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注目集まる「アウトサイダー」本 福山・櫛野さん 表現者の魅力に迫る

8/1(火) 21:04配信

山陽新聞デジタル

 世間からのスポットライトを浴びることなく、独自の創作活動に打ち込む全国の表現者たちを発掘し、日本唯一の「アウトサイダー・キュレーター(作品収集・展覧会企画者)」と名乗る櫛野展正さん(41)=広島県福山市=が今年4月に出版した「アウトサイドで生きている」(タバブックス)が注目されている。櫛野さんは岡山市などで出版記念トークを開いたり、創作現場を訪ねるツアーを企画したりして、身近にいる表現者たちの魅力を伝えようとしている。

 櫛野さんは岡山大教育学部を卒業し、2000年から福山市の知的障害者施設で入所者の創作活動支援に携わった。施設を母体に12年、障害者ら美術教育を受けていない人の作品「アール・ブリュット」を扱う専門美術館「鞆の津ミュージアム」(福山市鞆町鞆)が開設されると、キュレーターを任された。

 多彩な展覧会を企画するうちに、障害者でないために福祉関係者も目を向けず、人知れず制作を続ける表現者をもっと取り上げたいという思いを募らせ、昨年4月に独立して個人ギャラリー「クシノテラス」(同市花園町)を構えた。愛好者と一緒に表現者の自宅や活動場所を訪問するツアーも、福山市や大阪府などで数回行っている。

 初の単著では、これまでに出会った「アウトサイダー・アーティスト」の18人を紹介した。ごみ袋に入って自撮り写真を撮影する89歳の女性=熊本県、アニメの少女キャラクターのグッズを全身にまとう「武装ラブライバー」の20代男性=千葉県=ら、他にまねのできない表現を重ねる人たちの人生に迫っている。

 岡山、広島県内にもさまざまな表現者がいる。6月23日に岡山市で開いたトークでは、著書の中から、ホームレス生活を送る表現者たちを話題にした。

 JR岡山駅周辺で路上生活する男性は、着替えや食料など必需品を全てシャツやセーターの中にしまい込み、おなかがはち切れそうに膨らんでいるため、周囲の人たちから「爆弾さん」と呼ばれている。福山市の芦田川河川敷で野宿する60代男性は、堤防土手の草を刈り込んでミッキーマウスやチョウの図案を浮き上がらせ、市民の目を楽しませている。

 2人のような表現者は展示できる作品を制作するわけではないが、櫛野さんは「自分の人生の目的は何かと考える時、彼らのいちずな生き方がヒントになるのではないか」と話している。