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35歳までは、ヨーロッパの第一線で。香川真司×池田純(前編)

8/2(水) 13:12配信

VICTORY

ドルトムントを参考にした横浜スタジアム満員プロジェクト

これまでドルトムント、マンチェスター・ユナイテッドと世界のトップクラブでプレーしてきた香川真司選手、横浜DeNAベイスターズ社長時代に実現不可能と言われた収支黒字化を現実にした池田純氏。スポーツシーンのトップランナーである2人の対談が今回実現した。前編では2人が背負うプレッシャーとの向き合い方、そして香川選手が描く自身の未来像を語った。

インタビュー=岩本義弘
取材協力=Hai-Sai 六本木

岩本 香川選手はこれまでヨーロッパのトップレベルでプレーし続けてきました。池田さんは、ベイスターズ時代から、さまざまなアメリカのスポーツを現地で見てこられてますが、ヨーロッパのサッカーを現地でご覧になったことはありますか?

池田 ありますよ。ユヴェントスとバルセロナのチャンピオンズリーグ決勝のゲームをベルリンに見に行きました。僕がベイスターズの社長だったとき、横浜スタジアムはドルトムントのスタジアムをモチーフにしながら、盛り上げを作っていこうとしていたんです。実際にベイスターズの社員何人にもに現地へ行ってもらい、試合を見てもらいました。あのドルトムントの“黄色い壁”がすごいんですよね。

香川 すごいです。あそこだけで、2万5000人も入ってますからね。

池田 どんなことがあってもスタンドを埋めるんだと。圧倒的な熱狂を作るのがドルトムントのブランドです。それをハマスタでも作ろう、ということで取り組んで、最後の2年くらいは満員にすることができました。

香川 じゃあ、今もベイスターズの試合は満員なんですか?

池田 ほぼ満員です。

岩本 池田さんは、横浜スタジアムを満員にするプロジェクトをずっとやっていて、多くの人が「無理だろう」と思っていたわけですが、本当に満員にしました。

香川 僕も実は野球が好きなんですけど、ベイスターズはそんなにスタジアムに人が入っているイメージはなかったです。でも、最近はテレビで試合を見ていると、勝っているということもあると思うんですが、スタジアムにファンの方がかなり増えたなと感じてました。

池田 僕が社長になったときは、正直閑古鳥が鳴いていました。ガラガラの試合しかなかったです。年間の観客動員数は107万人くらい。それが社長最終年となった昨年には、ほとんどの試合で満員となり、年間の観客動員も194万人になりましたから、本当にうれしかったというか、継続的にやり続けてくれたスタッフには、本当に感謝しています。

香川 それは本当にすごいですね!

池田 それと、スタジアムが閑散としていた状況のときは、試合でも選手たちにかかるプレッシャーが少ないと思うんですよね、ミスしても大丈夫という意識にもつながってしまいかねないですし、それもあってか弱かったのが、お客さんが入り始めると成績もついてくる。結果的には、昨年は球団初のクライマックスシリーズ進出も果たせましたし、スタジアムが満員になるというのは本当に大切だなと、身を持って感じましたね。

香川 それは間違いなくありますよね。でも、逆に僕らの場合は、ホームの8万人の前でミスしたらそれはそれで大変ですよ(苦笑)。

池田 すごいプレッシャーですか?

香川 はい。まして僕の場合は、2年間ドルトムントでプレーして、そのときに2年連続でリーグ制覇をしたんです。そこから一度マンチェスター・ユナイテッドに行って、また戻ってきたわけですが、ファンは僕に対して“優勝している香川”というイメージしかないんです。だから、期待値だったり、求められるものはメディアも含めてですが、とても高まっていました。ドルトムントに帰ってきて3シーズン目になりますけど、この3年間は、ホームでのプレッシャーが本当にすごかったですし、ときにはそれをプレッシャーと感じることも正直、ありましたね。

岩本 バイエルンがいるブンデスリーガで他のクラブが連覇をするなんて、歴史上でもないわけですよね。それを加入初年度と2年目でいきなりやってのけちゃったから、間違いなくハードルは一気に高くなりました。そのかつて感じたことがないプレッシャーと戦いながらやっているドルトムントでのキャリアについて、今はどんな感覚を持っていますか?

香川 この2年間くらいはプレッシャーに負ける……ではないですけど、やっていても、ときにすごく恐れてしまっている自分がいました。ただ、この半年くらいは、プレッシャーはもちろんあるんですが、それを楽しめているというか、打ち克つ何かをこの半年でつかめた気がします。とはいえ、試合の前の日は全然眠れないんですが(笑)。

池田 それはベイスターズの選手たちも言っていました。試合前にベンチ裏でプレッシャーから嘔吐していたんです。僕もベイスターズをやめて1年くらいですが、次に何をやるか、すごく考えています。ここで変なことをやると、いわば“負け試合”になってしまうので。たまに変な選択をしそうになると、その状況に悩み過ぎて、家で嘔吐することもあります。人は本当に精神的につらくなると気持ち悪くなるものなんだそうです。

岩本 ベイスターズの主力選手たちであっても、そういったレベルのプレッシャーを感じているんですね。

池田 そうですね。ただ、おそらく、今はいないと思います。最初は嘔吐している選手に、「なに緊張してんの!?」と言って、よくスタッフから怒られていました(苦笑)。ただ、新人の選手とかも、だんだん夏になるとダメになってくる。「疲れてるんでしょ? 休めば?」と言うと、絶対に「大丈夫です」って言うんです。それでも「無理をしてやり続けても、シーズン通してロクなことがないよ」って言うと、少し選手の心が楽になる。プレッシャーから解放されるときも出てくる。8万人の前でプレーするとか、すごいプレッシャーなんだと思いますが、楽になる心のコントロールの仕方を覚えると、逆に楽しくなってくることもあるんじゃないですか?

香川 まさに、そういう感覚になりますね。

岩本 そういったプレッシャーの中で戦うというのは、他の人には想像できないレベルだと思います。先ほど、試合の前には眠れないと言っていましたが、それ以外にもいろいろと考えたりすることはあるんですか?

香川 うーん……そこまでは考えないようにしてますね。ネガティブにはなりたくないですし、できる限りポジティブなイメージを持つようにしています。“トゥー・マッチ”にならないレベルでイメージしますね。

岩本 そういうときは、どこに気持ちを持っていくんですか? やっぱり、毎日の練習ですかね?

香川 もちろん、そこは全力で取り組みます。特にここ2、3年は、より練習を大切にするようになりました。今年もケガとかも含めて半年くらいは出られない時期がありました。特に、シーズン前半戦はなかなか試合に出られない時期が続きましたが、練習では調子が良かったんです。それが唯一の救いでした。試合に出ていないと、どうしても自信がなくなるものですが、練習でのパフォーマンスが良いと自分で感じることができていたので、「このチームの練習で良いプレーをできているんだったら、ピッチに立ったときも絶対にやれる」という感覚が、常々ありました。その感覚を持ち続けられたことが、後半戦にポジティブな形で出たと思います。

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最終更新:8/2(水) 20:28
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