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角谷淳志が沸かせた4度目タイトル戦…練習拠点失うも王座への執念失わず

8/2(水) 16:03配信

スポーツ報知

 7月28日にエディオンアリーナ大阪第2競技場で行われた日本ライトフライ級(48・9キロ以下)タイトルマッチ10回戦は、見応えのある試合だった。

 両選手とも32歳。王者・久田哲也(ハラダ)はプロ15年目の今年4月に王座初挑戦で初獲得した苦労人だが、挑戦者の同級1位・角谷淳志(かくたに・あつし、金沢)はタイトル挑戦4度目だった。自衛隊を経て2008年プロ入り。10年度フライ級(50・8キロ以下)全日本新人王だが、敵地メキシコでの世界挑戦を含む過去3度のタイトル戦は全敗。今回に懸けていた。

 ゴングが鳴ると、角谷は挑戦者らしく積極的に前へ出て、スロースタートだった久田に小気味よく右のフックやストレートをヒット。王座への執念を見せ、主導権を握った。5回終了時、ジャッジ3人の採点が公開され、2―1で角谷リード。初奪取の予感が漂い、故郷・兵庫県篠山市から駆けつけた応援団は沸き返った。

 角谷はリング外のドタバタを乗り越え、リングに立っていた。久田への挑戦が決まった5月、練習拠点を失った。所属の金沢ジムが多額の借金を抱え、大阪市生野区のジム建物を手放していたのだ。元世界王者の徳山昌守、石田順裕の両氏らを輩出した金沢ジムの衰退が、現役選手を直撃した。

 それでも角谷の心は折れなかった。タッグ7年目の冴城辰弥(さえき・たつみ)トレーナー(41)が他ジムに頼んで、練習させてもらった。角谷陣営は練習場所やスパーリング相手を求めて日々転々とし、念願の初タイトルを目指した。

 まさに「昨日の敵は今日の友」で、12年に角谷の挑戦を受けた元日本スーパーフライ級(52・1キロ以下)王者・帝里木下(ている・きのした)が所属する千里馬神戸ジムなど、京阪神の複数のジムが角谷を受け入れてくれた。「お世話になった方々のためにもチャンピオンベルトという形で恩返ししたい」。角谷と冴城トレーナーは、強い決意で今回の久田戦に臨んだ。

 だが試合は後半、流れが変わった。7回、エンジンが掛かった久田の左フックが角谷の顔面にヒット。たまらずダウンした角谷。立ち上がり、ファイティングポーズを取ったが「パンチを利かされて足にきていた。ダメージが抜け切らなかった」。続く8回、連打を浴びたところでレフェリーに止められた。TKO負け。4度目の挑戦もかなわなかった。

 試合後、昨年結婚した妻・章子さん(28)や応援団にねぎらわれた角谷は「相手が上だった」と潔かった。冴城トレーナーも「攻めてKO負けなら仕方ない。現状でベスト以上のファイト」とたたえた。

 去就について角谷は「ちょっと休んでから考えます」と保留したが、進退はともかく、有り得ないようなアクシデントを乗り越え、好戦を繰り広げた角谷と陣営には胸を張ってほしい。(記者コラム・田村 龍一)

最終更新:8/2(水) 16:03
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