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【F1分析】ロバート・クビサが、F1復帰に向けて”最後の証明”に挑む日/ハンガリーテスト2日目

8/2(水) 17:06配信

motorsport.com 日本版

 2011年のラリー事故後、F1のパドックを訪れていないロバート・クビサ。彼は、あくまでドライバーとして、パドックに戻ってくると宣言していた。その言葉通り、彼がF1のインシーズンテストが行われるハンガロリンクに到着したのは、ハンガリーGPがすでに終わった後の月曜日だった。

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 火曜日の朝、テストが始まるとピットウォールにクビサの姿があった。この日走行を担当するルノーのテストドライバー、ニコラス・ラティフィの走りを見るためだ。

 テスト2日目の8月2日には、2011年以来初めて最新のF1マシンに乗り込むクビサ。彼は今回のテストで、何を成し遂げようとしているのだろうか?

 答えは簡単だ。クビサはすでに2012年のF1マシン、ロータス・ルノーE20で2度のテストを終えている。今回はルノーだけではなく、F1のパドック全体に自分が今後F1シートを獲得する有力な候補者であることを知らしめることが目的だ。

 クビサ復帰の可能性がにわかに噂され始めた頃、ある古株F1チームのメンバーは、クビサが復帰できるチャンスなどなく、彼は勘違いをしているだけであり、深く失望することになると語っていた。そして、ルノーは彼が復帰するという”夢”を助長すべきではないとも述べていた。

 クビサはそのような、自身の復帰に否定的な考えを一掃しなければならない。そしてそのチャンスが、今回なのだ。

 彼のF1復帰が実現すれば、確かにこのスポーツにとって最大の”ストーリー”となるだろう。彼の戦歴は、ポールポジションがBMWザウバー時代の2008年バーレーンGPに1度、優勝は同年のカナダGPでの1勝に留まっている。しかし、彼は常に同世代の中でもベストなドライバーのひとりだとみなされていたし、多くのライバルたちから敬意を払われていた。

 ルイス・ハミルトンとクビサは誕生日が1カ月違うだけの、同年代のドライバーだ。彼らやニコ・ロズベルグはカートやシングルシーターで競い合ってきており、頻繁に表彰台を分け合ってきた。

「ロバートは、僕がこれまで競い合ってきた中でも、最速のドライバーのひとりだ」

 そう、ハミルトンはクビサについて語った。

「もし彼が今もF1でレースをしていれば、彼はタイトル争いをしていただろう」

「彼には生まれつき、素晴らしい才能があった。彼が僕たちとここ(F1)にいないのは、このスポーツにとっても残念なことだと僕は思う。偉大で、素晴らしい才能を持ったドライバーはそうはいないからだ。彼のような、本当に特別なドライバーが必要だ」

 クビサの復帰について考えておかなければならないのは、チーム代表の立場から見てみれば彼のように素晴らしい才能を持ったドライバーは常に不足しているということだ。

 ハミルトンやセバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペン、ダニエル・リカルド、フェルナンド・アロンソといったドライバーと契約するのは簡単なことではない。もしクビサがそういった”エリート・グループ”に復帰することができれば、その存在によってドライバー市場には新しく、興味深い動きが加わることになるだろう。

 クビサは、事故でF1から遠ざかる前に在籍していたルノーとの関わりが今も深い。E20を使った最初のテストに招待される前までは、ルノーは彼がF1シートの候補になるとは思っていなかった。最初のテストは、クビサと働いたことのある人物が多くいるルノーから、旧友であるクビサへの”プレゼント”だったのだ。

「今回のテストは一度限りだ。ロバートの回復プロセスの一環であり、彼の限界を評価しているだけだ」と、最初のテストの後にルノーのチーム代表のシリル・アビデブールは語っていた。

「彼はF2やGP3、LMP2やフォーミュラEでのテストなど多くのマシンをテストしているし、これもそのプログラムの一部だ。しかし、私はルノーにもロバートにも、次のステップについての約束はしたくない」

 クビサの手助けをすることには前向きだったルノーも、彼にあまり期待させすぎないようにしていた。しかし、クビサがテストで発揮したパフォーマンスで、すべてが変わった。彼は目の前の課題をすべて克服していき、素晴らしい仕事を果たした。走行プログラムが違ったとはいえ、同じくテストに臨んでいたルノーのテストドライバー、セルゲイ・シロトキンのタイムを上回ったのだ。

 ポール・リカールでの2回目のテストにこぎ着けたクビサは、さらに進歩を見せた。ルノーが彼のために用意した、レッドブルでのシミュレーター作業でも好パフォーマンスを示した結果、彼は現行F1マシンをテストするチャンスを掴んだ。

 今週の走行は、クビサのF1復帰という夢を叶えるためには必須だ。レギュレーションが変わったことで、2017年のマシンはここ数年で最も速く、最もドライブするのが難しいモノとなっている。それゆえ、彼が現代のF1マシンを運転することができ、コーナリングスピードの増加に伴って増大したGフォースなどが問題にならないことを証明することが不可欠なのだ。

 さらに重要なことにクビサは、他に9台のマシンが走っているコース上で、他のチームが見ている前でそれを証明することができる。休みなくコーナーが続き、暑いコンディションとなるハンガロリンクは、彼が問題なくF1に復帰できることを証明するためには絶好の場所だ。

 ハンガリーGPの予選で、ニコ・ヒュルケンベルグがメルセデスやフェラーリ、レッドブルといった”ビッグ3”以外の中のトップ、7番手だったことを考えれば、ルノーはハンガロリンクで4番目に速いマシンを持っていると考えても良いだろう。

 もちろん、テストでは各チームが様々なプログラムで走行するし、すべてのチームが必ずしも予選アタックをするわけではない。

 ただ、クビサが全開のアタックをすることは確かだろう。彼は、レース週末すべての状況をシミュレーションする必要があるからだ。

 現世代の、将来性を見込まれているドライバーたちと比べて、彼がどのような走りを見せるかは非常に興味深い。

 ルノーのエンジニアたちは、クビサが自身の経験を駆使し、何事もなく仕事をやってのけると確信しているようだ。彼らはすでに、旧型マシンを使ったテストでそれを目の当たりにしてきた。それに、彼がF1のレースシートを獲得する有力な候補者であるとルノーが確信できなかったのなら、クビサは今回のテストに臨むことすらできていないだろう。

 ハンガリーでのテストは、ルノーの経営陣やチームのスポンサー、ひいては世界中に向けた”最後の証明”に過ぎない。月曜日、クビサのF1復帰に向けてまたひとつ問題が解決された。彼は、FIAの厳しいコックピット脱出テストを、クリアしたのだ。

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