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米スーパーに課題、広すぎる食品売り場

8/1(火) 15:57配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 米国の小売店舗で食品売り場がこれほど広い面積が占めたことは一度もない。実際、広すぎる。

 消費者の行動が週に一度のまとめ買いから軽食や総菜の購入にシフトする中、米国では小売業者の大量出店で食料品の販売スペースが供給過剰に陥っている。この需給のミスマッチで小売業の売上高は伸び悩んでおり、一部の業界幹部や銀行、専門家はいずれ閉鎖の波がやって来るとみている。

 商業不動産会社コスター・グループによると、人口1人当たりでみた食料品の小売りスペースは昨年、過去最高の4.15平方フィート(約0.38平方メートル)を記録、1950年に主要な小売りチェーンで食料品に割り当てられた面積の約30倍となった。もっとも当時は今ほど膨大な数の大規模食料品チェーンストアはなく、多くの米国人が家族経営のような小さな店で食品を買っていた。

 しかし近年では、食料品の販売拡大はさまざまな種類の小売業店に広がっている。食品スーパーは2008年の不況後、売り上げを伸ばす手段の一つとして店舗の開設を加速した。同じころ、会員制のチェーンストアや1ドルショップ、ドラッグストア、さらにはガソリンスタンドまでが来客数を増やして利益を拡大しようと生鮮食品の販売を増やした。

 スマート・アンド・ファイナル・ストアーズのデービッド・ヒルツ最高経営責任者(CEO)は「誰もが食料品事業に参入している」と話す。同社はカリフォルニア州に本社を置く倉庫型食品小売業者だ。

 ファクトセットによると、食品小売店では2013年以降、従来型チェーンストアに対する顧客ロイヤリティが既存店売上高を少なくとも3%押し上げていたが、2016年は横ばいとなった。競争激化で今年も横ばいが予想されている。コスターの調査ディレクターのスザンヌ・マルビー氏は「私たちが買える量には限りがある」と指摘した。

格安スーパーとネット通販の挟み撃ち

 競争が激化する中、食品小売業界は低価格スーパーとインターネット企業の挟み撃ちにもあっている。拡大を続ける欧州の格安スーパー、アルディとリドルは予算を重視する顧客を取り込めるとみて、米国でシェアを競い合う。一方、アマゾン・ドット・コムなどのネット企業は比較的所得が高い顧客に狙いをつけている。アナリストによると、その過程で割を食う可能性が最も高いのは地域型のスーパーや、クローガーおよびアルバートソンズといった従来型のスーパーだという。

 小売業コンサルティング会社カンター・リテールのアナリスト、ダイアナ・シーハン氏は「従来型のスーパーが問題解決のために新規店舗を開設し続けることはできないと気付いた」と話した。

 一般の小売業界がネット通販に顧客を奪われ、実店舗の面積を減らしたのと同じように、一部の食品スーパーも既に店舗削減を始めている。

 従来型スーパーとして店舗数と売上高で米国最大のクローガーは今年の新規出店を100店舗から55店舗に削減、設備投資は10億ドル(約1100億円)近く減少した。マイケル・シュロットマン最高財務責任者(CFO)は実店舗への投資を今後も減らすとの見通しを示したばかりだ。スマート・アンド・ファイナルは昨年、37店舗を新設したが、今年は19店舗にとどめる予定だ。

 ウォルマート・ストアーズは2018年度にスーパーセンターと比較的規模が小さい店舗を合わせて55店舗を新設する予定。今年1月までの1年間に開店した132店舗から大幅に減らした。広報担当者によると、おかげで数十億ドルをかけて既存店舗を改装したりネット注文事業を拡大したりすることができたという。

顧客層の縮小と市場の飽和

 食品小売業者は顧客層の縮小という問題も抱える。米国の人口が伸び悩んでいるだけではない。ミレニアル世代やベビーブーム世代は米国で特に人口が多いグループだが、非常に多くの食品を買っているわけではない。

 32歳のリア・スタインバーグさんは「フルタイムで働いて、さらに自分で食事を作るだけのエネルギーはない」と話す。ソフトウエアのエンジニアで現在失業中のスタインバーグさんは最近、ミネソタ州セントポールの実家に戻った。働いているときは健康的な食事がなかなか作れなかったと言い、今は仕事探しをしている間に、家族に買い物や料理をしてもらっている。

 消費者は非従来型の選択肢への関心をますます高めている。全米コンビニエンスストア協会によると、昨年のコンビニエンスストアでの調理済み食品や飲料、その他の食品サービスの売上高は730億ドルと、2010年比で72%増加した。食品や飲料などが売上高に占める割合は1ドルショップで3分の2、ドラッグストアでは約3分の1に達している。

 バークレイズキャピタルによると、食料品をインターネットで買いやすく、人口密度が高い地域のスーパーは特に今後の業界再編の対象になりやすい。同社は米国で上位50の食品市場のうち38で人口1人当たりの食料小売店の数が飽和状態を超えているか、来年にも超えると予測している。

 バークレイズのアナリスト、カレン・ショート氏は「全員が拡大をやめるべきだ。そうすれば業界全体が今よりはるかに健全になるだろう」と話した。

By Heather Haddon and Julie Jargon