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萩原朔太郎「月に吠える」刊行100年 創作過程と精神 追う 前橋文学館で記念展

8/1(火) 6:02配信

上毛新聞

 前橋市出身の詩人、萩原朔太郎(1886~1942年)の第一詩集「月に吠(ほ)える」の刊行100年を記念した特別企画展が群馬県の前橋文学館で開かれている。初版本や直筆原稿、書簡など約150点を展示。「日本近代詩史の一つの事件」とも称される詩集が生まれる過程を追うとともに、同詩集が今日、どう捉えられているかに焦点を当てている。

■内務省の検閲

 口語自由詩を確立した朔太郎の第一歩となる同詩集は17(大正6)年2月刊行で、当初から反響を呼んだ。収めたのは14年9月から約2年半に発表した55編。初版は内務省の検閲で性的表現に問題があるとして「愛憐」「恋を恋する人」の2編が削除させられた。

 企画展は削除に関するエピソードとともに、朔太郎が同市の歌人、小見可憐に贈った無削除本(県立神奈川近代文学館蔵)や2編の直筆原稿を紹介。カバー表紙の「夜の花」を描いた田中恭吉や、装丁を手掛けた恩地孝四郎を取り上げ、「詩画集」としての側面も伝えている。

 「此頃僕の内部で何かえたいのわからぬ奇異な光が受胎して居る。そいつがだんだんあばれ出す」(「ノート一」、14年9月ごろ)。後に「浄罪詩篇ノオト」と名付けられるノートや書簡には病気や疾患、懺悔、光といった言葉や、思いを寄せた女性を巡る出来事が記され、詩作していた頃の精神状態がうかがえる。

 「詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである」。朔太郎は序文にこう記した。

■映像、美術で表現

 刊行から1世紀をへた詩を現代人はどう捉えるのか。同館が県内外のアーティストに依頼した映像や美術作品も並ぶ。同市出身の美術作家、林麻依子さんが手掛けたオブジェの猫は、ぴんと張った尻尾の先に浮かぶ三日月を連想させる。

 アニメーション作家、白石慶子さんの作品「蛙の死」は萩原朔美館長の朗読で、セピア色の画面に子どもの手が次々と現れる。折笠良さんの作品「地面の底の病気の顔」はにじんだような文字が生き物のように揺らぎ、宇宙へのつながりを感じさせる。

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最終更新:8/1(火) 6:02
上毛新聞

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