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“怪物”清宮はどこへ向かうのか? 冷静にフィーバーを考察する

8/2(水) 15:50配信

VICTORY

清宮幸太郎の夏が終わった。7月30日、神宮球場で行われた全国高校野球選手権、西東京大会決勝で、東海大菅生が早稲田実業を6-2で破り、17年ぶり3度目の甲子園出場を決めた。この瞬間、その一挙手一投足が逐次報道されてい高校や球界の大スターの夏が終わった。高校通算107本塁打の怪物・清宮はどこへ向かうのか? 作家・スポーツライター、小林信也氏にその進路と今後の可能性についての考察を依頼した。

文=小林信也

高校通算107本塁打は立派な数字だが……清宮はプロで通用するのか?

早実というチームは古豪に違いないが、1987年からの30年に限れば、わずか4回しか夏の甲子園に出場していない。簡単に言えば、なかなか甲子園に出場できないチームだ。

清宮選手が1年の夏に、終盤の大逆転などもあって甲子園出場を果たした。まさに「持っている選手だ」と感服したが、その後は一度も甲子園に出場できない確率の方が高いと予想していた。西東京には、早実よりも総合力の高いチームがあるからだ。例えば日大三高は、過去20年で9回もこの地区を制覇し、甲子園に出場している。春のセンバツに出場できたことはむしろまた強運だった私は感じるが、世間の空気は「出て当たり前」のようだった。そのずれを指摘するメディアもほとんどなかった。私の予想が外れ、清宮幸太郎選手が二度の甲子園出場に恵まれたのは、清宮自身が、実力のある選手を全国から引き寄せた、そのため例年よりも好選手が集まって来た、まさに清宮効果があったのも大きかったろう。ことに一年下の学年に頼もしい選手が集まった。4番を打った野村大樹捕手は大阪・同志社中学の出身。今夏のエースとなった雪山幹太投手は神戸中央シニアの出身だ。

西東京大会決勝の相手は東海大菅生だった。知名度では圧倒的に早実や早実の選手が上。だが、選手ひとりひとりの実力を見れば、東海大菅生の方が遙かに頼もしく見えた。難しいゴロを好捕し、臆せずジャンピングスローを決めた三塁手。たびたび交錯しながら内外野の間に落ちるフライを決して落とさなかった野手たち。見ていて、「この選手たち、みんな小中学生のころから、本当に上手だったんだろうなあ」と溜め息が出るような、根っからの野球少年たちが揃っていた。

清宮選手の打撃力が高校野球レベルで卓越しているのは言うまでもない。

「僕も早実3年の夏は決勝で負けて甲子園出場ができなかった。それがあったから、プロ野球での活躍があったと思う」

早実の大先輩・王貞治さんのこんなコメントもあって、「決勝で負けたから清宮もプロで活躍できる」と、妙な縁起担ぎをする新聞記事もあったが、それはご愛敬。

王さんはセンバツで優勝している、清宮は優勝していない。王さんはプロ入り後に打者転向し、最初はさっぱり打てなかったが、川上哲治監督(当時)が白刃の矢を立てた荒川博コーチを毎日オリオンズから巨人に移籍させ、王専属打撃コーチになったのをきっかけに花開いた伝説はよく知られている。王さんには荒川コーチがいた。清宮には誰がいるのか? など、突っ込みを入れたら不確定な要素はたくさんある。

何より心配なのは、金属バットと木製バットの違いだ。

「東の清宮、西の安田」と並び称された履正社の安田尚憲選手は、普段の練習ではできるだけ木製バットを使って「次」を見据えているとのインタビューが注目を浴びた。「プロ野球で金属バットは使えないから」。安田選手ができるだけ木製を使う理由は明快だ。

清宮選手が高校時代に打った107本の中身がどんなものであったか。

木製バットなら届かなかった打球もあるだろう、折れて凡打になった当たりもあるかもしれない。それ以上に、金属だから打ち損じが露呈しない甘い条件に守られて、どんな打撃技術を身につけたのか。果たして条件の厳しい木製バットに対応できる身体の感覚をいまも内面に埋蔵しているだろうか。

清宮も、U18世界大会で木製バットに苦労し、その後の練習では木製を使うこともあったという。だが、清宮と安田の根本的な違いは、打撃の方向性にある。

安田は松井秀喜を手本にし、投球の捉え方、身体の使い方がよく似ている。端的に言えば、バットと身体をひとつにし、投球に対して右足とバットをほぼ一緒にブン!と出す。

清宮は、やわらかなグリップワークが特長で、しなやかにバットをコントロールする。巧さを感じるが、中距離打者に多い打ち方だ。高校生投手が相手、持っているのが金属バットだから《天性の飛ばす力》で高校まではホームランを量産したが、上のレベルで同じようにその打法で飛ばせるか。

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最終更新:8/2(水) 15:50
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