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果たせなかった父との約束…霞ケ浦のエース・遠藤の恩返しは、これからだ

8/3(木) 18:03配信

スポーツ報知

 土浦日大ナインが歓喜に沸く中、帽子で顔を隠し、ベンチで誰よりも涙を流し続ける選手がいた。霞ケ浦のエース右腕・遠藤淳志だ。集大成の今夏大会直前、父・隆さん(64)に「甲子園に連れて行くから」と宣言した。その夢はわずかに届かなかった。

 大雨で1日延期となった7月27日の茨城大会決勝。水戸市民球場には小雨が降り続く中、遠藤は土浦日大打線を6回まで4安打2失点に抑え、5点リードとほぼ勝利を手中に収めていた。

 しかし、7回先頭から4者連続安打を浴び降板すると、そこからマウンドと一塁を行ったり来たり。経験のなかった再登板をこの日だけで3度もした。“マウンドを守り続ける”というエースのプライドは捨て、勝つことだけに必死だった。だが、その後も相手打線の勢いを止められず、延長戦に突入した。引き分け再試合目前の15回2死一塁、内角を狙った直球が真ん中に入り、勝ち越し点を献上。計12回1/3を10失点。5時間ジャストのロングゲームで壮絶に散り、遠藤の高校野球生活は幕を閉じた。

 幼少期から親子二人三脚で歩んできた。隆さんは現役時代、岩手・盛岡中央で遊撃手としてプレー。あと一歩のところで甲子園出場を逃した。そんな父の影響で小1から外野手として野球を始めた。だが、フライ捕球が苦手でよく顔にボールをぶつけて泣いた。「そんなに泣くなら、練習辞めるか?」。こんな問いにも決して首を縦には振らなかった。懸命に努力する息子を見て、小3時、庭に手作りのバッティングケージを作った。1日100球、父と母がボールを上げ、息子は黙々とバットを振った。

 小4になると投手を兼任。それを機に自宅の庭をさらに改造。マウンド部分には土を盛って段差をつけ、本物さながらのブルペンまで作った。休日はチーム練習から帰宅後、夕飯の前後に父から投球フォームや腕の振りなどの指摘を受けながら計1~2時間ほど投げ込んだ。親子の“自宅特訓”は中学卒業まで続いた。

 高1の12月に入寮し、親元を離れたが、息子とのやりとりは続けた。試合前はメールでアドバイスを送る。決勝の日も「初球の入りを大切に。見せ球に変化球を使ったら?」と送り、息子とともに戦った。親子の絆の深さに私は胸を打たれた。

 昨夏の茨城大会後には寮で洗濯物を抱えて転倒し、右手甲に5針を縫うけがを負った。直後から練習を始めるも、すぐ傷が開いた。だが「休んでいられない」と病院には行かず、練習を優先した。「お世話になった人たちを甲子園へ連れて行く」。すべてはその一心からだった。

 試合後、むせび泣きながら「恩返しするにはそこ(プロ)しかない」と話した遠藤。誰よりも支えてくれ、応援してくれた父だからこそ、目に見える結果で応えたいとの思いは強い。流した悔し涙を糧にもう一度、はい上がってほしい。そして笑顔で父に恩返しするその日を、私は心待ちにしている。(記者コラム・河原崎 功治)

最終更新:8/3(木) 18:03
スポーツ報知

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