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「絶対ありえない移籍」を成立させる方法。ネイマール移籍騒動を読み解く

8/2(水) 15:37配信

VICTORY

連日、ヨーロッパのメディアを大きく賑わせている、ネイマール(FCバルセロナ/スペイン)のパリ・サンジェルマン(フランス)への移籍。当初は一笑に付されていたものの、ここに来て一気にその現実味が増してきました。その背景はどうなっているのでしょうか? ヨーロッパの移籍事情に精通するサッカージャーナリスト・小澤一郎さんに解説を依頼しました。

文=小澤一郎

何度も説得試みるも、PSG移籍は秒読み

連日大きな話題となっているFCバルセロナ、ブラジル代表FWネイマールの移籍騒動だが、どうやらPSGとネイマールの間ではかなり前から密約(=移籍合意)がなされており、8月に入ってから正式発表を行うとの取り決めがあったようだ。
 
7月23日にFCバルセロナのピケがTwitterでネイマールとの2ショット写真に「(彼は)残留する」という文字を載せて発信したように、南米3トップの「MSN」を形成するメッシ、スアレスも含めてUSAツアー中のバルサの主力はネイマールと何度も話し合いを持ち、引き止めを試みたようだ。
 
その時期にはバルセロナ寄りの地元メディアもネイマール残留に希望を持たせるような見出しや記事を並べたが、残留を楽観視する期間は数日と持たなかった。29日にマイアミで行われたエル・クラシコ(レアル・マドリード戦)前からスペイン国内ではネイマールに対する風向きが強くなり、地元メディアからは「移籍は決定的」という報道のみならず「沈黙を続けるくらいなら、契約解除金を残して早く去ってくれ」といった厳しい意見も出るようになった。
 
日本の報道を見ていると、スペインメディアを忠実に翻訳する記事が並び、肝心の移籍プロセスの分析が抜けている内容が多いと感じた。よって、ここからは現地の報道を横流しするのではなく、「サッカー史上最高額」のビッグディールが実現することになった経緯の背景やポイントを解説していきたい。

トップレベルの選手を「落とす」ポイントは?

まず今回のネイマールのPSG移籍の主人公は間違いなく「ネイマール・シニア」ことネイマールの父親だ。ネイマールクラスの世界的スター選手になると、交渉の度に成功報酬なるコミッションが選手エージェントに入る。報道によれば、ネイマールの選手エージェントである父親に対してPSGは3600万ユーロ(約46.8億円)もの移籍コミッションを支払うことを約束しているという。ちなみに、2016年にバルセロナと契約更新した際にもネイマールの父親は成功報酬として2600万ユーロ(約33.8億円)ものコミッションを受け取り、その支払は7月31日までに完了する。
 
エル・クラシコ前に『ESPN』のインタビューに応じたピケが煮え切らないネイマールの対応に業を煮やして「優先順位を考えるべき。何が必要なのか?お金なのか? タイトルなのか?」と発言していたが、ネイマール本人はそこまで強欲にお金を欲してはいないはずだ。メッシもそうだが、彼ほどの選手になれば純粋に「サッカーが好き」、「レベルアップしたい」という考えでプレーに集中しているもの。
 
だからこそ、彼クラスの選手を口説く時に大切になるのが、本人以上に決定権を行使できる人物を素早く落とすこと。家族が選手エージェントを兼ねている場合には、間違いなくその家族がキーパーソンとなる。PSGは戦略的にネイマールの父親や取り巻きを囲い込むことでネイマールが首を触れない状況に持ち込み、仮契約のサインまで取り付けたと推測する。

皮肉にはなるが、ピケの発言になぞって、「PSGは交渉の優先順位をわかっていた」と言うことができる。昨年、バルセロナと契約延長交渉を締結した以上、息子がバルサでプレーし続ける限りは次なるコミッションは新たな契約延長交渉までやってこない。そう考えると、1年も経たないタイミングで新たなコミッション収入の機会は、ネイマールの取り巻きにとっては「ビッグビジネス」なのだ。

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最終更新:8/2(水) 15:37
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