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「全国民に毎月1000ドル支給は難しい」米国のベーシック・インカムに著名学者は懐疑

8/3(木) 6:30配信

ZUU online

賛否両論のベーシック・インカムだが、所得税や法人税を財源とした場合、「特に米国のような大規模な国では十分な費用の確保が難しい」との否定的な意見が聞かれる。

またベーシック・インカムの根底には、労働市場のロボット化への懸念があるが、「ロボット社会が現実となるには、50年から100年かかる」との見方もあり、少なくとも米国での導入にはかなりの時間と試行錯誤が必須となりそうだ。

■FacebookやテスラのCEOも歓迎するベーシック・インカム

CNBCの報道によると、現在米国で提案されているベーシック・インカムは、「毎月1000ドル(約11万円)前後を、所得に関係なく全米国民に支給する」というもので、社会保障制度を含む既存の福祉制度の代替となる。

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOやテスラのイーロン・マスクCEOなどの著名人を筆頭に、米国のシンクタンク、ケイトー研究所の上級研究員マイケル・ターナー氏がこの案を歓迎している。

ターナー氏はCNBCのTV番組に出演した際 、ベーシック・インカムは「より効率的で人道的、かつパターナリズム色(権力による介入・干渉行為)が薄い」として、既存の福祉制度より理論的に優れた発想だと絶賛した。

ベーシック・インカムは所得格差やロボット化、少子化など、現代社会が抱える問題への総体的な解決策として世界中から注目を集めているが、財源の確保や不労所得に関する精神論的な批判も多い。

■米国のような大きな国ではコスト的に実現不可能?

反論派の意見はどうだろう。最大の懸念は、「どこから費用を捻出するのか」という点に集中している。

オバマ大統領の主席経済顧問を務めたケネディスクールのジェイソン・ファーマン教授は、ベーシック・インカムの費用を年間2~3兆ドル(約220.5~330.8兆円)と見積もっている。

米国の作家、デヴィッド・グレース氏 の見解はさらに現実的だ。所得平均から毎月の支給額を1500ドル(約16.5万円)に設定し、総額4.4兆ドル(約485.1兆円)が必要だと算出。そこに政府の「支出」が加わると、6兆ドル(約661.6兆円)というラインは譲れないとしている(Decentralize Todayより)。

これに対して、所得税による徴収額は年間1.5兆ドル(約165.4兆円)。これではベーシック・インカム実施に必要な、4分の1の財源にしかならない。現在の法人税の徴収総額が3430億ドル(約37.8兆円)ということを考慮すると、残りの4.5兆ドル(約496.2兆円)を法人税から徴収するという案は、あまりにも非現実的だ。

そのためグレース氏は、「例え法人税を利益の100%まで引き上げたとしても、ベーシック・インカムに必要な費用の3分の1程度しか捻出できない」と懐疑的である。

実際にベーシック・インカムを試験的に実施しているフィンランドやオランダとは、財源の規模が著しく異なるとい点で、特に米国のような大国ではコスト面が大きな壁となるだろう。

■ファーマン教授「ロボットが人間から職を奪うのは100年後」

もうひとつ興味深い反論は、「今後30年ぐらいは、ロボットが人間から完全に職を奪うほどの速度で進出することはない」というものだ。

これについてもファーマン教授は、「50年後あるいは100年後ならば、ロボットが何から何までこなしている社会も考えられる」ものの、「10、20、30年後という期間で、それが現実化するとは想像し難い」と述べている 。
ファーマン教授の予言に従うと、早急にベーシック・インカムを導入する時期には差しかかっていないということになる。

ファーマン教授の専門分野がITではない点で若干説得力が欠けるものの、ベーシック・インカムの実用化にあたっては各国、課題が山積みだ。導入が検討されるにせよ、かなりの時間を要することは間違いなさそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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最終更新:8/3(木) 6:30
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