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鉄壁の援護と順位入れ替え、両陣営のチームプレイが光ったハンガリーGP【今宮純の視点】

8/1(火) 10:23配信

オートスポーツweb

 2017年F1第11戦ハンガリーGPは、ステアリングトラブルを抱えながらセバスチャン・ベッテルが優勝。キミ・ライコネンはメルセデスの攻撃に耐えきり見事2位でフィニッシュした。ニッポンのF1のご意見番、今宮純氏がハンガリーGPを振り返り、その深層に迫る──。 

F1第11戦ハンガリーGP 2位キミ・ライコネンを勝者セバスチャン・ベッテルが祝福

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 鉄壁な援護に徹した2位キミ・ライコネンにセバスチャン・ベッテルは感謝。残暑見舞いに彼が好きなウオッカをたくさん贈らねば……。フェラーリ起死回生『83回目の1-2フィニッシュ』、この大量43点は二人で二等分してもいいくらいだ。

 メルセデス勢の攻撃に耐えつつすべてのコーナーで全く隙を与えなかったベテラン。その苦しさを訴えるリアルな声がラジオ無線から流れた。勝てるマシンの手ごたえがありながらチームメイトに仕掛ける突撃は慎み、価値ある2位をチームにもたらす。

 ハンガリーGP出走15回で表彰台8回(1勝と2位6回)、これはミハエル・シューマッハ以上の最高記録。毎年母国から多くのファンがやってくるのもこの実績があるから。

 ピットで見物するフェラーリ首脳陣(会長や顧問)はこの戦いぶりをどう受けとめたか。予選1-2、決勝1-2、イギリスGP“惨敗”を払拭する“完勝”はベテランのチームプレイによるものだった。

 それがはっきり分かったのがスタート。おそらくベッテルとライコネンはあらかじめ互いにフォーメーションを決めていたのだろう。

 有利なPPからベッテルがダッシュ、そのテールにつきライコネンはスリップストリーム効果を使う。そしてベッテルは理想的な右イン側に振る。ライコネンは逆に左アウト側へ。長い1コーナーまで“ブロックライン”を形成、2列目メルセデス勢を封じ込む。それは成功。

 もう一つの狙いもあった。メルセデス勢を封じてしまえば、3列目レッドブル勢がすかさず来るはず。案の定、ダニエル・リカルドはバルテリ・ボッタスを捕らえ、血気盛んなマックス・フェルスタッペンが2コーナーに突進。


 もしあの同士討ちが無ければ、フェラーリ1-2、さらにレッドブル3-4進出、メルセデスはいきなり大苦戦に陥った……。

 クルマを運転する方ならば、ステアリングが左下に偏ってしまったベッテルの気持ちが分かるかもしれない。僕自身、昔ミニ・クーパーで縁石をヒットしたせいでハンドルのセンター・ポジションが狂い、直進時に左側に切った状態で走らねばならなかった経験がある。ハンドル操作感覚がずれたが、カーブを曲がるたびにしだいに慣れなんとか修理工場に向かった。

「かまわず走れ、でも縁石は使うな」とピットからベッテルに指示。それも分からないではない。レース中に修理などできないから、縁石走法で受ける衝撃を避けてくれと。彼のペースがやや不安定になるにつれて2位ライコネンが追いつく。

 後ろから見ていて「セブはおかしい(遅い)」と分かり、それをチームに訴える。ここが判断すべきところだ。ライコネンの後方にはボッタスに代わってルイス・ハミルトンが急接近中。さあどうする。


 正しい判断が下された。トラブル持ちのベッテルを2番手に下げ、健康なライコネンを先頭に出したらどうなったか。猛追するハミルトン相手にベッテルが2位を守るのは至難の業、マシンバランスもタイヤ状態もベストなライコネンなら対応可能だ。1-2編隊そのままで行け……。

 がっちり後ろでガードしてくれるキミがいるから、不安なくコクピットでステアリング操作に集中できたセブ。しだいにペースが上がり勝ちとることができた。ピンチを切り抜けたこの1-2によって、メルセデスとのギャップを39点に縮めたフェラーリ。危機管理力の賜物である。

 一方でメルセデスの判断も正しかった。3位ボッタスを46周目に下げ、このコースに強いハミルトンを前に出した。チームオーダー遂行に二人は応じたものの遂にライコネン攻略ならず。

 すると最終ラップできわどくもハミルトンはボッタスに3位をお返し、フェルスタッペンを0.423秒差で抑えて自ら4位に。1分30秒台までペースダウンして「約束」を守ったハミルトン、昨年までなら考えられなかった行動だ。ルイスとバルテリも真の『チームプレイヤー』に徹したハンガリーGP、両チームの判断力が印象的だった。



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