ここから本文です

天然記念物“奈良のシカ”を捕獲へ、農家は線引きに複雑な心境「向こうに逃げられたらそれまで、やられっぱなし」

8/2(水) 11:00配信

AbemaTIMES

 7月31日、奈良県の職員が設置したのは大きな檻。中には米ぬかを撒いている。

 職員がこのワナで捕まえようとしているのは、国の天然記念物「奈良のシカ」だ。古代から“神の使い”としてあがめられ、奈良公園の観光シンボルにもなっている。シカは野生で、市内の公園以外の場所でも群れを作って徘徊し、その数は数千頭にも及ぶ。それらも「奈良のシカ」として保護されている。

 そんななか、問題になっているのが農作物への深刻な被害。夜中、畑に現れた野性のシカが農作物を食い荒らすなど、県の被害は4000万円にのぼるといわれている。被害を受けた北村国博さんは、「カボチャが小さいうちに食べられてしまって。今年は畑の半分、去年は全滅。(収入は)去年でいうと50万円ほどは少ない。何とかしてもらいたい」と嘆いた。

 県はシカを捕獲し頭数を制限したい考えだが、捕獲が可能となったのは奈良市の中心部から離れた山間部の地域。神聖視されている奈良公園のシカは対象外となる。

 農家からは概ね賛同の声があがっているが、一部には問題も残っている。シカが保護される“保護地区”と捕獲できる“管理地区が、国道1本で隔てられているのだ。両方の地区に田畑を持つ農家の東功さんは、「こちら(管理地区)のシカが向こう(保護地区)に逃げるとそれまで。また、向こう(保護地区)から入ってくると作物を食べて、帰ってしまうと終わり。こちらは捕獲できるが向こうは捕獲できない、これはやられっぱなし。同じ地区内は同じ形をとってもらいたい。国道で分けますだとしゃあない」と、複雑な心境を打ち明けた。

 そもそも、なぜ奈良のシカは神聖視されるようになったのか。8月1日の『けやきヒル’sNEWS』(AbemaTV)で、東京大学教授で歴史学者の本郷和人氏が解説した。

 本郷氏は、「江戸時代なんかも、シカを殺してしまうと厳罰に処せられた。朝、自分の家の前でシカが死んでたなんてことになると、罰を受ける。そんなとき、死がいの場所を隣の家に移すということで、奈良の街の人はみんな早起きとも言われている」と、古くからの説があることを話す。

 また、奈良のシカが“神の使い”とされる所以については、「武甕槌命(タケミカヅチノミコト)という神様が奈良公園の春日大社では祀られていて、このタケミカヅチノミコトは元々茨城県の鹿島神宮から来た神様。鹿島アントラーズのマスコットがシカであるように、そもそも鹿島神宮にシカがいて、タケミカヅチノミコトは鹿島神宮のシカに乗って奈良にやってきた。そういう絵もある。そこから、奈良のシカは“神の使い”ということになった」と説明した。

(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)

最終更新:8/2(水) 11:00
AbemaTIMES