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学生への迎合は時代の流れか 面接されるのは企業に

8/3(木) 8:28配信

福井新聞ONLINE

 来春新卒の就職活動も折り返しを過ぎた6月末、福井市の大学院生佐藤昌弘さん(24)=仮名=は「自分に適した会社」を探していた。第1条件は独自技術を持つ製造業。「院で学んだ工学系の知識を生かしたい」。しかし、第2条件としている労働時間が引っ掛かる。

 「過剰すぎる労働はちょっと…。命には代えられない」。思い浮かぶのは電通の過労自殺事件。説明会では必ず平均残業時間を尋ねる。「担当者は答えてはくれる。けれど、それが本当かは分からない」。給料は「生きていければ、それでいい」という。

 「実家から通える会社がいい」と話すのは敦賀市の大学生山口良子さん(22)=仮名。親元なら「生活費が掛からない」。22年間県内で暮らし、今更県外に出たいとは思わない。ほしいのは事務職の内々定。「県内そこそこの企業で、ほどほどに休みがある仕事」が理想だという。

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 「やりたいことが明確で将来の生き方も見据えた学生と、何となく就活している学生とに2極化している」。こう指摘するのは、就活コンサルタント大連達揮さん=あわら市。後者は就職先のワークライフバランスを重視する傾向が強いと分析する。

 政府が掲げる「働き方改革」に関する日々の報道もあり、多様な勤務スタイルや産休・育休など休業制度の充実度、有給取得率の高さなどを魅力と感じる学生が増えている。裏を返せば、それらが企業の採用力の指標にもなっている。

 福井県の生産年齢人口(15~65歳未満)は今年7月1日現在44万331人。全県民に占める割合は57・3%で、10年前より4・4ポイント低下した。少子化が進む中、県内企業は製造業やサービス業を中心に採用力強化という課題に直面している。

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 福井大キャリア支援室の大橋祐之室長は、企業の採用活動の成否について「学生たちに10年後、20年後の自分の働く姿をイメージさせられるかが鍵になる」と強調する。

 来春卒の大学生を対象に、就職情報の大手マイナビが行った人気企業調査で、北陸地区2位となった三谷商事(福井市)は、6年前からインターネットライブ配信で仕事内容を説明し、学生の質問に答える双方向のウエブ説明会を開いている。若手社員の「生の声」を届けるリアル説明会も全国主要都市で年15~20回行っている。

 リアル説明会に出向く若手社員は、ありのままの働き方を伝える。会社の実態を理解してもらい、ミスマッチと早期離職を防ぐためだ。同社が採用活動で強く意識しているのが「我々も学生に面接されている」ということ。県内大手といえど、選ばれるための努力は欠かせない。

 5、6月の福井県の有効求人倍率は全国トップで、県内中小企業の人手不足感は強まっている。福井市のある製造関係企業は、新年度から一部の土曜勤務をやめて完全週休2日にすることを決めた。学生への“迎合”に違和感を覚えつつ、「これも時代の流れ」と採用担当者は話した。

福井新聞社