ここから本文です

水はゴクでなくゴクゴク飲め!細かすぎるから伝わる、競歩日本“金メダル”への指導法

8/1(火) 12:05配信

スポーツ報知

30度超…給水改善

 20年東京五輪の陸上で金メダルの最有力候補に挙げられるのが、男子20キロ、50キロ競歩だ。50キロは16年リオ五輪で荒井広宙(29)=自衛隊=が日本勢初の銅メダル。20キロも、初代表の松永大介(22)=富士通=が7位入賞を果たした。日本陸連の今村文男・競歩五輪強化コーチ(50)=富士通コーチ=は、金メダルへ「速さよりも強さ」を掲げ、失格しにくい歩型とメンタル面、暑さ対策に注力する考え。細部にこだわる「心・技・体」の充実で、五輪Vの夢を追いかける。(細野 友司)

 3年分の歩みが、東京の金につながる。12年ロンドン五輪後から競歩強化のトップに立つ今村コーチは「リオまでの取り組みを振り返ると、心の乱れや体力面の部分で、肝になる技術を支えられない選手も多かった。技術を支えるフィジカル、メンタルの融合性を常に持たないといけない」と課題を挙げた。リオ男子50キロの銅、20キロの7位入賞で土台は作ったが、あくまで通過点。表彰台の中央へ、さらに細やかな強化を進める考えだ。

 真夏の東京五輪で最重要視されるのが、30度超の暑さに対応する「体」。22度前後で開催されたリオでも、課題の影は見えていた。「給水の回数を取れていても、1回あたりの摂取量が少ない反省点があった」。見た目は給水が万全でも、1回あたりに必要な100~120ccを飲めず、結果的に脱水でパフォーマンスが落ちるケースがあった。もともと給水の総量は測定していたが、今季から1回ごとの量も測り「ゴク…じゃなくて、ゴクゴク、と飲まないと足りない」と指導。リオ20キロで42位に沈んだ高橋英輝(24)=富士通=は「給水量が多くないとは言われる。あまり飲めない方なので、飲む力も必要だと思う」と話す。

安定性で失格回避

 暑熱対策では、汗の成分組成にまで気を使う。「選手の汗の成分を調べてみると、ナトリウムを失う人がいたり、カリウムが多かったり、個人差が大きい」と今村コーチ。失いやすいミネラルをあらかじめ理解すれば、給水ボトルの中身やサプリメント、食事で補える。来季からは、夏季に東京近郊などでの合宿も計画。「レース展開や歩型は修正がきくが、暑さは想定外ということがあるので、『万全』はないと思っている。何が起こるかわからない。その中で、最小限にダメージを抑えたい」と力説した。

 「技」の対策も細かい。ロス・オブ・コンタクト(両足が同時に地面から離れる)とベント・ニー(接地で膝が曲がる)の反則3回で失格。国際審判員から「歩型の基準」とされる03~07年世陸3連覇のペレス(エクアドル、引退)らを手本に、失格せずにペースアップして歩ける形を模索している。今村コーチは「現在のトレンドは、ピッチよりもストライド。(脚を)速く動かさず、ぶれない。前後の動き、姿勢の安定性も求められる。荒井君が、一番トレンドに近い」と分析している。

 ただ、その荒井であっても現状に満足はない。「腕振りで右肩が内側に入りやすい癖があるので、なるべく左右対称にとか、改善点を挙げればキリがない。人が判定するので、誰が見ても合格点をもらえるような万人受けするフォームを作らないといけない」と細かい努力を重ねている。競歩は20キロで1時間半、50キロなら4時間近い消耗戦。淡々と、同じ動きを繰り返す戦いだ。正しい歩型を長時間継続できる「心」のタフさを養うため、必要に応じてメンタルの専門家を招聘(しょうへい)し、サポートする計画も浮上している。

 今月のロンドン世界陸上へ、6月には志賀高原(長野)、7月には千歳(北海道)で最終調整。リオ後の取り組みを、まず一度形で示す。20キロ、50キロともに銀メダル以上なら五輪・世界陸上を通じて日本初。松永は「東京で良い色のメダルを取るための準備として、今回メダルで道しるべにしたい」。緻密な土台の上になら、金メダルの夢も描けるはずだ。

 ◆今村 文男(いまむら・ふみお)1966年11月5日、千葉・柏市生まれ。50歳。八千代松陰高―東洋大。卒業後は富士通などで活躍し、91年東京世界陸上50キロで日本勢初の7位入賞。92年バルセロナ、00年シドニー両五輪代表。04年に引退し、12年ロンドン五輪後に日本陸連競歩部長(現・五輪強化コーチ)に就任。

1/2ページ

最終更新:8/1(火) 12:05
スポーツ報知