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東大の不正論文、16件の改ざん・ねつ造認定。まだ明らかにすべきこと

8/2(水) 9:04配信

ニュースイッチ

再発防止策のコストを明示すべき

 分子細胞生物学研究所の論文5本について、不正行為があったとの調査の結果を発表した東京大学。同大科学研究行動規範委員会実験は、行われていないにも関わらず実験を行ったかのような結果を示したグラフや、不適切な画像の加工など16件について、改ざんやねつ造の不正を認定した。対象は邊嘉典教授と丹野悠司元助教の論文。医学系研究科の論文に関しては、不正はないという。

 調査結果について渡邊教授は、画像の加工などの行為については認めているが、ねつ造や改ざんには当たらないとしており、委員会の調査結果と食い違う部分がある。

 同大理事・副学長の福田裕穂氏は1日の会見で「研究不正の再発防止に取り組んできたが、ルール作りが甘かった。責任は重く、真摯(しんし)に受け止め、二度と起きないようなルールづくりを進める」と話した。

 渡邊教授の処分は、他の論文についての追加調査を実施後、責任の所在を明らかにした上で決定する。

<解説>
 「再発防止策は東大の信頼を回復するために必要な投資」と福田裕穂副学長は説明した。その「投資」の財源はどこから集めるのか、旧加藤研の研究不正事案を受けて整えた不正対策にさらに上積みする策は残っているのか、いずれも会見では説明されていない。

 今回の渡邊研は旧加藤研と同じ分生研。分生研が新たに提案している再発防止策では不正対策室に専属の人員を複数名雇って体制を強化するという。

 この費用を企業との共同研究費に求めることは難しいだろう。運営費交付金や競争的資金の間接経費から捻出するなら公的資金を当てることになる。

 不正対策を中心に、大学にもコンプライアンスコストを認める必要があることは明白だが、いくらが適切で、いくらなら文科省や社会から理解を得られるのか。必要な額と認められる額にギャップはあるのか。今回の調査費用、分生研の再発防止策のコストは示されなかったが、東大はしっかりと計算して開示すべきだ。

 他の研究大学にとっても、東大学が相場を示すことは意味がある。必要経費として計上し、毎年カイゼンして圧縮していってほしい。コンプライアンスコストは、その効果と効率化の進捗を示されて初めて「投資」であったと納得できるものになる。
(日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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