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【マレーシア】【製造業の未来】数年内の「4.0」対応は必須 労働力不足背景に、政府も促進

8/2(水) 11:30配信

NNA

 【ドリームエッヂ(下)/マレーシア】マレーシアの地場エンジニアリング企業ドリームエッヂは、自動車分野を中心とする開発受託以外に、フランス企業と組んで航空・船舶分野でも事業を拡大する。次のミッションはマレーシアで予測される外国人労働者の不足に伴う現場の自動化、近代化要請への対応だ。マレーシア企業がモノのインターネット(IoT)を駆使して工場や生産設備をつなぎ、データを活用する「インダストリー4.0」(第4次産業革命)への対応を実現するための支援を強化する。(「製造業の未来」取材班)
 ドリームエッヂはこれまで、デジタル化技術を生かして家電メーカーの部品や商品ケースの設計・開発、電力会社の過去の部品再現などをマレーシアで手掛けたほか、タイ、韓国、台湾などでも事業を展開してきた。さらに東京アールアンドデーとの合弁設立に加えて、航空・船舶分野への事業拡大に向け、フランスのインジェリアンス(Ingeliance)とも提携した。
 スランゴール州サイバージャヤのドリームエッヂ本社では、東京アールアンドデーから出向している日本人駐在員のほか、インジェリアンスのフランス人駐在員や、その他の欧米出身者も働く。カイリル・アドリ最高経営責任者(CEO)は「インジェリアンスとの提携を機に、トルコをはじめとする中東やフランスなどでの受注を視野に入れている」と語る。
 ■シーメンスとも提携
 また、マレーシア政府が企業にインダストリー4.0への対応を強く促していることを受け、近代化ソリューションの提供に力を入れ始めている。これまでの生産技術サポートのレベルを上げるため富士通と協力関係にあるほか、シーメンスとも提携した。
 マレーシアの製造現場は長期にわたり、出稼ぎ外国人による労働力に依存してきた。しかし「2020年の先進国入り」を目指す中で、政府は現場の外国人労働者依存度を引き下げて近代化を進める方針を強力に打ち出し、不法就労者の一斉摘発を始めるなど厳しい姿勢を示している。一方、今年10月に発表される18年度予算案では、インダストリー4.0に関する優遇策を打ち出す見通しだ。周辺のタイやベトナム、インドネシアと比較した場合にも、早い近代化が迫られている。
 ■「4.0」移行は様子見
 現時点では依然として、中国の生産拠点で既に取り入れられている自動化システムの移転導入などはみられるものの、本格的なデジタル化への変革事例は少ない。シンガポールのように近代化ソリューションを提供する地場エンジニアリング会社も、いまだ存在感は薄い。インダストリー4.0を啓発する政府機関主催のセミナーに参加した地場企業の幹部はNNAに対し「現場を近代化すべきだという政府の見解はもっともだと思う。しかし対米ドルでのリンギ安など逆風も多い市場環境では、結局様子見になってしまうのが現実ではないか」と語った。
 ドリームエッヂのアドリCEOは「国内で、コスト的にインダストリー4.0を全面適用できる地場メーカーはまだ少ない」としながらも、「近代化は一部であっても始めるべきだし、2~3年後には避けられないと見ている。ドリームエッヂでは最新のハードウエアをどうカスタマイズして現場に導入し、効果を最大化できるかをコンサルティングする役割を担いたい」と述べる。
 ■人材育成に尽きる
 急速なデジタル化の進行をにらみながら、アドリCEOが何よりも足元で力を入れているのは人材育成だ。国内の大学に社員を派遣しての教育訓練やインターンシップの実施に加え、毎週土曜日には小学生向けのロボット教室も開く。教材には日本の学習塾大手、全教研(福岡市)のものを採用。マレーシアではロボットを取り入れた授業が大学などで行われるケースがあるものの、初等教育プログラムはまだ珍しい。
 「ロボットや3Dプリンターなどに子どもの頃から触れれば、育つ人材は違ってくる。デジタル化やIoTにつながるプログラミングも、生活から遠いものではなくなるはずだ」(アドリCEO)。デジタル化がどれだけ進んでも人の力なしでは動かない。ドリームエッヂは製造業の未来をそう描いている。

最終更新:8/2(水) 11:30
NNA