プランに移行すればおトクです。

●ほとんどのケースでは新プランの方が安い

―― ショップでは新プランをどのように訴求しているのでしょうか。

多田氏 (現時点で)新プランの対象となるAndroidスマホでは、ほとんどのケースにおいて購入当初から新プランの方がおトクであるため、新プランを前提に案内しています。

 もともと毎月割の少ない廉価な機種はもちろんですが、比較的ハイエンドな機種も新プランの方が月額料金面で有利です。ここに「Xperia XZs」と「Galaxy S8」を購入した場合のシミュレーション表を用意しています。ビッグニュースキャンペーンや「アップグレードプログラムEX」をあえて“適用しない”で計算していますが、ほとんどのケースで月額料金が安くなることが分かります。

●「48回払い」は意外と抵抗なし?

―― この試算において、新プランでは48回の分割払いを利用しています。新プランでも24回払いや12回払いも選べるのですか。

多田氏 もちろん選べます。一括払いでも購入できます。

―― 携帯電話に「48回払い」は正直やりすぎな気もするのですが、どうなんでしょうか。

多田氏 私個人としては48回払いを選ばないのは「もったいない」と思っています。

―― というと。

多田氏 確かに支払期間を「長くする」方向で検討することは普通しません。しかし、分離プラン(新プラン)の“弱点”を埋めるためには必要だったのです。

 「ハイエンド端末を高頻度に買い換える人」と「スペックにこだわらず長期間同じ端末を使う人」のギャップを埋めるために新プランが生まれた訳ですが、単純にギャップを埋めようとすると、「端末代金まで含めると月額料金が高くなる」という問題が生じてしまいます。「新料金プランでは端末が買いづらくなる」問題を乗り越えない限り、新プランを出しても意味はないのです。

 ドコモさんのように「端末を長期間買い換えない人に限る」「廉価端末に限る」といった方法ではなく、僕らはあくまでも全端末を対象にしたいと考えていました。「ハイエンド端末を短期間で買い換えたい」という新プランとはある意味で「二律背反」となるニーズにも応えないといけません。

 毎月割がない所に単純に割賦が上乗せされると、月々の支払い総額が増えてしまう問題があります。新プランでは月額料金をある程度値引いていますが、そこに従来通りの24回の割賦を重ねてしまうと割高になるケースも確実にあります。そこで、「月々の支払いを安くする」という観点から、月当たりの負担を「半減」するために「48回払い」という選択肢を用意したのです。

 ただ、48回払いという選択肢を作るだけでは、先ほども言った「ハイエンド端末を短期間で買い換えたい」というニーズに応えられません。「短期間」とは言いますが、調べてみると機種変更のピークは「24カ月目」前後にあります。「24カ月間支払えば、残りの支払いはなくても機種変更できるよ」という仕組みを、既存の「アップグレードプログラム」を改良した「アップグレードプログラムEX」として導入したのです。

 ですから、「48回払い」という言葉が一人歩きしがちではありますが、「48回支払い続けなさい」という意味ではありません。端末の返却が必要ではありますが、残りの支払いを免除した上で機種変更できる選択肢も用意しています。

 そういう意味で、48回払いのアップグレードプログラムEXは入った方が「おトク」なのです。

岡本氏 営業担当者からの話ではありますが、すでにアップグレードプログラムがあったせいか「48回払い」という支払い回数そのものに対するユーザーからのネガティブな反応はないようです。「使った分だけ払う」ということを分かっていただけているのだと思います。

―― 自動車には「残額設定型ローン」がありますが、イメージ的には同じですからね。

多田氏・岡本氏 まさしく、その通りです。

●テザリングオプション料金の「妥当性」は?

―― 弊社の新プランに関する記事への反応を見ると、「なぜ『テザリングオプション』に料金が必要なのか?」という旨の意見をよく見かけます。auでは4G LTEのサービス開始当初からテザリングオプションを原則有料としています。一方で、NTTドコモでは一部大容量プランで有料化予定はあるものの、テザリングは基本的に無料で使えます(注:インタビュー日は大容量プランのテザリング有料化無期延期の発表前)。

 auが設定している「1000円」あるいは「500円」というテザリングオプション料金には、「妥当性」があるのでしょうか。

多田氏 正直な所、テザリングオプション料金の妥当性は図りかねている面があります。何が「正解」なのか図りかねている面もあるので、「当面無料」として様子を見ているところです。

 将来的にどうするのかは、まだ我々も決めていない。

―― (将来に向けての)議論はしているのですよね。

多田氏 もちろんです。

―― PCのOSアップデートはさておき、PCとスマホの通信内容にはそれほど差はないと思います。その観点から「PC(テザリング)通信だけ別料金を取る必要はない」と考える人も少なくありません。

 一方で、auの「LTEフラット」向けのテザリングオプション(月額500円・最大2年間無料)のように、通信容量の追加(注:LTEフラット用テザリングオプションを有料利用している場合、月間通信容量が500MB増えて7.5GBになる)といった特典があるのなら支払う意味を見いだす人もいるかもしれません。

 何らかのメリット(特典)を付けて、有料サービスとして維持する方向性は考えていないのですか。

多田氏 LTEフラット用のテザリングオプションにおける「500MB増量」は、ある意味で「苦肉の策」でした。

 一方で、データ定額20/30やauフラットプランは料金的に「踏み込みす過ぎ」な面が相当にあります。正直に言えば、安くした分のバランスを取るために1000円なり500円なりのテザリングオプション料金を「設定」したというところもあります。

 今後のテザリングオプションのあり方を考える上で、「インセンティブを与えた上での有料制維持」は、選択肢の1つにはなるかもしれません。

―― 先ほど、大容量プランが「料金的に『踏み込み過ぎ』」という話がありましたが、大容量プラン契約者がテザリングをより多く使うという有意なデータはあるのでしょうか。

多田氏 テザリングを良く使うのは、井上さんのようなご職業の方(ライターや編集者)など、一部に限られます(笑)。容量選択の大小を問わず、マス(多くの人が使う)なサービスではありません。

●持ち込み新規は「増えていない」

―― 新料金プランに話を戻しますが、ビッグニュースキャンペーンは「新規契約」が対象ということで、端末をauショップに持ち込んで新規契約が増える可能性があると思います。新プランの提供開始後、SIMロックフリー端末を含めた「持ち込み新規」は増えているのでしょうか。

多田氏 (持ち込み新規での新プラン契約者は)ゼロではないですが、端末購入を伴うものが圧倒的に多いです。

 ただ、ご指摘の通り、新プランは分離プランなので、従来プランと比べると持ち込み新規契約でもメリットがあります。

―― SIMロックフリー端末では、ネット接続サービスでより割高なPC・ルーター向けの「LTE NET for DATA」(月額500円)しか使えないという問題もあります。より割安な「LTE NET」(月額300円)をSIMロックフリー端末に開放するか、LTE NET for DATAの料金を値下げすることは検討していないのですか。

多田氏 この点については、我々の意識的に「置き去り」にしてしまった面もあります。料金を低廉にするという観点では、「LTE NETをSIMロックフリー端末で使えるようにする」のも「LTE NET for DATAを300円に値下げする」のも結果的には同じです。

岡本氏 今後、SIMロックフリー端末でのネット接続をどうするのかは検討します。

●新プランは今後「より多くなる」と見込む

―― 今後、毎月割付きのプランと新プランの契約者数に占める割合はどのくらいになると見込んでいますか。

多田氏 詳細は控えますが、今後は圧倒的に新プランが選ばれると考えています。心情的に保守的な人が、従来通りの(毎月割のある)プランを選択する、という見立てです。

 新プランは既存プランの新規受け付けを「停止」しても構わないような作りになっています。「ピタットプラン」については既存プランにはない料金構造なので分かりづらい面がありますが、先ほどの料金比較を見ても明らかな通り、平均的な使い方であれば従来よりも安くなると見込んでいます。

―― 1人1人の契約者の利用動向を踏まえた料金シミュレーターを作るのは難しいでしょうか。あれば参考にできると思うのですが。

多田氏 確かにその通りですが、お客様ごとに見た時に「次の6カ月間」の使い方は「この6カ月間」とは異なる可能性がある。なので、今回示した試算のように「全ユーザー平均するとこうなる」というモデルを示すことを考えています。

 記事が掲載される8月1日、KDDIは平成29年度第1四半期決算を公表する。新料金プランの影響は次の第2四半期決算で顕著になってくるものと思われるが、この決算説明会でも「今後の見通し」として新料金プランにまつわる質問が多く集まるだろう。

 「田中プロ」こと田中孝司社長はどう説明会を乗り切るのか、注目したい。

最終更新:8/1(火) 22:56
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