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築地跡地は売却せよ 官製再開発は必ず失敗する

8/1(火) 14:00配信

ニュースソクラ

「東京国際フォーラム」の失敗に学べ

 小池百合子都知事が、都議選の公示直前にぶち上げた「築地は守る、豊洲は活かす」という両立スキームに、無理があったのではないか。

 東京都は、来年の春から夏を目途に、卸売市場を豊洲に移転する方針のようだが、豊洲市場敷地内で観光客向けの「千客万来施設」を運営するはずの民間業者が、築地再開発の中身次第では事業から撤退する、と言い出し、都をあわてさせている。

 食文化の発信がテーマの「千客万来」は、江戸の街並みを再現したモールや、24時間営業の温泉、ホテルなどから成る計画。小池知事は、築地跡地を再開発し「食のテーマパーク」機能も持たせるとした。競合しそうな豊洲の業者が、不安になるのは当然だ。

 先週の記者会見で小池知事は「計画通りお進めいただくよう丁寧に説明し、ご理解いただく」と言うが、築地再開発の中身については「民間のアイデアを募っていく」止まり。築地と豊洲で「相乗効果を」とも言うが、具体論はない。両地区は近いといえども徒歩圏ではないし、人間の胃は一つだ。こんな説明では、豊洲に賭けた業者は、納得できまい。

 そもそも、築地市場跡地売却の規定方針を覆し、都が保有したまま再開発するという小池スキームに疑問がある。豊洲市場で想定される赤字穴埋めに、築地の運用益を充てるというが、官製再開発が成功する保証はなく、都は長期にわたり築地という資産の保有リスクを負うことになる。

 都議会100条委員会で豊洲移転の経緯を検証して得た教訓は「お役所仕事で事業をやると、ろくなことにならない」だろう。候補地選定ですったもんだ、工期が延びに延び、6000億円もの巨費を投じて出来上がった施設の安全性が問われたが、責任の所在が不明確で、だれ一人責任を取らない。

 小池知事は、銀座の隣で、浜離宮と向かい合う築地の「ロケーションの良さ」を強調する。一等地だから官製再開発事業も成功する、という認識なら甘い。

 今年が、オープン20周年のコンベンション施設「東京国際フォーラム」は、東京駅にも銀座にも近い旧都庁跡の超一等地に、設計を国際コンペにかけ、1600億円もかけて建設したが、赤字をたれ流した。

 石原慎太郎知事の時代に株式会社(都が51%出資)にして何とか黒字化したが、その稼働状況が到底、超一等地に見合わないことは、同フォーラムのホームページで稼働状況を見れば分かる。旧都庁跡も、民間に売却した方が、はるかに有効に使われたはずだ。

 築地跡地は、やはり当初案通り民間に売却し、豊洲建設費の借金返済に充てるべきだ。「食のテーマパーク」「食のワンダーランド」と言うが、卸売市場は豊洲に移転しても、場外市場は築地に残る。食の築地ブランドは、ワンダーランドの資格十分の場外市場が引き継ぐ。余計な官製施設は要らない。

 築地再開発は、競争入札で外国資本も含め最高値で市場跡地を落札した業者に、コンセプト作りから任せればよい。大金をつぎ込み自己責任でリスクを取る民間企業は、有効活用を必死で考えるはずだ。もちろん築地ブランドも最大限活かそうとするだろう。

 小池知事は「民間の知恵を借りる」と言うが、民間は自らリスクを取る案件だからこそ、最高の知恵を絞り出す。都のために良い知恵を、は甘えだ。

 これは豊洲活用にもあてはまる。単に卸売市場としてではなく、冷凍・冷蔵機能を活かした総合物流拠点を目指す方向性は正しい。その実現に、一部空港などで試行されているように、豊洲市場一帯の運営を民間業者にまかせる「公設民営」を考えてはどうか。法改正が必要なら、都が国に働きかければよい。

 「千客万来」業者の“もの言い”は、都議選直前に拙速でまとめた小池スキームの難点を、鋭く衝いている。選挙は終わった。冷静に再考する時だ。

■土谷 英夫:けいざい温故知新(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:8/1(火) 14:00
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