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《ブラジル=コラム「樹海」》自殺する勇気があるなら一度、日本を出てみたら?

8/1(火) 5:50配信

ニッケイ新聞

 残業月200時間を超える過重労働に耐えきれず、今年3月に自殺した建設会社の男性社員のことが、日本で先日報じられたのを読んで驚いた。残業だけで200時間なら、月25日間働いたとして残業だけ毎日8時間だ。なんと一日16時間労働…、ブラジルなら「奴隷労働」と訴えられる。

 7月25日付共同通信には、《(日本の)年間の自殺者は、16年は2万1897人と7年連続で減少。03年の3万4427人と比べると減っているが、自殺死亡率は他の先進国と比べて依然として高い》との記事があった。
 政府は《自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を今後10年で30%以上減らすとの数値目標を掲げた》とも。

 これらを読んで、13年10月18日付本コラムで、こう書いたのを思い出した。
《日本の自殺者が毎年約3万人と聞くたびに、「決行する前にぜひ途上国旅行を薦めたい」と思う。先進国や観光地ではなく、「普通の世界」を見た上で考え直してほしいと。ブラジルでは毎年4万人が交通事故死し、日本の8倍だ。銃犯罪死亡者に至っては3万人で、比較すらできない。贅沢なはずの環境の中で自ら命を絶つ3万人がいる一方、同じ数が銃で撃ち殺される国もある訳だ》

 今もまったく同じ気持ちだ。

 非人間的な労働環境を強いられた時に、「冗談じゃない。いったん日本を出よう」と思ってもいいと思う。人生にはいろいろな選択肢があるべきだ。海外移住もその一つではないか。

 だいたい200時間残業を強いるような労働環境からは、逃げて当然だ。じっと耐えて思いつめるより、何も考えずに日本を出る生き方があってもいい。

 「自分が外国で生活できるだろうか?」という不安は当然浮かぶ。だが、南米移民の大半は留学生や駐在員、研究者のようなエリートではなく、「大衆」という言葉がふさわしい人たちだった。零細農家の次男、三男が一番多く、移民船で到着して「サントス(港)でヨーイドン!」とばかりに人生を見事にやり直した。

 とはいえ戦前なら戦時体制化する日本から逃げた左派活動家、公然と徴兵逃れを自称する者もいた。移民初期にまでさかのぼれば、明治期に宗教迫害を受けた隠れキリシタン、被差別階級の人も数えきれない。外国に居場所を探すのは世界史的に見て普通のことだ。

 今の日本は治安も、物質的な豊かさも、経済の安定性も、社会保障制度も世界最高と言っていい。恵まれ過ぎていて離れる気すら湧かないのかも。だが、全ての点で満点である訳ではない。世界最多クラスの自殺者がいる現実が示すのは、不満不平もあるということだろう。

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最終更新:8/1(火) 5:50
ニッケイ新聞